防護柵に求められる安全性

連日のように重大な交通事故の報道が続いています。
関越自動車道で起きた高速ツアーバス事故では46人もの死傷者が出てしまいました。
亡くなられた方には心より弔意を表し、負傷された方には1日も早い回復を願います。
また、事故再発に向けて徹底的な原因調査と、多数の命を預かっている運転手、バス会社、ツアー会社の安全管理の見直し、徹底を望みます。

事故は、想定外の事象が生じた時に起こります。
いかに、想定の範囲を広げるかが、事故防止に繋がる訳ですが、事故被害拡大防止の観点から気になった点を、道路管理者の面から防護柵にテーマを絞って考えてみます。

今回の関越自動車道での事故では、防音壁の端部ににバス正面から突っ込み、座席をなぎ倒しながらバス車内を防護壁が貫通してしまいました。
この事故映像を見た際には、防音壁の手前でどのよう防護柵が設置されていたのか、その点は充分に検証されるべきことだと感じます。

バスがめり込んだ防音壁は高さ約2.9mであり、その構造はコンクリート基礎(高さ0.94m、厚さ23cm)の上に高さ2m、厚さ12cmのH鋼と、そのH鋼の間に金属製の壁が設置されている構造です。
事故前の防音壁の状況がYoutubeに公開されていました

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↑左側に見える防音壁手前の防護柵(ガードレール)は防音壁まで届いておらず、約10cm程の隙間が生じていたため、運悪くこの隙間にバスが斜めに突っ込んでしまいました。
(もう少し手前に突っ込んでいたら防護柵を突き破り、桁下に転落して更に大惨事になっていた可能性もあります)

 

↓の画像は、事故現場から数百メートル東京方面に進んだ防護柵の設置状況です。
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(Googleストリートビューより)

このように、防護柵が途中から二重になり、防音壁の前面を巻くように設置され、それぞれの繋ぎ目では防護柵、防音壁の端部に車が突っ込まないように配慮されていることが分ります。

高速道路に設置する防護柵の設置基準では、ガードレールと防音壁など異なる形状の防護柵を連続して設置する場合は、隙間ができないように設置することが求められています。
その設置基準は1998年に設定されたものであり、それ以前に設置されている防護柵ではその基準を満たしていないものも見られるようです。

 

しかし、設置基準にある、なしに係わらず、少し運転者の立場になって設計すれば、防護柵をどのように設置するべきかは答えが出るように感じます。
早急な安全点検と、しかるべき対策をお願いしたいところです。


 

と、ここまで記事を書き進めましたが、逆の観点から日本の道路構造は逆に過保護すぎるのかとも感じます。
様々な構造物がごちゃごちゃと混在するために、安全性を損ねたりしていないでしょうか。

例えば、ドイツのアウトバーンでは、 郊外では防護柵(ガードレール)や側壁がほとんど無く、それに照明もありません

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制限速度は130km/h、それ以上出した場合は保険の適用外。自己責任となります。
向こうに見える橋脚に130km/hのバスが突っ込んだ場合には、どれだけの大惨事になるか計り知れません。
運転手はそれゆえに、一層安全に留意し気を引き締めて運転していることでしょう。


次の写真は中国の高速道路
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日本では、このような拡張工事の方法は考えられません。
居眠り運転などで脇に逸れたら、道路下に転落してしまいます。
(日本では、拡張工事の部分にの段差に車が転落しないようにガードパイプなどをきちんと設置しなければなりません)

他国のさまざまな状況をみるにつけ、日本ほど安全について国がガチガチに基準を設けて安全管理を徹底的にしている国は珍しいと思います。
安全性の向上という点では誇るべき部分ですが、逆に安全管理を国に任せてしまっている面も否めないでしょう。

国により定められた規準を守っているから、管理責任は無いという考えが微塵にでもあれば、それは思い違いです。
安全管理の責任の所在、自己責任の考え方について、改めて見直してみる良い機会なのかもしれません。

投稿者: kameno 日時: 2012年5月 3日 02:35

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