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2014年7月13日
原子力発電所再稼働、特定秘密保護法、集団的自衛権行使容認など、世論を二分するような事象に対する報道には、各メディア独自の世論調査や街頭インタビューがその論拠として提示されます。
しかし、世論調査の結果をそのまま鵜呑みにすることは避けたほうが良いでしょう。
少なくとも、様々な視点から事象を概観するために、メディアごとの調査結果を比較していく必要があります。
今回は、集団的自衛権について世論調査の結果を検証してみましょう。
︵※注‥当記事では、この問題に対して賛成、反対のどちらの主張をするものではありません︶
まずは、次の記事を見てみましょう。
割れた世論調査、集団的自衛権の質問に“枕詞”つけた朝日・毎日、回答に影響?
安倍晋三内閣が集団的自衛権行使容認の憲法解釈変更を閣議決定した前後に行った全国紙の世論調査結果が出そろい、賛否が真っ二つに割れた。中立にみえる世論調査も、各社の意図で結果が左右される場合があるのだ。
結果が大きく割れたのは回答方法に原因がある。
産経新聞とFNN︵フジニュースネットワーク︶合同調査では、集団的自衛権についての設問で、行使容認に相当する﹁全面的に使えるようにすべきだ﹂と﹁必要最小限度で使えるようにすべきだ﹂の回答肢を用意し、合わせて63・7%が﹁行使容認﹂とした。
一方、他社はいずれも﹁賛成か反対か﹂という二者択一で回答を求めた。
読売新聞は、前回調査で産経と同様の回答肢で実施、﹁行使容認﹂は7割を超えた。今回は朝日新聞などと同様の二者択一方式で行い、﹁行使反対﹂が上回る結果になった。
ただ、読売は集団的自衛権の個別事例についての賛否も求め、紛争中の外国から避難する日本人を乗せた米輸送艦を自衛隊が防護できるようにすることには67%が﹁賛成﹂と回答した。読売は4日付朝刊で、世論の反応を﹁事例は理解、総論は慎重﹂と報じた。
一方、朝日と毎日新聞の質問には﹁これまで政府は憲法上、集団的自衛権を使うことはできないと解釈してきたが﹂という枕詞︵まくらことば︶が登場。解釈変更はタブーとの印象を与えかねない。
朝日は﹁安倍首相が国会の議論や国民の賛成を経て憲法改正をするのではなく、政府の解釈を変えたことを適切だと思うか﹂とも質問し、﹁適切だ﹂は18%にとどまった。
これに対し産経・FNNは、集団的自衛権の行使を﹁容認﹂と回答した人のみに限定した上で﹁必ずしも憲法改正の必要はない﹂と﹁当面、解釈変更で対応すればよい﹂の2種類を用意、足すと70・8%に達した。また、全回答者の中での比率を計算すると、45・1%が解釈変更を容認したことになり、質問の方法でも結果が大きく変わることを示している。
■質問の中に答え答えが含まれている場合がある
上智大の碓井広義教授︵メディア論︶﹁回答する人は、大局的に賛成か反対かと聞かれると心情的に答えてしまい、各論に入り卑近な具体例を挙げられると筋道立てて物事を考えるようになる。報道各社も、自分たちが欲しい回答を導き出そうとする傾向があり、質問の中に答えが既に含まれている場合がある。まさに質問が命。結果をすべてうのみにはせず、客観性が担保されているか、ウラを読まないといけない﹂
︵産経新聞2014/7/8︶
集団的自衛権行使容認についての世論調査結果を﹁産経・FNN﹂﹁毎日﹂﹁読売﹂﹁朝日﹂各社で比較しています。
メディアごとに調査結果に特徴が出ています。
それぞれのメディアの主張する方向性に近い結果となっていますね。
世論調査の結果を見る際には
︵1︶調査対象および調査数
︵2︶対象の抽出方法
︵3︶設問
︵4︶統計学的有意度
などを見ていく必要があります。
これらを恣意的に運用することで、<結果として出したい>調査結果を得ることも可能となります。
ここで、統計学的に有意かどうかということは﹁仮説﹂と﹁実際の調査結果﹂との差が誤差の範囲を超えるということを意味します。
有意水準︵結果が有意かどうかを判断する基準︶は、予め設定されていなければなりません。
では、このうち、一例として朝日新聞の統計結果例をみてみましょう。.
