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2010年5月27日
海外神社︵跡地︶に関するデータベース
戦前、日本帝国の﹁勢力圏﹂の拡大に伴い、日本国および日本人によってアジア太平洋地域に多くの海外神社が建てられました。
その海外神社及びその跡地に関する、当時の写真・現況写真・図面・地図など非文字資料を中心に収録・整理したサイトがあります。
海外神社︵跡地︶に関するデータベース︵神奈川大学非文字資料研究センター︶
このデータベースは、神奈川大学21世紀COEプログラム﹁人類文化研究のための非文字資料の体系化﹂の中の﹁海外神社跡地調査﹂組の成果として纏められました。
戦前、日本帝国の﹁勢力圏﹂の拡大に伴い、日本国及び日本人が、アジア太平洋地域に創建した﹁海外神社﹂は、史料上確認されているものだけでも1,600余社にのぼるとされています。
これらの海外神社は日本の敗戦とともに、機能は停止し破壊されたものも多く、海外神社跡地が戦後60余年経過する中でどのような形で存在しているのか、海外神社跡地そのものを非文字資料として情報収集、体系的に纏められたものです。
テニアン島のNKK神社︵南興神社︶についても詳しく調査結果が掲載されています。
実に価値のあるデータベースです。
さて、曹洞宗では、平成4年に曹洞宗宗宗務庁より回収図書指定を受けた﹃曹洞宗海外開教伝道史﹄︵昭和55年発行︶という本がありました。
本の中に差別的記述が認められ、また、明治から太平洋戦争終結までの東アジアを中心にした国際布教の中で人権を侵害して来たことへの謝罪の意を表するために回収指定されたものです。
回収に至る経緯については﹃曹洞宗海外開教伝道史回収について﹄?宗門の戦争責任・戦後責任を考える?曹洞宗人権擁護推進本部 編に詳述されています。
従って、現状では曹洞宗の国際布教史を体系的に纏めた書物は現在皆無といっても良い状況です。
曹洞宗のそれぞれの時代における国際布教がどのように展開され、寺院が分布していたのかということだけでも、客観的に史実に基づいた形で体系化して纏める作業はいずれ必要になると考えます。
国際布教史の中で人権を侵害して来たという事実があるとすれば、客観的史実に基づいた資料を元に真摯な態度で検証していく必要があります。
﹃曹洞宗海外開教伝道史﹄について﹁触れてはならないこと﹂といった考えでは、戦前の国際布教そのものを﹁無かったもの﹂とするのではないか、といわれても反論の余地がありません。
また、北アメリカ、南アメリカ、ヨーロッパ各地に曹洞宗の教えが浸透していく中で、これまでにどのように国際布教が展開されていたかという史実は今後の国際布教の方向性への示唆としても重要な事項をはらんでいます。
新しい視点からの曹洞宗国際布教史が再編されるよう望みますし、再編に向けての働きかけを進めて行きたいと考えています。
その意味で、冒頭に紹介した海外神社︵跡地︶に関するデータベースの編集方針は大変参考になるものです。