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2009年3月12日
母ザルがしつけ!? 子供の前だと大げさに﹁歯磨き行動﹂
タイに生息し、人の髪の毛を使って歯に詰まった食べ物のかすを取り除く﹁歯磨き行動﹂をする野生のカニクイザルの中に、子ザルが見ていると特に大げさに歯磨き行動を行う母ザルがいることを、京都大霊長類研究所の正高信男教授︵霊長類行動学︶の研究チームが突き止めた。子供に関心を向けさせ、歯磨きを教える﹁しつけ﹂とも考えられるといい、こうした行動が人間以外で確認されたのは初めて。研究成果が11日発行の米科学誌﹁プロスワン﹂に掲載された。
歯磨き行動をするのは、バンコクの北東約140キロのロブリーに生息するカニクイザル。約250頭の群れの中で約100頭が、デンタルフロス︵歯間磨き︶のようにヒトの髪の毛を使って歯の間に詰まった食べ物かすを取り除く。
カニクイザルは東南アジアに生息しているが、歯磨き行動が確認されているのはロブリーの一群だけ。10年ほど前から見られるようになったという。サルは街中で暮らしており、人と接する中で学んだ行動と考えられている。
研究チームは、1歳の子を持つ7頭のメスザルに注目。カツラの毛を与えて、周囲に子供がいる場合といない場合についてビデオ撮影して詳しく分析した。その結果、子供が見ている場合は、髪の毛を両手に取って口に入れた後、歯を上下させる一連の動作︵スナッピング︶を頻繁に繰り返すことが判明。回数は見ていない場合の約2倍で、動作自体が大げさになっているという。母ザルは自分の行動を変えることで、子ザルが歯磨きを習得しやすいようにしているとみられる。
正高教授は﹁人間以外の動物は、教育をしないというのが常識だが、今回の実験で、教えることの芽生えがサルにもみられたと考えることができる。教育の起源を解明することにもつながる﹂としている。
︵産経新聞2009年3月11日・下線はkameno附記)
⇒動画がこちらに有ります(FNN)
母から子への﹁歯磨き行動﹂の伝達が確認されたそうです。
野生の動物は本能的に﹁生きる智恵﹂を持っているといわれますが、﹁教育﹂の形で行っている姿を確認されたのは初めてとのことです。
同じような例では小鴨に泳ぎ方を教える親鳥ということが頭に思い浮かびますが、そのように本能的に備わっている行動とは、記事中下線の﹁街中で暮らしており、人と接する中で獲得し学んだ行動﹂というあたりで一線を画しています。
﹁智恵の伝達﹂という点から見れば、それが、これまでは人類の人類たる所以であったわけです。
文字がまだ無かった時代でも、カニクイザルのように身ぶり手振りで伝えられた﹁智慧﹂はたくさんあったはずです。このように、世界中、人類の歴史に現れるいかなる社会でも次世代に伝える無形の智恵が見られます。
﹁知識の伝達﹂は容易いが、﹁智慧の伝達﹂は難しい
バンコクの寺院で生活するカニクイザルは、この困難なことをやってのけているのでした。
ちなみに、日本人の歯磨き習慣は曹洞宗の開祖道元禅師の時代にまで遡ります。
⇒道元禅師と歯磨き