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2012年9月24日
数億年のデータ保存が可能に 石英ガラスのストレージ、日立と京大が開発
日立製作所は9月24日、京都大学工学部︵三浦清貴研究室︶と共同で、石英ガラスを使ってデジタルデータを記録・再生可能な新技術を開発したと発表した。レーザーで石英ガラス内部に多層の記録層を形成し、CD並みの容量を数億年以上の長期間にわたって保存できる可能性があるという。文化遺産や公文書、個人が残したいデータなどの保存用媒体として実用化を目指す。
石英ガラス内部にフェムト秒パルスレーザー︵数兆~数百兆分の1秒にまで短パルス化したレーザー︶を照射してドットを形成。ドットを1、ドットがない部分を0としてデジタルデータを記録する。レーザー出力や形成するドットの間隔、ドットの深さ方向の間隔を最適化して多層記録技術を開発。4層の記録層を作成し、CD並みの容量を保存できるようにし、記録密度はCD︵35Mバイト/平方インチ︶を上回る40Mバイト/平方インチを実現したという。一度に100個のドットを記録する技術も開発し、記録も高速化した。
データ再生には市販の光学顕微鏡を活用。ドットデータを撮影すると、そのままでは各層のドット像が写り込み、ノイズになってしまう。正確に読み取るため、焦点距離を変えた2枚の画像を使ってコントラストを強調し、さらにドットの輪郭も信号処理で強調する技術を開発。読み出しエラーゼロに相当するSN比15デシベルの再生を達成したという。
記録した石英ガラスを1000度で2時間加熱する高温劣化加速実験を行ったところ、データを劣化なく再生できたという。これは数億年以上の保存期間に相当するとしている。
今後、記録密度をさらに高め、実用化を目指した実証実験を進めていくとしている。
(ITmediaニュース 2012年9月24日︶
これは、注目すべき技術だと思います。
現代の記録媒体は、容量︵記憶密度︶の追求が優先していて、耐久性については二の次という感がありました。
しかし、データは使い捨てのものばかりではなく、永続的に保存しておく必要があるものもあります。
日立製作所が京都大学と共同で開発した技術は、数億年に亘って保存できる記録媒体というものです。
媒体としては、石英ガラスを用い、特に高価な材料を使うわけではありません。
データの記録に用いるレーザーには、フェムト秒パルスレーザーを用います。
このレーザーは、光線の持続時間を数兆~数百兆分の1秒という、とてつもなく短い時間で制御できます。
これによって石英ガラスの内部に、屈折率の異なる微小領域が形成され、それがドットとして記録されます。︵写真中央︶
デジタル記録ですから、ドットが"1"、ドットが無い部分を"0"として記録、それを読み出します。
※画像は日立製作所のプレスリリースより
記録容量や速度を高めるために、さらにレーザーのパワーや形成するドットの間隔、深さ方向の間隔などを最適化した多層記録技術、光の振幅や位相を2次元的に変調できる空間位相変調器が開発されました。
現在はCDに相当する35MB/inch2を上回る40MB/inch2程度の記録密度は達成できているので、十分実用域に入っているといえましょう。
さらに記録密度向上の余地があるようです。
歴史上重要な文化遺産や公文書、個人が後世に残したいデータなどを、この技術によって後世に残すということが期待されます。
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