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2011年6月19日
吸着塔の高線量原因を調査=東電﹁初期トラブル﹂-汚染水浄化停止・福島第1
福島第1原発の高濃度放射能汚染水処理システムが本格運転から間もなく停止した問題で、東京電力は18日、セシウム吸着塔の表面線量が高くなり、1カ月とみていた交換水準に5時間で達した原因の調査を始めた。
1~4号機などの地下には原子炉から漏れた高濃度汚染水が推定で約11万トンあり、東電は空いている設備に移送している。あと1週間から10日で汚染水の水位が上昇して地下水や海に流出する恐れがあり、それまでに処理システムの運転を再開させる方針。
東電によると、稼働5時間で処理できた汚染水は約75トンにとどまった。除染の程度は不明という。東電の松本純一原子力・立地本部長代理は記者会見で﹁一刻も早く本格運転して汚染水の水位を下げる必要があるが、最初から完璧に作動するほど容易ではない。初期トラブルをつぶしている段階だ﹂と話した。
︵時事通信 2011/06/18-20:57︶
原発利権が事故処理にまで及んでいるのかとうんざりさせられるニュースです。
福島第一原子力発電所で実施されている汚染水処理システムは
(1)油分離装置︵東芝︶
(2)セシウム吸着装置︵米キュリオン社︶
(3)除染装置︵アレバ社︶
(4)淡水化装置︵日立など︶
から構成されています。
システム全体には数兆円規模の投資がなされ、予定では1日1200立米の汚染水を処理するはずでした。
処理費用は、1リットル当たり210円。
処理しなければならない汚染水は2011年末までに250,000立米発生すると見込まれますので、処理費用は今年だけで530億円ほど掛かります 。
しかし、1ヶ月持つと考えられていたセシウム吸着塔が僅か5時間、処理量75立米で交換基準に達してしまい、運用停止に追い込まれています。
お粗末極まりない話ですし、直ぐに停止することを知っていながら確信犯的に運用を強硬したのではないかとも勘ぐりたくなります。
もし、セシウム吸着塔の交換が予定よりもかなり頻度を増やさなければならないとしたら、処理費用はその分嵩んでいきます。
気がついたら処理費用がさらに何千億円、あるいは何兆円にも及んでいた、なんてことにもなりかねません。
それ以前に処理すらできずに海洋に垂れ流しとなるのでしょうか。
そもそも、何故除染に関して日本の技術を使わずに米・キュリオン社やフランス・アレバ社のものを使うのでしょうか。
以前書いた 濃紺の化合物が日本を救う のブログ記事では、東京工業大原子炉工学研究所長の有冨正憲教授が開発した除染装置を紹介しました。
そのブログ記事では、ピンチをチャンスに変える期待を込めた蛇足として、﹁もしもこの汚染水処理技術により汚染水問題を克服し、技術確立ができた場合は、日本は逆にこの技術を通して核汚染で苦しむ他の世界各地を救うことにも繋がるはずです。そのような期待も込めて、問題解決に歩みを進めることができる対策が着実に進むことを節に望みます。﹂と結びました。
この他、金沢大学の太田富久教授も、アレバのシステムより20倍早く除染できる画期的な技術開発も成し遂げています。
2ヶ月前の報道を引用します。
化学者が﹁福島原発の汚染水を浄化できる粉末を開発﹂
仏原子力大手アレバが福島第1原子力発電所の放射性物質を含む汚染水の処理システムを提供することになり、これまで復旧作業の妨げとなっていた問題の解消が見込まれる。しかし、ある日本の化学者は、汚染水の除染が可能とされる粉末を1カ月足らずで開発したと発表。この粉末を使った場合、アレバのシステムより20倍早く除染できる可能性があり、そうなれば、最終的な目標である原子炉の安定的冷温停止に向けた作業が大幅に加速する。
この粉末を開発したのは金沢大学の太田富久教授。同教授によると、天然の鉱物と化学物質を混合した白い粉末は、汚染水に溶けた放射性物質を捕まえて沈殿させるという。1000トンの汚染水の場合では1時間で処理できる。一方、アレバの処理システムによる放射性物質の除去は1時間当たり50トンの汚染水。
