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2012年5月12日
5月11日、東京電力は家庭・個人商店等の小口契約の電気料金を約10%値上げする申請を経済産業省に出しました。
電気料金の値上げは32年ぶりです。
日本の電気料金は高いというイメージがありますが、それでも日本の経済成長を支えてきた電力を、そして精密産業を支えてきた世界一安定した電力を、私たちは享受してきたという事実をまず認識しておく必要があるでしょう。
32年間値上げが無かったという理由はなぜだったのか、ということも併せて考えておく必要があります。
さて、本題に入ります。
今回の値上げ申請の内容は、使用量の少ない契約者では値上げ額が小なく、使用電力量が大きいほど値上げの幅が大きくなっています。
実際に、個別にどれほどの負担増になるかについては 電気料金シミュレーション で確認できます。
電力料金値上げの根拠が東京電力のサイトに
徹底した経営合理化に取り組んでいます。
一方で、火力発電の燃料費等が大きく増加しています。
そのため、やむを得ず料金値上げをお願いしています。
というように纏められておりますので、まずは一読されることをお薦めします。
東日本大震災前に日本の電力全体の約3割を賄っていた原子力発電所は、順次点検のため停止し、再稼動しないまま今月全ての発電所が停止しました。
このまま全国の全原子力発電所を停止したまま全て廃炉することも選択肢の一つでしょう。
しかし、それを実現するためには、私たちは相当の覚悟が必要です。
原子力発電所反対論者も含めて、世間一般的にその覚悟がされているとはとても思えないのです。
振り返って、一年前の今頃は、私たちは計画停電を強いられ、自主的にもかなりの電気使用削減に努めていました。
街の明かりは可能な限り落とされ、店舗、駅構内の照明は薄暗く、エレベーター、エスカレーターも最低限の稼動、電車の間引き運転・・・・
その中で、なんとか夏を乗り切ることができました。
昨年は夏は一昨年のような猛暑で無かったことも幸いしました。
しかし、現在、一年前のちょうど今頃に比べて如何でしょうか。
照明はかなり明るく灯されています。エレベーター、エスカレーターの稼動も制限がかなり解除されました。
電車も通常通り運行しています。
工場も、観光地も震災直後から相当復旧復興し、電力需要は総じて伸びています。
さらに、今年、あるいは来年、再来年のうちには必ず猛暑がやって来るはずです。
両者を考え合わせるにつけて、今後の電力需給バランスは、状況次第で電力不足に陥る可能性が高く、安定した電力供給が望めないことは明白です。
今のところは老朽化して寿命を迎えた火力発電所を含めてフル稼働して凌いでいますが、余裕・ゆとりの無い発電所稼動は、万が一の場合重大な事故を引き起こしかねません。
さらに悪いことに、中東の政情不安も重なって、原油、LNGの料金は高騰しています。
つまり、急に原子力発電に頼らない方向に舵を切り替えるためには
・これまで以上の節電
・電気料金値上げの容認
・経済的に後退した状況への覚悟
等々が必要不可欠であるにもかかわらず、それがなされているようには到底感じられないのです。
ここまでの結論は、節電に頼った電力需給対策は、一時的には凌げるかもしれないけれども、持続性に欠ける施策である ということです。
さらに、電気料金の値上げによって私たちが負担する電気料金の増分のほとんどは、重油やLNGなど火力発電所の燃料輸入として、日本国外に流出してしまうという事実も重く認識しておく必要があります。
原子力発電所代替の火力発電所焚き増しによる燃料費の増加は一昨年に比べて2~3兆円の増加と試算され、その分、日本の貿易収支の支出増に燃料費が重く圧し掛かっていることがわかります。
その年間何兆円ものお金を被災地復興のため、或いは放射能汚染地域除染のために使ったほうが、どれだけ有用なのでしょうか。
これら全てが日本経済復興の大きな足かせになっていることを考え合わせて、現実的な着地点として、事故を起こした原子力発電所の原因を踏まえ、この経験を生かし、適切なストレステストを経た上で安全性が確認された電子力発電所の再稼動を行うこと が必要であると考えます。
これまで少なからず原子力発電施策を容認してきた私たちの暮らしを、いきなり原子力発電に頼らない社会構造に移行することは無理です。
しかし、原子力発電に頼る社会構造からの緩やかな脱却は可能でしょう。
今後、原子力発電所の新設を行わないこととすれば、数十年のうちに自ずと原子力発電所の割合は減少していきます。
寿命を全うした発電所設備は廃炉になるからです。
その間に、原子力発電に頼らない社会構造に移行していけば良いのです。
