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2011年8月 5日
教区︵近隣の曹洞宗グループ寺院21か寺︶で順番に厳修している大施食会︵おせがき︶も折り返し。
後半の日程に入っています。
大施食会では、本堂正面、本尊様に相対して棚を設けます。
これを施食棚︵せじきだな︶、あるいは施餓鬼棚︵せがきだな︶と呼びます。
檀信徒各家のご先祖様、初盆の諸精霊、有無三界の萬霊をお迎えして食事を施すために山海の美味しいものが並べられます。
餓鬼のために生米と刻んだ茄子、胡瓜を混ぜた﹁水のこ﹂をお供えしたりもします。
あまねく﹁み魂﹂に施しをする日本の良き習慣です。
また、お盆の時期には各家庭で仏壇の前に棚を設けます。
この棚を盆棚といい、意味合いは施食棚と同じであります。
施食棚や盆棚には﹁精霊棚﹂という共通の別名があります。
この﹁精霊棚﹂は、﹁しょうりょうだな﹂と呼ぶのが普通です。
しょう‐りょう︻精霊/聖霊︼1死者の霊魂。みたま。2﹁精霊祭り﹂の略。︽季 秋︾﹁―に戻り合せつ十年ぶり/丈草﹂
﹃大辞泉﹄︵小学館︶
けれども、意外に﹁しょうろうだな﹂と呼ぶ方も多いことに気がつきました。
霊は、呉音で﹁りょう﹂とは読みますが、﹁ろう﹂とは読みません。
、
れい︻霊︹靈︺︼ ﹇常用漢字﹈ ﹇音﹈レイ︵漢︶ リョウ︵リャウ︶︵呉︶ ﹇訓﹈たま たましい
1不思議な力や働きをもつ存在。万物に宿る精気。﹁山霊・神霊・精霊(せいれい)﹂
2肉体に宿ってその活動をつかさどる精神的実体。たましい。﹁霊肉・霊魂不滅/心霊・全身全霊﹂
3死者のたましい。﹁霊園・霊前・霊安室/慰霊・英霊・祖霊・亡霊・幽霊﹂
4不思議な力をもつ。人知で測り知れない。﹁霊感・霊気・霊験(れいげん)・霊獣・霊峰・霊妙・霊薬・霊長類﹂
︿リョウ﹀たましい。死者のたましい。﹁悪霊・生霊(いきりょう)・怨霊(おんりょう)・死霊・精霊(しょうりょう)﹂
︿たま︵だま︶﹀﹁霊屋(たまや)/言霊(ことだま)﹂
それにも関らず﹁しょうろうたな﹂という呼び方が増えた理由は、恐らく グレープのヒット曲﹃精霊流し﹄の影響ではないかと推測します。
長崎の精霊流しは﹁しょうろうながし﹂です。
その語源の由来を見ると、﹁ろう﹂と読むことの理由が見えてきます。
精霊船の由来
寛政時代の記録に、﹁昔は聖霊を流すに船をつくるということもなく﹂とあります。﹁精霊﹂は﹁聖霊﹂とも書いていたらしく、読み方も﹁しょうろう﹂ではなく昔風には﹁しょうりょう﹂だそうです。享保(1716-1735)のころ、盧草拙︵ろそうせつ︶をいう儒者が市民が精霊物を菰包みで流しているのを、これではあまりにも霊に対し失礼だということで藁で小船を作ってこれに乗せて流した、という記録があります。精霊船の由来は、様々な説があり、今日まだ定説はないようですが、長崎の場合は、港という地理的条件と国際貿易都市としての独自の環境性が影響して、今日の精霊船の原型が生み出されたと考えられます。
﹃長崎事典︵風俗文化編︶﹄︵長崎文献社︶
しょうろうの﹁ろう﹂は、盧草拙の﹁ろう﹂という説です。
﹁しょうろう﹂でも﹁しょうりょう﹂でも、供養のこころは同じ。
頭の片隅においておいても良い豆知識です。
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