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2024年10月31日
コラム連載企画︵3︶ ※↑たて書きで読む 推奨
仏教とメディアの関わり①
概説 貞昌院はインターネットが出始めたころからホームページを開設し情報発信を行ってきた。歴史的に宗教が新しいメディアを積極的に利用してきたことを考えると、驚くべきことではない。古来より、宗教は文字、印刷など、時代の最新メディアを用いて教義を伝えてきた。情報革新が進む現代においても、宗教が最先端のメディアで情報発信を行うことは当然であり、﹁珍しい﹂という認識は先入観に過ぎない。メディアは、人と人、自己と他者を繋ぐシンボルであり、宗教の仮想現実的な側面と相性が良い。CMCもその一つと言える。
貞昌院では寺院のホームページを1996年︵平成8年︶春から運用しています。︵※1︶
当時はまだインターネットがようやく普及し始めた頃であり﹁お寺がホームページを開設しているなんて珍しい﹂と良く言われたりしたが、実はそれは大きな誤認識であり先入観からくるものと感じます。
なぜなら、歴史を紐解くと時代の最新メディアを宗教が牽引してきたという事実があるからです。
太古の時代、原始的コミュニケーションから文字が生み出されたことによって、人間は世界を分節化し論理的な思考の構造化が可能になりました。
例えば世界最古の文字とされる古ヨーロッパのヴィンチャ文字は農業社会の宗教的な内容が書かれているし、中国殷時代の甲骨文字は殷王室の宗教的卜占に使用されたものです。
また、現存する世界最古の印刷物は日本・奈良時代の百万塔陀羅尼という経典である。十五世紀にヨハネス・グーテンベルクが活版印刷を行った最初の印刷物は聖書でした。
情報記録のための石・粘土板・板・紙といった媒体の進化、印刷技術の発明は情報の画一性・均一性・反復可能性を飛躍的に向上させた。このことは宗教にとっては、教義を時間的空間的制約を超えて幅広く伝播させることが可能となったことを意味します。つまり、仏教を含む宗教界がこれらのメディアを積極的に利用し発展させてきたのは、布教=教義伝播に対する意欲からなのです。
記録された文字情報が印刷技術や製本技術によって大量に作成することが可能になり、経典を大量に頒布することにより宗教改革のように歴史的変革をももたらす契機にもなりました。
ここに挙げた事例はごく一部の顕著なものであるが、このように時代ごとの最新メディアには、宗教が大きく係わっていることが分かる。むしろ、情報革新が目覚ましい今の時代だからこそ﹁お寺がメディアを牽引していく﹂ということは何の不思議も無いことなのです。これが﹁お寺がホームページを開設しているなんて珍しい﹂と考えること自体、先入観以外の何でもないと考える理由です。
次に﹁メディア﹂について考えてみます。
メディアという言葉はmediumの複数形であり、真ん中にあるものということから、媒体・仲介という意味が発生したとされます。英和辞典でmediumの項を見ると、中間・中ほど・中庸、中程度の物・中間的性質の物・中間物、媒介物・媒体・媒質などとともに︵死者の霊魂・別人の人格・超自然力が乗り移ると称する︶霊媒、巫女などの意味が記述されています 。このように霊媒、巫女という宗教的要素ががメディアの意味をもつことは注目すべき点です。
メディアとは、人と人との間を結ぶ意味あるシンボル、自己と他者との間に情報を伝達する介在する意味のあるシンボルであるということが出来るし、まさに人と人の間の仲介をするもの全てがメディアと考えて良いでしょう。
宗教は元来、仮想現実の側面を持つものです。布教=メディアによる情報伝達という構図から、インターネットによる情報受発信などに代表されるCMCも宗教の性質と融合しやすい性質を持つものなのす。︵②に続く︶
■コラム連載企画︵1︶
■コラム連載企画︵2︶