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2010年9月28日
先日、日本に留学中のベトナム出身僧侶による講演会、交流会がありましたので参加してきました。
僭越ながら質疑応答の司会進行をさせていただきました。
国際化の中でのベトナム仏教 ―その社会的地位と役割―
講師 Thich Tam Tri師
主催 On timeベトナム実行委員会
ベトナムでは、長期に亘り中国支配による仏教受難の時代が続いていましたが、現在では広くベトナム国民に仏教の慈悲の精神が根付くようになりました。
貧困格差の広がりはあるものの、天災、氾濫 洪水の際の仏教界による慈善活動・救援活動は政府よりも早い。これは社会に深く関わるというベトナム仏教界の伝統によるものだと感じます。
ベトナムでは、特に若い人びとの深い信仰に基づく参拝が増えています。さらに、仏の教えを学ぶものも多く、寺院や講堂も増え、説法会も盛んに行われています。
ベトナム仏教界は世界との交流も始めています。
周辺諸国との宗教交流も盛んです。
このようなベトナム仏教の歩み、社会的地位と役割についてお話をいただきました。
講師のThich Tam Tri師は、農村部地域の村で9人兄弟の末娘として誕生、熱心な仏教徒のであった母の影響を受け、10歳で出家されます。
その後、ホーチミン市のに慶隆寺に沙弥として上山。修行を積みながら高校、大学へ通い、縁あって2001年から日本へ留学されています。
現在は大正大学大学院梵文学博士論文を準備中です。
日本語スピーチコンテスト読売新聞最優秀賞、日本語能力検定1級、茶道裏千家上級免状取得など語学・日本文化も学ばれ、在日ベトナム人の方々に学問・文化・宗教・指導とともに、日本ベトナム間の民間レベルの文化交流、寺子屋支援などの活動を展開中です。
講演の内容は、
・自身の出家から現在に至る生い立ち
・ベトナム仏教の歴史
・ベトナム仏教の現状
・国際交流の現状
などについて体系的に判りやすくお話しいただきました。
その後、質疑応答となりました。
ベトナムでは、寺院を建立し、寄進を行なうことが繁栄に繋がり来世での転生に結びつくという考えがあります。
そのため、高度経済成長に伴い寺院数は増大し、現在では寺院数2100か寺、僧侶︵大部分が尼僧︶は1000人となっています。
ということは、兼務寺院が多いということで、僧侶の多くは幾つかの寺院を掛け持っています。
また、寺院側も積極的に社会に還元する土壌が根付いているために、僧侶を中心とした在家集団の教化、弘法団体が盛んな活動を行なっています。
ベトナム仏教の特徴のもう一つは、大部分が大乗仏教系でありますが、周派の区別が無く、それぞれの僧侶は浄土、禅、密教系の宗学を修めます。
インドから直接伝わった上座仏教系︵約1割ほど)と中国経由の大乗仏教系︵約8割ほど︶がきちんと住み分け、協力体制もきちんと行なわれていて、例えばウェーサーカ祭︵Vesak)も上座・大乗合同で行なわれ、双方の経典が交互に読経されます。
日本では、仏誕・成道・涅槃の日が祝日ではありませんし、各宗派本山合同により国民の多くが参加して三仏会法要を行なうなどという状況はとても考えられませんね。あるちょっと意味残念な現状です。
ベトナムでの葬儀事情についても伺ってみましたが、葬儀から3回忌までは家族・親族により懇ろに行ない、3回忌を過ぎると、毎年の年忌は故人個別ではなく、寺院での合同法要形式で、読み上げによる法要形式となるそうです。
付け加えて、日本のように○○回忌もきちんと個別法要で行なうということは、とても丁寧で素晴らしいことだと話されていました。
ベトナムのことばに﹁破ってない葉は破った葉を包む﹂というものがあるそうです。
破ってない葉の如くベトナム社会を包み込む存在の仏教が社会の中で深く浸透している姿が実感できたアットホームな講演会でした。