安倍政権が集団的自衛権の行使容認に向けた姿勢を強めるなか、朝日新聞社は憲法に関する全国郵送世論調査を行い、有権者の意識を探った。それによると、集団的自衛権について﹁行使できない立場を維持する﹂が昨年の調査の56%から63%に増え、﹁行使できるようにする﹂の29%を大きく上回った。憲法9条を﹁変えない方がよい﹂も増えるなど、平和志向がのきなみ高まっている。
安倍内閣支持層や自民支持層でも﹁行使できない立場を維持する﹂が5割強で多数を占めている。
安倍晋三首相は政府による憲法解釈の変更で行使容認に踏み切ろうとしているが、行使容認層でも﹁憲法を変えなければならない﹂の56%が﹁政府の解釈を変更するだけでよい﹂の40%より多かった。首相に同意する人は回答者全体で12%しかいないことになる。
また行使容認層に、行使できるようにするためには近隣諸国の理解を得ることが必要かと聞いた質問では、﹁必要だ﹂が49%、﹁必要ではない﹂が46%と見方が割れた。
ただ、朝日新聞社が今回、現地の調査会社を通じて中国と韓国でも面接世論調査を実施すると、日本の集団的自衛権について﹁行使できない立場を維持する方がよい﹂と答えた人が中国で95%、韓国でも85%と圧倒的だった。安倍政権が行使容認に踏み切る場合、中韓両政府だけでなく、両国民からも大きな反発を受けることが予想される。
一方、国内では憲法9条を﹁変えない方がよい﹂も昨年の52%から64%に増え、﹁変える方がよい﹂29%との差を広げた。武器輸出の拡大に反対が71%→77%、非核三原則を﹁維持すべきだ﹂も77%→82%。自衛隊の国防軍化に反対も62%→68%と増えた。
これらの項目は昨年3~4月の調査と方法も質問文も同じだが、有権者が1年足らずの間に軍事力強化に対する不安を強めている様子がうかがえる。
改憲の是非についても、今の憲法を﹁変える必要はない﹂の50%が﹁変える必要がある﹂の44%を上回った。質問文や調査方法が異なり単純に比較できないが、朝日新聞社の調査で改憲反対が多数を占めるのは1986年の調査までで、次に改憲是非を聞いた97年以降は賛成が多かった。 調査は日本と中国で2~3月、韓国で2月に行い、中国調査は主要5都市で実施した。有効回答は日本2045件、中国1千人、韓国1009人。
︵朝日新聞2014年4月6日︶
見出しのみをみると、﹁日本国民の63%が集団的自衛権の行使反対﹂という印象を受けることでしょう。
日本の人口が1億2千万人とした場合、ざっと7千560万人が反対、ということでしょうか。
まず、どのような設問かは不明ですので、そこは仕方がないとして、本文から分かることは
有効回答が 日本国内から2045件、中国国民から1000件、韓国国民から1009件となっています。
集団的自衛権について﹁行使できない立場を維持する方が良い﹂と回答した人が中国国民からは95%、韓国国民からは85%という、圧倒的反対が明確に予想される国をわざわざ指定しての調査なのです。
メディアの主張したい主義主張を優先するという好事例です。
参考までに、集団的自衛権行使について、各国政府の見解を白地図に表示してみました。
現在分かっている国︵および地域︶のみ表示しております。
図 日本の集団的自衛権行使についての各国政府の見解
今回は朝日新聞を事例にしてみましたが、他のメディアでも同じです。
このように世論を二分するような重要な件については、双方の立場の論旨をきちんと同等に扱って、その上で各自の意見を形成するという役割を果たすべきだと考えます。
受け手側が注意する点は、実際にどのような調査が行なわれ、結果がどうなっているのかを逐一検証して判断する必要があります。
冒頭記事でご紹介した上智大の碓井教授の指摘される﹁回答する人は、大局的に賛成か反対かと聞かれると心情的に答えてしまい、各論に入り卑近な具体例を挙げられると筋道立てて物事を考えるようになる。報道各社も、自分たちが欲しい回答を導き出そうとする傾向があり、質問の中に答えが既に含まれている場合がある。まさに質問が命。結果をすべてうのみにはせず、客観性が担保されているか、ウラを読まないといけない﹂とうことを常に心しておく必要があります。
特に、テレビ報道の街頭インタビューは、ほんの数人を抽出して、それがあたかも﹁全体の意見﹂のような作成のされ方が最近目立ってきました。
街頭インタビューは、統計学的な有意性などは全く無いといえましょう。
いずれにしても、現在、私たちは様々なルートで、様々な視点からのものの見方をすることが出来る様になりました。
情報の出典や信憑性をきちんと咀嚼して一つ一つの事象に対する自分自身の意見をきちんと提示できるようにリテラシー︵情報の読み取り方︶を身につけておくことが必要でしょう。
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