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2007年3月 3日
みなさんは、作成した文書とかデジタルカメラの写真、インターネットからダウンロードしたデータなどをどのような方法で保存していますか?
ほとんどの方は、パソコンの中のHDD(ハードディスク︶に貯めていって、適当な時に各種のリムーバル記憶装置︵大容量外部記憶装置︶にバックアップの形で保存するという方法を取られているのではないかと思います。
どのようなリムーバル記憶装置が用いられていて、その満足度はどれくらいかというデータがありますので、ご紹介します。
買ってよかったリムーバブル記憶装置は?
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このリストに出てきているリムーバル記憶装置は、現在使用されているものがほとんどですが、SuperDisk、PD、ORB、ZIP、Jazなどのように、あまり見ることのなくなったものもありますね。
さらに・・・
このリストに入っていなくても、かつては主流でしたが、現在はほとんど使われなくなった記憶装置もあります。
例えば、FDD︵フロッピーディスク︶。
FDDには、8インチ、5インチ、3.5インチ、2インチなどがあり、このうち、8インチ、5インチ、2インチのFDDなんでいうのは存在すらご存じない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
せっかくこのような記事を書くということで、ざっと部屋の棚をさらってみると、あるわあるわ・・・・・
きっと、倉庫とかを探せばもっといろいろあるでしょうけれど、まあごく一部だけ。
きっと皆様のお手元にも、今は使われていない様々なメディアがあることでしょう。
※そのあたりのことを、もっと知りたい方は コンピューター博物館 をご参照下さい。
さて、ここで、一つ問題が見えてきます。
かつて記憶装置の主流であった、そのような記憶媒体に記録保存されたデータを、読み出すことが困難になりつつあるということです。
例えば、8インチのFDDが倉庫から見つかったとします。
そこに記録されたデータを読み出すにはどのようにしたらいいでしょうか。
まず、記憶読み出し装置を見つけなければなりません。
そのためには、当時どのような機械でどのようなフォーマットで記録されたのかがわからないとなりません。
パソコンで記録されたものであればまだしも、ワープロ専用機で記録されたものであった場合には、それを読み出す当該のワープロが見つかったとしても、FDD自体が劣化してしまっていたり、機械自体が動かなかったりする可能性も大です。
オフコン、パソコン、ワープロ専用機など、様々な機種と共に、それこそ何種類あるかわからないほどのリムーバル記憶装置が発売されては消えていきました。
FDDが普及する前は、カセットデッキをとおして、カセットテープに記録をしていた時代もあります。
︵前段の写真に写っているカセットは、音楽データではなく、パソコンPC-8001のデータです︶
その中にはきっと貴重なデータもあることでしょう。
きちんとした形で後継の記憶装置に引き継いで保存管理がされていればいいのですが、そのようなことが為されておらず、埋もれたまま忘れ去られてしまうデータも多いことが推測されます。
リムーバル記憶装置は、時代と共に、大容量化が進んできました。
しかし、良い点ばかりではなく、欠点もあります。
それは主に
︵1︶メディアの耐久年数が長いとは限らず、しかも外見から劣化を見分けることができない 。
︵2︶リムーバル記憶装置の製品サイクルが短くなってきている。
ということです。
現代社会は情報化社会です。
私たちはかつてないほどの情報の洪水にさらされています。
リムーバル記憶装置の保存容量も飛躍的に増大し、1T︵テラ︶....1G︵ギガ)の1000倍......1M︵メガ︶の1000×1000倍.........1K(キロ︶の1000×1000×1000倍の記憶装置を日常的に使うようになりつつあります。
8インチFDDに入ったデータ約100万枚分のデータ量が一つのハードディスクに入ってしまうのです。
しかし、それを記録しているメディアは、いかにも心もとない。
図 主な記憶メディアの寿命
この図ように、皮肉にも最近のメディアほど媒体自体の寿命は短くなってしまっています。
さらに、紙、マイクロフィルム、カラーフィルムのようなアナログデータは、その冗長性によって、劣化が進んでも復元をすることが可能︵図の水色の部分︶なのですが、デジタルデータの場合は、劣化によって一気に読み出し不可能になってしまいます。
デジタルデータはデータそのものは劣化しないデータではありますが、それは、きちんとデータが引き継がれる環境になければ、まったく意味の無いものになるのです。
メディアの大容量化が進むに連れて、無埋もれたまま忘れ去られてしまうデータも当然膨大な量になることでしょう。
私たちは、紀元前の人類の営みを、遺跡から知る事ができます。
それは石や骨や粘土板に刻まれた文字かもしれないし、木や紙に書かれた筆文字かもしれない。
このようなアナログのデータは、それ自体のもつ冗長性という特徴から、相当劣化していて、例えばボロボロの木簡であっても、穴だらけの和紙であっても、脱落したデータの復元にはかなりの可能性が残されています。
しかし、現在用いられている記憶メディアはどうでしょうか。
土の中に埋もれていた8インチFDDが1000年に発掘されたとして、そのデータが読み出される可能性は、どんなに科学技術が発達していたとしても﹁ゼロ﹂に限りなく近いはずです。
︵それどころか、現在においてすら読み出すことは相当困難であるということは冒頭に述べたとおりです︶
私たちは、多くのデータを保有するようになりました。
文書、テキストデータに限らず、写真、ビデオ、その他文化的価値の高い遺産は膨大な量に及びます。
文化的価値はなくても、それぞれの個人にとってかけがえのないデータというものもあります。
ただ、情報の洪水に流されるまま、何も対策をせずにいた場合には、ふと気づいた時にはもう遅い。
私たちの周りには既に読み取る事の出来なくなた無価値の記憶メディアの残骸が倉庫に眠るだけ、未来の人類に残される遺産は、情報・価値の欠落したハードウエアだけになってしまうことでしょう。
そうならないように心がけるべきことは、各個人レベルでは
︵1︶本当に大切なデータは、保存性の高い中性紙などに適宜印刷して別途ファイリングする。
︵2︶情報の整理を定期的に行う。
︵3︶数種類の記憶装置でデータをバックアップする。
︵4︶リムーバル記憶装置のシェア・動向に着目し、時間に余裕を持たせた上で次世代のリムーバル記憶装置にデータを引き継ぐ。
というようなことが大切です。
さらに、政府や研究機関においては、多少記憶容量が少なくても、紙や粘土板に匹敵するような耐久性と冗長性をもつ記憶装置やメディアを開発して、私たちの知的活動の記録を後世に着実に受継ぐ手段を是非確立して欲しいものです。