« かわいいミカン |
最新記事
| 緊縮財政に呑まれる埋蔵文化財 »
2010年10月29日
資源が無いと言われる日本ですが、 資源大国 日本 で指摘したとおり、﹁淡水﹂という貴重な資源を豊富に有しているとともに、国土面積の66%を占める森林という資源も併せて有しています。
森が水源となって、豊かで美しい水が生み出されている訳ですから、水と森は密接な関係にあります。
この豊かな資源が、危機に瀕しています。
日本の国土は、3分の2が森林に覆われています。世界の中でもこれだけの森林に恵まれている国は数少ない素晴らしい国です。でも、実態は、開発や拡大造林のためにその多くが破壊され、自然の広葉樹林をスギ・ヒノキに植え替えた人工林が次々とでき、それが、林業の不況等で放置され、荒廃の一途をたどるという状況に陥っています。
木材需要は、安さと安定性という経済的判断のみにより、安い外材を大量に消費する構造となっているのです。
︵この構図は木材のみならず、食料品、衣料品など他の品目にも当てはまりますね︶
国内の林業の現状を見ると、国土面積の66%は森林ではありますが、1960年の木材輸入自由化以降、木材自給率は減少を続け、自由化以前 86.7%だった自給率は 2005年には20.0%と激減しています。国内の木材生産量は約3分の1にまで減少し、林業就業者数に至っては約6分の1に減少しています。
木材の資源は増えているのに、外材に押されてしまい国内産木材の需要が無くなっているのです。
戦後急速に増えた人工造林は、育てた木を伐採して、その後植樹し、再び育て利用する資源循環サイクルの中で生産される資源です。
この循環がうまく回っている限りは自然破壊を招くことはありません。
しかし、国内産木材需要が激減したことにより、伐採はおろか、下草刈りや間伐、枝打ちなどの維持管理すらままならない状況となっています。
森は荒れ、材木の商品価値も失われてしまい、さらに状況が悪化するという負のスパイラルが発生しています。
最近、クマ、イノシシ、シカなどが街に出没し、人を襲ったり畑を荒らすニュースが頻繁に流れています。
これも森林の荒廃に原因があることは明確でしょう。
さらに深刻な問題が発生しています。
中国やオーストラリアなどの外資が日本の森と水を大規模に買い漁っているのです。
日本の森と水、むさぼる外資 埼玉や山梨でも山林買収を打診
埼玉や山梨、長野、岡山県など全国各地の水源に近い山林について、中国などの外国資本が買収の打診をしてきていることが、東京財団がまとめた﹁グローバル化する国土資源︵土・緑・水︶と土地制度の盲点﹂と題した調査報告書で明らかになった。類似した事例は昨年、三重県大台町、長野県天竜村でも確認され、林野庁が調査に乗り出す事態にもなった。
報告書は外国資本進出の背景に、水資源などの資源獲得競争がグローバルに展開されている世界的潮流があると指摘。﹁日本の土地制度には、国土を守る意味で多くの問題がある﹂と警鐘を鳴らしている。
報告書によると、ほとんどが森林で占められる5ヘクタール以上の土地取引は、平成20年の統計で、10年前に比べ面積で倍以上、件数で1・5倍の増。また、具体的な事例を並べたうえで、山林買収は事実関係の把握が困難とも指摘した。
背景として、世界の水需給の逼迫︵ひつぱく︶が予測され、日本の﹁水﹂が狙われている可能性に言及。特に中国の水需要が2004年までの7年間で4倍以上伸びており、日本から水を調達するために買収に触手を伸ばしている可能性を指摘している。
また、今後、環境問題の取り組みが世界的に強化されるなかで、二酸化炭素︵CO2︶吸引源とされる森林やその生態系に新たな価値が付加されるとにらむ期待投資で森林売買が加速する可能性も指摘した。
報告書では、日本の土地制度が諸外国に比べて極めて強いとも指摘。いったん外国資本に所有されると、それを手放させることが難しいため、事前の実態把握と事前届け出など諸規制を提言している。
また、水源林以外にも、香港資本や豪資本の買収によって地価上昇率が3年連続全国一となった北海道ニセコ町の例や、廃屋化したホテルなど買収、更地化して分譲マンションを建設中の長野県白馬村での豪資本の動きを例示。公益や安全保障などの観点から、国土資源︵土地・森林・水︶を守るために十分な備えが諸外国並みに必要だと説いている。
︵産経新聞 2010.3.29︶
