亜炭でお茶を淹れてみた

港南区には、かつて炭鉱がありました。
炭鉱といっても良質の石炭が生産されたわけではなく、亜炭(あたん)と呼ばれる木質系の燃料です。
そのあたりの詳細は、下記のブログ記事をご参照ください。

港南区の炭鉱と戦争の影
亜炭を運ぶトロッコ

亜炭について、フリー百科事典『ウィキペディア』には次のように解説されています。

亜炭(あたん、英: lignite)とは石炭の中でも、最も石炭化度が低いものをいう。地質学上の用語としては褐炭が正しいが、日本においては行政上の必要からこの語が用いられる。
品質に関しては褐炭同様、石炭化が十分に進んでいないために不純物や水分を多く含み、得られる熱量が小さいことから、製鉄などの工業用途には向かない。日本では明治年間から1950年代まで全国各地で採掘され、主に家庭用燃料として重宝された。特に、第二次世界大戦中および直後においては、燃料の輸送事情が極端に悪化したため、仙台市・名古屋市、または長野市など大規模?中規模の都市の市街地などでも盛んに採掘が行われて利用された。亜炭は着火性が悪く、燃焼時にも独特の臭気や大量の煤煙を出すため、燃料事情が好転すると早々に都市ガスや石油などへの転換が進められた。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

事実、現在の港南区エリアで産出された亜炭も、燃料事情が悪かった時代には特に家庭用燃料として利用されていました。

亜炭は、実際にはどのようなものだったのでしょうか。
いろいろと調べてみると、現在でも燃料としてではなく、肥料や熱帯魚水槽の浄化のために販売されています。
さっそく試しに入手してみました。

これが届いた亜炭です。

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石炭と木炭の中間という表現がぴったりですね。
最戸産の亜炭を使ったことがある方のインタビュー「低温で石炭のように炎が出ない。燃えかすが多くて、臭かったな」(神奈川新聞平成8年6月4日)が印象的でしたので、さっそく実験開始です。
火を起してお湯を沸かしてみましょう。

こんなときは、茶道具の火熾が便利です。

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・・・・さすがに着火性は悪いですね。
10分ほどかかりました。
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しかも、臭気の強い白煙が濛々と立ち昇ります。
窓を開けて換気扇フルパワーで凌ぎます。
煙の匂いは、中国産の花火で遊んだ後、バケツの水に浸したときの匂いです。
おそらく硫化水素をたくさん含んでいるのでしょう。
まともに吸い込んだら健康に支障をきたすかもしれません。

ようやく着火しました。
炎が継続的に出ています。
また、燃え進むにつれて層の部分から亜炭が分解していきます。

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着火した後は外に持って行きました。
(家の中ではとても作業が継続できません)

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やかんに水を1リットルほど入れて、亜炭にかけます。
ウチワで扇ぎながら待つこと10分。

80℃ほどのお湯になりました。

では、さっそくお茶を淹れてみましょう。

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丁度淹れ頃の温度なので、おいしそうなお茶が出来ました。

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!・・・・美味い!!!!

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【実験結果】

100グラムほどの亜炭でも、お茶は充分に淹れることができる。
ただし、換気には充分な注意が必要。
根気も必要です。

 

現在の港南区エリアで産出された亜炭は、常磐炭の四級品程度、1キロあたり平均3700キロカロリーの熱量だったそうです。

とすると、100グラムの亜炭の持つ熱量は370キロカロリー。
熱効率を20%と仮定すると、74キロカロリーですので、1リットルの水を約70℃上昇させるポテンシャルがあるということですね。
まあ、計算どおりでしょう。

燃焼時にも独特の臭気や大量の煤煙を出すため、燃料事情が好転すると早々に都市ガスや石油などへの転換が進められたということが充分納得できる実験となりました。

投稿者: kameno 日時: 2013年5月27日 19:13

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