修証義(しゅしょうぎ)
SHUSHOGI
曹洞宗でよまれるお経のひとつに修証義があります。 開祖道元禅師の主著﹁正法眼蔵﹂を中心に引用し、明治23年に編纂されたものです。
経典は、全5章3704文字から成り立ち、日本語によるわかりやすい経典であります。
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第二章(懺悔滅罪)
仏祖憐︵あわれ︶みの余り広大の慈門︵じもん︶を開き置けり、
仏祖は、衆生の迷い苦しみを見かねて、誰でもいつでも入れる大きな救いの門を開いておいてくださった。
是れ一切衆生︵しゅじょう︶を証入︵しょうにゅう︶せしめんが為なり、
これは、すべての人をして、みずから体験し悟らしめんとするためである。
人天︵にんてん︶誰︵たれ︶か入らざらん、
これを聞いて、入ろうとしない者がいるだろうか。
彼︵か︶の三時の悪業報︵ごっぽう︶必ず感ずべしと雖︵いえど︶も、
さて、われわれが良からぬ行為をするならば、その影響はあとに残ってくるが、
懺悔︵さんげ︶するが如きは重きを転じて軽受せしむ、
もし、仏祖の教えにしたがって懺悔するならば、悪影響も好転して軽く受けることが出来よう。
又滅罪清浄︵めつざいしょうじょう︶ならしむるなり。
また、さらにいえば、心は清々しい爽やかな気持ちに戻らせてもらえるのである。
然︵しか︶あれば、誠心︵じょうしん︶を専らにして前仏︵ぜんぶつ︶に懺悔すべし
ゆえに、まごころこめて、仏の前に自らの罪過を告白し、その許しを乞うところの懺悔の行をするがよい。
恁麼︵いんも︶するとき前仏懺悔の功徳力︵くどくりき︶我を拯︵すく︶いて清浄ならしむ、
こうすると、懺悔の功徳があらわれて、われわれを罪の苦しみから救い、重苦しい捉われより解き放ってくれるのである。
此︵この︶功徳能︵よ︶く無礙︵むげ︶の浄信︵じょうしん︶精進を生長︵しょうちょう︶せしむるなり。
そればかりでない、のびのびとした深い心情にみちびいてくれ、心機一転、これからしっかりやるぞという気持ちや、報いは報いとして甘んじて受け、その償いをしようとする決意すら生まれてくるのである。
浄信一現︵いちげん︶するとき、自佗︵じた︶同じく転ぜられるなり、
このような気持ちになると、自分のみか接する人びとも変わってくるのである。
其︵その︶利益︵りやく︶普︵あまね︶く情非情に蒙︵ごう︶ぶらしむ。
人は、懺悔したおかげによって、ほとけごころとなり、心のはたらく人間や動物に対してだけでなく、心なき木石等あらゆるものに愛情が豊かになるのである。
其︵その︶大旨︵だいし︶は、願わくは我れ設︵たと︶い過去の悪業︵あくごう︶多く重なりて障道の因縁ありとも、
さて、懺悔の仕方のおおよそをいうと、こういう気持ちをもって、仏にお願いするとよい。﹁わたくしは、たとえ過去の罪過が多く積もって、求道の妨げになっている救いがたい人間でありましょうとも、
仏道に因りて得道︵とくどう︶せりし諸仏諸祖我を愍︵あわれ︶みて
どうか、仏道によっておさとりになられた仏祖のかたがたよ、わたくしを愍んで、
業累を解脱せしめ、学道障︵さわ︶り無からしめ、
従来積んできた我見妄想より解き放ってくださり、求道が開けてくるようにお導きください。
其︵その︶功徳法門普︵あまね︶く無尽法界︵むじんほっかい︶に充満弥綸︵みりん︶せらん、
その功徳広大なみ教えと、天地万物に普く及ばれている大慈悲とを
哀みを我に分布すべし、
わたくしたちにもお分かちくださいますように﹂と、静かに祈るのである。
仏祖の往昔︵おうしゃく︶は吾等︵われら︶なり、
そして、仏祖も昔は私たちと同じように悩まれたのだ。
吾等︵われら︶が当来は仏祖ならん。
我等も一生懸命でやりさえすれば、仏祖のような心境に近づくことが出来るのだ、と心にいいきかせ、勇を鼓するのである。
我昔所造諸悪業︵がしょくしょぞうしょあくごう︶
我れ昔より造れるところのもろもろの悪業は、
皆由無始貪瞋癡︵かいゆうむしとんじんち︶
皆いつとも知れず我が身にまつわりついている貪︵むさぼ︶り、瞋︵いか︶り、愚︵おろか︶さの妄想が原因である。
従身口意之所生︵じゅうしんくいししょしょう︶
他から来たのではなく、すべて我が身、我が口、我が意︵こころ︶から生じた罪過である。
一切我今皆懺悔︵いっさいがこんかいさんげ︶
わたくしは今、仏の前に一切を懺悔する。
是︵かく︶の如く懺悔すれば必ず仏祖の冥助あるなり、
このように懺悔すると、必ず仏祖は目にみえぬお力をかしてくださるのである。
心念身儀︵しんねんしんぎ︶発露︵ほつろ︶白仏︵びゃくぶつ︶すべし
だから、仏祖の慈悲を心に念じ、端坐合掌、懺悔の文を口に唱えて、一切を告白するがよい。
発露︵ほつろ︶の力罪根︵ざいこん︶をして
自分をさらけ出し、投げ出すまごころの力は、必ずや罪過をつくり出す根ともいうべき貪瞋癡の妄想を消滅せしめ、
銷殞︵しょういん︶せしむるなり。
清浄なる心境に至らしめてくれるのである。懺悔こそ新生の第一歩である。
解説は、曹洞宗宗務庁版に依りました。
第1章 総序︵そうじょ︶
第2章 懺悔滅罪︵さんげめつざい︶
第3章 受戒入位︵じゅかいにゅうい︶
第4章 発願利生︵ほつがんりしょう︶
第5章 行持報恩︵ぎょうじほうおん︶
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