Mad Science 魅惑の煌き


化学を少しでも齧った人には、化学実験の中に少なからず面白さや冒険心、化学の真実の美を見出したこともあるはずです。
そのワクワク感を再度愉しむことが出来るサイトをご紹介します。20110213-01

Mad Science


いきなり紹介されている実験が「Making Salt the Hard Way(危険すぎる製塩法)」。
popcorn

実験の目的はポップコーンに塩味を付けるという至って平和的なものですが、その方法は・・・網で吊る下げたポップコーンの下でナトリウムと塩素を反応させるというものです。


元素周期表では、左端の第一族、右にある第17族元素は不安定なものが多いという傾向があります。
最も不安定な金属の一つであるナトリウム、そして毒ガス兵器としても使用される塩素を反応させるとどうなるのでしょう。

ナトリウムが何故不安定なのかというと、電子配列で電子が満杯の状態から一つ余った電子を手放しやすい元素であるから。
逆に塩素は満杯の電子配列にあと一つ電子が足りない元素です。
その2つが出会うと、もう大変。
ナトリウムの余剰電子が塩素の電子殻に移動し、猛烈なエネルギーを放出しながら反応します。
ナトリウムは、電子を1個手放すことでプラスイオンに、塩素は電子1個受取る事でマイナスイオンとなります。
プラスイオンとマイナスイオンがイオン結合により結びつき、塩化ナトリウムという安定した化合物が出来上がるのです。

実験は、というと猛烈な反応によって火花が飛び散り、その数秒後には、ポップコーンを吊るした網が解けて反応の起こっているボウルに落下、液体ナトリウムの火の玉が実験室中に拡散してしまいました。
結局目的は達せられなかったようですけど・・・・危険な実験ほど美しい煌きを放つのでしょう。

 


そのほか、恐怖の太陽を作る方法、グラスの中の量子力学、水銀モーター、自家製チタン、肉眼で素粒子を見る、小さな町全体を賄うほどの電力設備を使ってコインを半分に圧縮するなど。


物質の性質への理解を深めたり、未来の化学者を育てるためには化学式を暗記するだけではなく、このような実践事例に触れることも大切でしょう。
危険とも思える実験も、きちんとした知識と準備の上では(安全に)行うことが出来ます。
決行するには躊躇するような実験を代行してくれて、その美しい瞬間を紹介してくれています。

 

もう一つ、この中から実験を紹介します。


「石炭と水と空気から作られ、鋼鉄よりも強く、クモの糸より細い」というナイロン繊維の合成です。
Stir Up Some Nylon
nylon

1935年、デュポン社のウォーレス・カロザースが合成に成功したナイロンは繊維化学史上最も重要な発明の一つとされています。
一から作り上げた最初の材料であって、当時欧米の女性に欠かすことの出来なかった絹のストッキングの「高価」であり、「伝染しやすい」という欠点を克服した夢の素材でした。

発売当時のアメリカではナイロン製のストッキングを求める群衆で店先が埋め尽くされたほどであり、さらに日本の重要な輸出産業の一つであった絹が大幅に落ち込んだのもナイロンのせいであるといっても過言ではないでしょう。

ナイロンは、ジアミンとカルボン酸の「縮合」結合により合成されます。
しかし、それでは製造に時間がかかるため、工業的には別の方法が取られます。

カルボン酸の代わりに、酸クロリドを用いるのです。
そうすると、ジアミンと酸クロリドが触れた瞬間にナイロンが合成されるので、それを上に引き上げることで次々と繊維状のナイロンが出来上がっていきます。

ウォーレス・カロザースが合成に成功したナイロンは6,6ナイロンで、「ヘキサメチレンジアミン」と「アジピン酸ジクロリド」を使いました。
『Mad Science』では「アジピン酸ジクロリド」ではなく「セバシン酸ジクロリド」を使っていますから、合成されるナイロンは6,10ナイロンですね。


『Mad Science』のこだわりは、化学実験をエレガントに、そして「例え危険な実験でも美しく安全に」というところにあります。
ですから、ビーカーではなくワイングラスを用います。

ワイングラスの中に「ヘキサメチレンジアミン」をまず注ぎ、そこに「セバシン酸ジクロリド」を静かに注ぎます。
両薬品は比重の関係で層を成すはずですが、うまく層状にならない場合には、バーテンダーに手伝ってもらうよう(笑)アドバイスされています。
そして、ピンセットで二液の層を掴んで引き上げる!

続きはこちら

 

その美しい光景を是非ご覧ください。


■関連リンク
美しき元素の世界! The Elements

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投稿者: kameno 日時: 2011年2月13日 13:34

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