発電事業は「製造業」

昨年8月、第177回通常国会において「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」が成立し、今年(2012年)7月1日から施行されています。
この法律は、新エネルギー(再生可能エネルギー源=太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス等)を用いて発電された電気を、電気事業者が一定の期間・価格で買い取ることを義務付けるものです。
電気事業者が買取りに要した費用は、使用電力に比例した賦課金によって回収することとしており、すなわち電気料金が上乗せされて国民全体で負担することとなります。
詳細につきましては、経済産業省・資源エネルギー庁のサイトをご参照ください。

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※図は経済産業省・資源エネルギー庁のサイトより引用。

具体的な買取単価と買取り期間は次のようになります。
なお、買取価格は年度ごとに見直しがされますが、本年度契約する場合には太陽光発電設備10KW以上の場合、向こう20年間に亘り、発電電力総量に対し42円/KWhの対価が支払われます。
風力発電の場合は、20KW以下では実に57.75円/KWhです。

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新エネルギー普及促進のための価格設定のため、発電事業者が新規参入しやすいよう、採算が合う設定となっています。
ソフトバンクやローソンが早々と参入を表明し、事業展開を進めている理由もここにあります。


さて、公益法人たる寺院が、新しい買取制度に則って発電事業に参加したい場合には、どのような手続きをとればよいでしょうか。
まずは、太陽光発電の場合には

太陽光発電
1. 10kW未満の太陽光発電設備については、これまでも国による補助金の受給要件として活用されてきた実績を踏まえ、JIS基準(JISC8990、JISC8991、JISC8992-1、JISC8992-2)又はJIS基準に準じた認証(JET(一般財団法人電気安全環境研究所)による認証を受けたもの、又はJET相当の海外の認証機関の認証)を得ていること。
2. 10kW未満の太陽光発電設備については、余剰配線(発電された電気を同一需要場所の電力消費に充て、残った電気を電気事業者に供給する配線構造)となっていること。
3 事業者が複数にそれぞれ10kW未満の太陽光発電設備を設置する場合でその発電出力の合計電源毎に設ける基準(太陽光)223. 、、が10kW以上となる場合にあっては、(1)全量配線(発電された電気を住宅内の電力消費に充てず、直接電気事業者に供給する配線構造)となっていること。(2)設置場所が住宅の場合は居住者の承諾を得ていること。
4. 太陽光パネルのモジュール化後のセルの変換効率が、以下のパネルの種類に応じて、それぞれ定める変換効率以上のものであることについて確認できるものであること。(破壊することなく折り曲げることができるもの及びレンズ又は反射鏡を用いるものを除く。)
シリコン単結晶系13.5%以上
シリコン多結晶系13.5%以上
シリコン薄膜系7.0%以上
化合物系8.0%以上
5.ダブル発電(当該太陽光発電設備の設置場所を含む一の需要場所に自家発電設備等とともに設置される場合)の場合は、逆潮防止装置があること。
経済産業省・資源エネルギー庁のサイト)

といった設備の基準を満たしていることが必要となります。
風力やバイオマス、地熱などについてもそれぞれ基準が設けられています。

もう一点、クリアしなければならない問題は、公益法人が利益を追求する一般会社とは異なる法人であるための寺院規則の変更です。
公益法人としての宗教法人が行う収益事業の考え方は、次のとおりとなっています。(公益法人等とは、財団法人、社団法人、宗教法人、学校法人など、特別法により設立された法人のことです。つまり、宗教法人は、宗教法人法により設立されている法人です)

■公益法人等の収入は、
非課税とされる「非収益事業」「宗教活動」「公益事業」
課税対象となる「収益事業」
とに分類され、収益事業に対して課税されます。

■収益事業の範囲は、次に示された33の事業をいいます。

収益事業とは、次の33の事業(付随して営まれるものを含む)で、継続して事業場を設けて営まれるものをいう(法人税法第2条、施行令5条1項)、としています。

1.物品販売業 2.不動産販売業 3.金銭貸付業 4.物品貸付業 5.不動産貸付業 6.製造業 7.通信業 8.運送業 9.倉庫業 10.請負業 11.印刷業 12.出版業 13.写真業 14.席貸業 15.旅館業 16.料理店業その他の飲食業 17.周旋業 18.代理業 19.仲立業 20.問屋業 21.鉱業 22.土石採取業 23.浴場業 24.理容業 25.美容業 26.興行業 27.遊技所業 28.遊覧所業 29.医療保険業 30.洋裁 和裁 着物着付け 編物 手芸 料理 理容 美容 茶道 生花 演劇 園芸 舞踊 舞踏 音楽 絵画 書道 写真 工芸 デザイン 自動車操縦若しくは小型船舶の操縦(以下 技芸という)の教授 31. 駐車場業 32.信用保証業 33.その他工業所有権その他の技術に関する権利又は著作権の譲渡又は提供を行う事業

■公益法人の収益事業については 25%、平成14年4月1日以後開始した事業年度については 22% の税率が適用されます。

■公益法人等の寄附金の損金算入限度額は、収益事業から生ずる所得の 20%とされます。
収益事業部門から非収益部門への支出は、寄附金とみなす(みなし寄附金)ことになっています。

■収益事業を営まなくても、住職や従業員等に支払われる給与には源泉徴収義務が生じます。

新しい買取制度に則り、発電を事業として行う場合には、「収益事業」として、法人課税法第2条、施行令5条1項による33の事業のうち、「製造業」として行うこととなるはずです。
従って、寺院規則に、収益事業として製造業を行う旨を明記して規則変更を届ける必要があります。

今後、発電設備を境内に設置する寺院も増えていくことでしょう。
このような制度がスタートしているのだということをよく理解しておくと良いと思います。

いずれにしましても、単なる環境への貢献だけでなく、採算ベースを考慮して作られ、施行された新しい固定買取価格制度を、宗門でも積極的に利用していかない手はありません。
太陽光発電だけでなく、風力、水力、地熱、バイオマスなど地域特性を生かしていくことも肝要でしょう。

 

なお、これまでの余剰電力買取制度(旧制度)は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(新制度)の開始に伴い、新制度の設備認定を受けたものとされ、新制度下にて従来と同条件で買取りが続きます。



■関連リンク
なっとく!再生可能エネルギー(経済産業省・資源エネルギー庁

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投稿者: kameno 日時: 2012年7月 5日 00:01

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