眼に見える世界は蝋燭の炎の形

文部科学省より、一家に一枚シリーズとして、宇宙の姿をわかりやすく表現した「宇宙図」が発表されました。

宇宙図」は、最新の研究にもとづく宇宙の姿を、一人一人の私たち人間を中心として描いたものです。

そもそも「宇宙」という文字自体についてみると「宇」は空間全体を意味し、「宙」は時間全体(過去・現在・未来)を意味します。

往古来今を宙といい、四方上下を宇という。 『淮南子天文訓』第1巻(斉俗訓)
  ですから「宇宙」は、元々時空(時間と空間)の全体を意味しています。


「宇宙図」には、縦方向には、人間からさかのぼって宇宙の誕生までの「時間の流れ」が、横方向には、宇宙の「空間の広がり」が表現されています。
いわば現在の科学の粋を集めて具現化した「須弥山」といえます。




■ルール1 宇宙を見ることは、昔を見ること
不思議なことに、地球から宇宙をながめると、そこに見えるのは昔の宇宙の姿です。例えば私たちに見える太陽は、8分ほど昔の姿。すばる(散開星団M45)は 400年ほど昔の姿なのです。なぜ、そんなことが起こるのでしょう?私たちにものが見えるのは、そこから発した光が、私たちに届くから。けれど宇宙の星々はとても遠いので、光でさえやってくるのに時間がかかります。そのため、こちらに届くころには、その光が伝える星の姿はもう「昔の姿」になってしまっているのです。

■ルール2 見える宇宙と見えない宇宙がある
宇宙図の中心に描かれた私たち人間の前後左右には、「現在の宇宙」が広がっています。しかし私たちに、その宇宙の姿は見えません。ルール1を忘れずに。見えてくるのは、昔の宇宙なのです。私たちが肉眼や望遠鏡で捉えることのできる天体をこの宇宙図に並べていくと、図の中心にあるような、きれいなしずく形の表面になります。宇宙のこの部分だけを、私たちの眼は見ています。またそれぞれの天体は、何千年前、何億年前と、違う時代の姿を私たちに見せているのです。

■ルール3 宇宙では、遠くの距離は要注意
天体までの距離を表す時によく使われるのが、「光が旅をしてきた道のり」です。例えば、私たちに見える宇宙の中で一番遠くからきた光は、137億年をかけて「137億光年」の距離を旅してきました。しかしその長い旅の間にも宇宙は広がり続けたため、光が進んでこなければいけない道のりは、スタート時点よりもどんどん伸び、光が放たれた場所自体も、はるかに遠ざかってしまいました。光が届いた現在、その場所は、もう私たちから470億光年のかなたに離れていると推測されています。

■ルール4 宇宙は「科学の眼」で見えてくる
私たちに見える宇宙は、広大な宇宙の、ほんのひとしずくです(しずく形の表面)。しかし「科学の眼」は、それを手がかりに、さまざまなことを明らかにしてきました。私たちに見える宇宙が、どうやって誕生したのか(ラッパ形の底の部分)。それがどのように広がってきたか(ラッパ形の表面のかたち)。そしてラッパ形の向こうにも、宇宙は遠く広がっているという可能性。この宇宙図には、そうした科学的発見の成果がたくさんに詰まっています。宇宙は、あなたに読み解かれるのを待っています。

「宇宙図」より



「宇宙図」に描かれている世界を簡単に図式化すると、次のようになります。
※宇宙図のポスターの図を元に少し改変してみました。

uchuzu.jpg

図の縦軸が時間軸、横軸が空間の広がりを表わしています。
全体はラッパ(或いはどんぶりともいうべきか?)のような形をしています。
これは、宇宙が誕生から常に(もちろん今も)、膨張を続けていることがわかります。
時間軸0から横に広がる面が、現在の空間の広がりです。
このような時空としての宇宙の物語に加え、宇宙の誕生や成長の物語、そして人間の材料となる元素の物語が、この宇宙図には盛り込まれています。


