« 梅雨明けの朝夜明け前 |
最新記事
| ショッキングピンクの夕焼け »
2010年7月19日
今年の梅雨の時期には全国各地で記録的な豪雨があり大きな被害がもたらされました。
特に岐阜県八百津町では大規模な土砂崩れにより激甚災害に相当する規模となっています。
被災者の皆様方には心よりお見舞い申し上げます。
時には災害を引き起こす豪雨ですが、各国の年間降雨量︵右図︶を見ても改めて日本は降雨の多い国であることを感じます。
世界を見渡してみても、降雨量がこれだけ多い国はまれであり、しかも︵コンクリートダムへの批判はあるものの︶全国各地に設置されているダムにより淡水の貯留、制御がきちんとなされている国はほとんどありません。
新鮮で綺麗な淡水を気兼ねなく使えるという﹁あたりまえ﹂の事は、世界の中では﹁あたりまえではない﹂ことなのです。
蛇口を捻ればそのまま安全に飲める水が流れてくる国は他にどれだけあるでしょうか。
さらに、お風呂の水、トイレの水、庭に撒く水、洗濯の水、車を洗う水・・・・・飲用できる水を私たち日本人は何のためらいも無く使っています。
資源が無いと言われる日本ですが、﹁淡水﹂という貴重な資源を豊富に有しているということを忘れてはなりません。
いや、日本は実は資源大国であるといっても過言ではないでしょう。
この、水を資源として輸出しようという試みがようやく具体化してきました。
処理下水、豪へ輸出実験 千葉・川崎から水不足の鉱山へ
千葉市、川崎市の下水を高度処理してオーストラリアに輸出する実験が今秋にも始まる。下水はほとんどが処理後、川や海に捨てられていた。これを豪州からの鉄鉱石を運び終えた空の大型船に積み込み、雨が少なく水不足に悩む豪州の鉱業会社に供給する。成功すれば、日本の﹁水資源﹂を輸出する初の事例になる。
︵朝日新聞 2010年7月6日︶
まだ実証実験段階であり、水道水ではなく、下水道の高度処理水を鉱山での粉塵対策のために撒く水としての輸出ではありますが、わざわざ水を輸送するために専用のタンカーを用意するのではなく、オーストラリアから鉄鉱石を輸入するためのタンカーに、日本で鉄鉱石を降ろした後、船体を安定させるために積み込む﹁海水のバラスト水﹂の代わりに﹁輸出用の淡水﹂を入れて運ぶというものです。
これまではバラスト水として海水を入れて、オーストラリアでそのバラスト水を棄てていました。
単に﹁おもり﹂としての役割の海水であり、日本の海水がオーストラリアの海域 で大量に排出されるために海の生態系に影響が出たり伝染病蔓延の源になるとことが懸念され、バラスト水管理条約によりバラスト水処理装置装置が義務付けられる動きとなっています。
この装置は1船あたり、5000万~1億円もかかるために、運輸会社の負担は大きく、普及が進むことは難しいでしょう。 ⇒ 世界の海を侵略する日本産ワカメ
話を戻します。
日本にやってくるタンカーにバラスト水として淡水を詰めて、復路で淡水を輸出するとどのようなメリットがあるかを考えます。
下水処理水を例にとると、日本全体で年間約140億トンに達します。
下水処理水の内、約2割は高度処理されていて、せせらぎ公園や工業用水、鉄道の洗車などに使われていますが、下水道の再利用率は僅か数パーセント。
ほとんどは川や海に放流されています。
例えば、市街地を流れる河川、神田川、隅田川、渋谷川、呑川・・・・これらの平常時の水量の何パーセントが下水処理水なのかを調べてみると興味深いことが判ります。
河川の水のかなりの割合を下水処理水が占めています。
このことを前提にして淡水をバラスト水として輸出するメリットを列記すると
︵1︶バラスト水放流による生態系への影響や伝染病の蔓延が無くなる
︵2︶タンカーに数千万円ものバラスト水処理装置装置を設置する必要が無くなる
︵3︶ほとんど利用されずに放流されている下水高度処理水を活用できる
︵4︶淡水を資源として輸出することにより、外貨を獲得できる
︵5︶淡水が不足している国へ淡水供給することにより世界的な﹁水の偏在﹂の解決の糸口となる
などなど。
もちろんさまざまな課題もあるでしょう。
しかし、日本が﹁資源輸出国﹂になる可能性を秘めた事業であることには変わりありません。
実験での相手国はオーストラリアですが、石油タンカーにまで範囲を広げれば相手国は主に中東諸国です。
淡水が原油よりも高価な国はいくらでもあります。
このような事業を推進し軌道に乗せるためにこそ国家予算を使っていただきたいものです。