廃炉を行うにしても、向こう数十年、あるいは数百年単位のプロセスが必要であることも勘案する必要があります。
廃炉に向けた安全なステップで、日本は世界をリードする技術を培うことができればさらに良いでしょう。
やみくもに﹁値上げ反対﹂﹁原子力発電所再稼動反対﹂を唱えるだけでではなく、その場合にどのような対案があるのかを提示して、真剣に考えていくことが大切です。
東京電力は、夜間の電気料金が安くなる新料金プランを6月から導入することを併せて発表しました。
この料金体系は﹁電気ジョーズ﹂として、これまでもあったのですが、それはオール電化の設備を設置した場合に限られていました。
しかし、その選択肢が全ての家庭、事業所に広がったことにより、太陽光発電を含めた新エネルギー普及の原動力となりそうです。
また、特に太陽光発電を設置している家庭・事業所にとっては、直接的な料金のメリットを受けることができそうです。
新たなピーク抑制型料金︵選択約款︶の設定
ピーク時間︵夏季の13時~16時︶に割高な料金を設定し、ピーク時の節電インセンティブとさせていただくとともに、夜間時間の料金を安く設定し、電気のご使用をピーク時間から昼間時間・夜間時間に、または昼間時間から夜間時間に移行していただくことにより、電気料金の低減が可能となる新たな料金メニューとして、ピーク抑制型季節別時間帯別電灯︵以下﹁ピークシフトプラン﹂︶を設定することといたしました。
ピークシフトプランにおいて料金が高くなる時間帯は、晴天時の太陽光発電の発電ピーク時と重なります。
︵この発電ピークは、日本の電力使用のピーク時間帯とも重なります︶
貞昌院でも、このプランでの契約変更を具体的に検討してみたいと考えています。
地球温暖化対策としての太陽光発電設備が、原子力発電に頼る社会からの脱却に貢献できるということも大きな意味を持ちます。
■関連ブログ記事
ソーラー作戦、地球温暖化対策として大展開 ︵2005年の記事︶
全国の寺院に太陽光発電があると︵2007年の記事︶
エネルギー源分散のメリット︵2011年の記事︶
屋根貸し制度と曹洞宗メガソーラー︵2012年の記事︶
匿名様はそんなことはないでしょうけれど、全般的に事象に対する無関心さは、現在も継続している感じがしてなりません。 ﹁なんとかなるだろう﹂という甘い曖昧な感覚を引き起こしす源にもなります。 投稿者 kameno | 2012年5月14日 07:44
後段のコメントについて ハグさんは事故に大きな影響を与える人為的ミスは無かったと書かれていますが、私は ︵1︶鉄塔倒壊による外部からの引き込み電源ラインの喪失 ︵2︶︵1︶が起きてしまった直後、適切に行われなかった初期ベント及び海水注入 この2点が事故︵=爆発という事象︶の大きな要因であると考えます。 したがって、原子力発電所本体の設計ミスということではないと考えます。 つまり、︵1︶︵2︶が機能していれば事故は起きていなかったと考えています。
投稿者 kameno | 2012年5月16日 08:21
福島第一原発に電源供給をする﹁夜の森線№27鉄塔﹂が倒壊したことにより、電源が断たれました。 つまり、鉄塔の設計に関る想定、一ルートしか供給ルートを用意していなかったことが、今回の事故の直接的な原因でありましょう。 今後に向けて、他原発に対しては、地中など別ルートを通るバックアップ線の整備や、移動式の電源車を用意するなど、電源喪失を万が一にも防止する対策は幾らでも講じることはできると考えます。 想定値を超える地震・津波にも耐えられる措置と書いた意図は、具体的にはそのような対策ということです。
福島第一原発から10km程度の位置にある第二原発では、やはり想定を超える津波に襲われたにも関らず、こちらでは冷温停止が出来ています。 その違いは何だったのでしょうか。 第二原発では、外部からの高圧送電線が1回線生きていたため︵これは必ずしも褒められたことではありませんが︶、中央制御室において原子炉の状態を把握でき、事故4日後の3月15日には全ての号機で冷温停止をすることができました。 また、逆に、福島第一原発4号機では検査のため停止していたにも関わらず爆発が起こってしまいました。 今回の事象に関しては、電源対策がその全てといっても過言ではないでしょう。
その後に付記した︵2︶に関しては圧力抑制プールから配管⇒AO弁⇒MO弁⇒排気筒⇒屋外放出となったはず、と私は考えますが。 ただ、こちらの方は、電源喪失が起きた後のことでありますし、ハグさんと見解が異なるようですので、各方面の報告書を点検した上でまた記事に書きたいと思います。
結論としては、今回の事故を踏まえ、電源ラインの喪失への対策がきちんとなされていれば、再稼動は容認すべきだと考えます。 投稿者 kameno | 2012年5月23日 10:42