ルール1?4を基本として考えてみると、私たちが直接見ることができる世界は、ほんの僅かであることがわかります。
ルール1、2により、私たちの見える世界をプロットしていくと、図の中の蝋燭の炎の形・・・あるいは雫の形とも表現されますが、そのような形にプロットされていきます。

現在時点での面においては、私たちの見える範囲は点となります。(ルール1)
そして、宇宙の始まりとされる147億年前も、空間的に点となります。(ビッグバンの時点)

私たちが今、直接見ることができるのは、この蝋燭の炎のような形の表面の部分のみです。
つまり、私たちが「今」眼にしているものは、すべてが蝋燭の炎の表面の部分に並んでいます。
また、眼に届くものの姿は、蝋燭の炎の表面を辿って私たちの眼に届けられます。
時間軸は下にいくほど過去に遡るのですから、見えているものは必ず過去の姿であることがわかります。

しかしながら、蝋燭の炎の表面の部分は見える可能性があるとはいえ、全て見ることはできないわけです(ぐるっと360度周囲全体を同時に見ることは不可能ですし、ある物体の裏側を同時に見ることも不可能です)から、私たちが捉えることができるものは、蝋燭の炎の表面の部分の、さらにごく僅かの部分だけなのですね。

この蝋燭の炎の内側の部分は、過去の(歴史の)世界となります。
そして、蝋燭の炎の外側の部分は、私たちにとって、現在は見ることが適わない部分の世界となります。

もちろん、空間上の場所が異なれば時間軸もずれてきますから、場所によって炎の形もその分ずれていきます。
厳密に言えば、一人一人によって時間軸はずれています。
一人一人が固有の、常に膨張を続ける「蝋燭の炎」を持っているという表現もできます。

例えば、15億光年離れた二人がいたとして、その二人の蝋燭の炎を表現すると下の図のようになります。
二人は、お互いに15億年前の姿を見ています(二人の蝋燭の炎の重なり部分)。
同様に、どんなに近くにいる人でも、時間軸は異なっているわけですし、見ることができる世界も厳密には異なっています。

直接見ることができる世界はごく僅かでかもしれませんが、時間軸上、空間軸上異なる位置にいる他の人からの情報伝達により、その世界を共有したり追体験したりということは可能でしょう。
(自分自身のもつ炎の内側の部分に限定されてしまいますが)


uchuzu2.jpg

 
炎を私たちの「いのち」になぞらえることは世界共通です。
仏教では、灯明を仏壇に灯したり、灯篭流しをしたりということを行います。
大船観音で行われる ゆめ観音においては、観音様へ通じる参道を「観音様へのほとけの通り道」として照らすことで供養するものであります。

お釈迦さまが入滅される時、周囲に集まった弟子たちに「自分の死後は自分自身を灯とし、法を灯として進みなさい」と仰られました。
蝋燭の炎は無明の闇を照らす尊い明かりとして、生きる道を照らし出してくれるという仏教の教えに譬えられています。

一人一人異なる時間軸をもつ炎の形の世界は、一人一人の世界を照らし生きる道を照らし出していくものなのです。

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それにしても宇宙は謎だらけです。

最新の観測結果によると、宇宙を構成する成分のうち7割以上は謎のエネルギー「ダークエネルギー」、2割以上が正体不明の物質「ダークマター」だといわれています。
化学元素周期表に登場するような普通の「元素」は、その全てを合わせても宇宙全体のたった4%程度でしかないようです。


この続きは国立天文台のサイトにある「宇宙図」にわかりやすくまとめられておりますのでご紹介いたします。

■関連サイト

文部科学省 一家に一枚シリーズ

一家に1枚周期表

一家に1枚ヒトゲノムマップ

一家に1枚 宇宙図

投稿者: kameno 日時: 2007年12月22日 02:56

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