太田教授は20日のインタビューで、沈殿のスピードが全く違うので、非常に早い処理ができる方法だと語った。この技術は汚染処理を専門とするクマケン工業︵秋田県︶と共同で開発されたものだ。同社は2008年以来、太田教授の開発した粉末を利用している。
太田教授は1週間ほど前、この放射性物質除去粉末の開発を完了した際、東電と政府に連絡し、現在も協議が続いているという。この件に関して東電と政府のいずれからもコメントは得られなかった。
同教授はアレバのシステムとの差について、化学構造の違いを理由に挙げているが、アレバによる処理について詳細を得ていないことから、それ以上の推測はできないとしている。同教授の技術は実験段階では実証済みであるが、実際に工業応用として利用されたことはない。
太田教授の技術では、汚染水中の放射性物質は粉末に吸着された後に沈殿していく。そして濁った部分の放射性物質は水と分離し、容器の底に堆積する。分離した上澄み水は透明だ。実験では、放射性ではないセシウムを1~10ppmの濃度で溶かした水100ミリリットルに粉末を1.5グラムを入れた。︵福島第1原発での放射性物質の濃度は約10ppm。太田教授の開発した粉末は100ppmの濃度まで処理可能だという。︶同教授によると、この浄化処理は10分で完了した。さらに数千トンの水を同時に処理する場合でも10分を大幅に超えることはないということだ。
太田教授は、放射物質をほぼ100%除去できると見ている。
太田教授の考えでは、アレバが採用したような汚染水処理施設が数カ所建設され次第、今回開発された粉末はすぐにでも福島原発での汚染水処理に利用できる可能性がある。実験では放射性物質が使われなかったが、化学的な性質は同じなので、実際に放射性物質の除去に使われた場合でも同じ結果が出ると、同教授は胸を張る。
この粉末の開発期間は1カ月足らずと非常早かった。ベースとなったのは、通常は工場付近で見つかる産業汚染物や金属汚染物の混じった汚染水を除染するために開発された類似粉末だ。太田教授はこの凝集剤の考案を6年前に始めた。マグネシウム、鉄、コバルトなどの重金属向けであったため、その化学成分は、放射性同位体のヨウ素、セシウム、ストロンチウム、プルトニウムにも応用できた。そして、同教授はこの凝集剤を微調整して今回発表した粉末を開発した。同教授は特許を理由に、正確な配合について開示しなかったが、原料は簡単に手に入リ、また供給量も豊富であると述べた。
太田教授はこれまで天然物質と環境汚染を専門に取り組んできたため、開発した製品が原発汚染で活用できるとは思っていなかったと語った。
︵Japan Real Time 2011/4/22︶
このような素晴らしい技術を、政府も東電も利用することすら検討していないようです。
何故、汚染水の浄化装置に海外メーカーのものを使わなければならないのでしょうか。
確実に運用できる信頼性の高いシステムであるのならば、まだ我慢できます。
しかし、運用に至るまでの数々のトラブル、そして、ようやく本格運用が始まったと思ったら僅か数時間での運転停止。
なんとも情けないことです。
脱塩系のシステムを見ても、日本には日揮など、世界に誇る技術をもつ日本企業は多くあります。
しかし、日本の技術によって汚染水問題を克服し、放射性物質除染の技術確立を図るという将来に向けた淡い期待は、幻想に終わりそうです。
震災復興に係る仮設住宅も、日本企業ではなく、そのほとんどを韓国や中国企業が高額で請け負ったという報道もあり、それが事実であれば政府は本当に日本を復興させる気があるのか、疑問に感じることだらけです。
真実のほどは分かりませんが、被災地・被災者置き去りの利権巣窟のためだけの復興・復旧はやめてもらいたいものです。もし本当だとしたら......。
投稿者 叢林@Net | 2011年6月20日 17:58
叢林@Netさま
暴論でも何でもなく、地元業者によって復旧復興を進めるべきだと思います。地域の特性に合わせた柔軟な対応ができるという利点もありますね。
投稿者 kameno | 2011年6月21日 23:07