放置され荒廃の一途をたどる森林を買い取ってくれるということは、一見魅力的なことかもしれません。
しかし、水源の森を二束三文で外資に買い取られてしまうことは、後々どれほどの損害ももたらすのかをよく考えなければなりません。
気がついてみると、日本の資源である森も水も全て失っていたという状況だけは避けたいものです。
外国人土地法
第1条では、日本人・日本法人による土地の権利の享有を制限している国に属する外国人・外国法人に対しては、日本における土地の権利の享有について、その外国人・外国法人が属する国が制限している内容と同様の制限を政令によってかけることができると定めている。ただし、第1条に基づく政令はこれまで制定されたことはない。
また、第4条では、国防上必要な地区においては、政令によって外国人・外国法人の土地に関する権利の取得を禁止、または条件もしくは制限をつけることができると定めている。第4条に関しては1926年︵大正15年︶に﹁外国人土地法施行令﹂︵大正15年11月3日勅令第334号︶が定められていたが、太平洋戦争終戦後の1945年︵昭和20年︶、﹁司法省関係許可認可等戦時特例等廃止ノ件﹂︵昭和20年10月24日勅令第598号︶によって廃止されている。施行令では、国防上重要な地域における外国人による土地の取得に関して、陸軍大臣、海軍大臣の許可を得ることを義務づけていた。
終戦後は長い間使われることのなかった法律であるが、韓国資本による活発な対馬の土地買収などが明らかになり、2008年︵平成20年︶ごろから日本の領土を守るため行動する議員連盟などがこの法律に注目した。しかし、政府は2009年︵平成21年︶11月・2010年︵平成22年︶6月、この法律の活用は検討していないとの答弁書を決定している。
(ウィキペディア﹁外国人土地法﹂項︶
|
公益や安全保障などの観点から、国土資源︵土地・森林・水︶を守るために十分な備えが必要でありますが、国や地方公共団体においては、
・外資による土地の売買を規制する外国人土地法関連法、条例等の整備
・人工造林から広葉樹・照葉樹を中心とした天然林への転換
を早急に推進していただくことを求めます。
私たちにも出来ることはたくさんあると思います。
日常の暮らしに国産材の製品をどんどん取り入れて森を育てる﹁木づかい運動﹂もその一つでしょう。
寺院においては、﹁塔婆﹂を環境問題を考える教材とすることも出来ます。
塔婆を国産材、さらに言えば間伐材を用いることも一法です。
塔婆の原料としては、白木のお位牌やお棺、祭壇・・・・白い美しい木肌が当然という風潮があります。
そのために、白木のままでも木目が目立たず、においがあまり無い、墨乗りがよいモミの木が好まれてきました。
けれども、国産のモミがほとんど採れなくなり価格が高騰したため、国産のモミから、外国産のモミやトドマツにシフトしています。
結果として、塔婆として使われている木材の80%が輸入材となっています。
・価格が若干高い
・間伐材を用いる際には節模様、もしくは節穴が発生する
・杉材の場合は、赤い木肌模様が生じる
というデメリットもありますが、逆に、国産材を用いて、地産地消を行なっているという理由を明示してすれば檀家さんからの理解も得やすいでしょう。
一寺院のみの運動では難しくても、地域の寺院が連携することにより塔婆製材業者の協力も得られるはずです。
全国で7万もある寺院が行動することにより、日本の森を守る大きな力となることでしょう。
日本の資源を守り、環境問題を考える際に、塔婆はもってこいの教材なのです。
追記
政府の行政刷新会議︵議長・菅直人首相︶は2010年10月30日、特別会計︵特会︶を対象とした﹁事業仕分け第3弾﹂で、約1兆3千億円の借金を抱える国有林野事業特会︵農林水産省︶について、特会を一部廃止して一般会計に移し、負債部分は区分経理を維持すると判定しました。
仕分け人からは林野庁を解体すべきとの意見も多く出されています。
国有林野事業特会は、木材販売の収益などを財源に、国が保有する森林などの管理・経営や治山対策を行っている特別会計です。
この特会で管理する森林面積は758万haに及び、実に日本の国土面積の約2割を占めます。白神山地や屋久島などの世界遺産も含まれているのです。
大丈夫でしょうか・・・・・
■関連ブログ記事
卒塔婆を中心とした循環システム