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2008年10月 4日
電車の吊り広告に次のようなものがありました。
大手学習塾による、中学入試問題の紹介です。
校外にある学校の施設にも池をつくることにしました。
施設には、下の図のような林と草地があります。
さまざまな生物がすむ池にするためには、池をどこにつくるとよいですか?
下の図のA?Eの中から、もっともふさわしい場所を1つ選び、記号で答えなさい。
なお、図の範囲外からの影響は考えなくてもよいものとします。
単に正解するだけではなく、その答えをどのように導き出したか、その過程が大事な問題の典型だと思います。
⇒解答と解説はこちら
実りの秋、境内にはたくさんの種類のどんぐりが落ちており、こどもたちが遊びに出るたびにたくさん集めてきます。
日本には、亜種を含め、約20種類のどんぐりの木があるそうです。
どんぐりは、縄文時代から食料として重要な役割を果たしてきました。
どんぐりの木の林には、多種多様の生き物が生息しています。
それはなぜなのか。冒頭の問題の要となる部分です。
また、このような林と生物との関係が、私たち人間が適切に手を加えることにより維持され育まれてきたということも重要なことであります。
さらに、水辺の空間を加えることにより、生物たちにとっての生息環境は飛躍的に高まります。
その典型的な例としてビオトープが挙げられます。
寺院におけるビオトープの実践をされている老師は次のように語られています。
生物界を生態系から見ると、植物は光合成によって無機物から有機物をつくるため、食物連鎖の上で“生産者”と呼ばれている。
バッタやカブトムシなど植物食の動物、カマキリやトンボなど植物食の動物を食べる動物、それらを食す小鳥、さらに小鳥を食すワシやフクロウなど、動物は“消費者”と呼ばれている。すべての死骸や排泄物などの有機物を分解し、無機物にして土に帰すミミズや微生物などの土中生物は“分解者”と呼ばれている。
これらの生物は有機的なつながりをもって、支えあって生きている。
人間も生物の一員であり、“高次消費者”に相当する。そして、たとえ“万物の霊長!”であるとしても、根源的には、食物連鎖ピラミッドの底辺に位置する土中の目に見えない微生物そして土に支えられている。
相田みつをは﹃花を支える枝 枝を支える幹を支える根 根は見えねんだなあ﹄の詩を遺している。本当に大事なもの、支えてくれるもの、そして真実というものは案外と目に見えない︵気付かない︶ものである。
近代文明を享受した結果、衰えてしまった五感をとぎすまして、自己は自然によって生かされ支えられていることに気付き感謝する場、そして自然と一体︵天人合一︶になる場、それが寺域の雑木林であり、緑豊かな境内である。
﹃寂しい時は森へおいで 涙は草木を潤すでしょう 草木はあなたを癒すでしょう。﹄﹃嬉しい時も森へおいで おかげで草木も生き生きするでしょう﹄
<中略>
寺院は環境︵自然︶に対して負荷︵ストレス︶を与える存在であってはならない。
都市域の寺院は、さいわい都心にも点在している。公園はじめ各寺院・神社︵鎮守の森︶や学校そして檀家の方々の宅地の一部などをビオトープ化することにより、ビオトープは多くの点として存在する。それぞれの点は街路樹・生垣︵ブロック塀は地震時危険︶や草生化した川の両岸が緑の回廊︵コリドー︶となって野生生物は行き来し、行動範囲が広がる。最終的に面となって、理想の目標である﹁環境共生都市﹂︵まち全体がエコミュージアム︶が実現する。
﹃寺院運営ガイド﹄ ︵SOTO禅インタナショナル・2008年発行︶﹁寺院におけるビオトープの実践﹂より引用
街の中で寺院の緑地が果たす役割はとても大きいものがあります。
境内の林を、さらに多種多様な生物が生息する環境にするためにはどのような工夫が必要なのか、その実践を手順を追って解説していただきました。
ビオトープだけではなく、多くの実践事例が詰まった﹃寺院運営ガイド﹄は、SOTO禅インターナショナルで頒布いたしております。併せてご紹介いたします。
寺院はもとより、神社︵鎮守の森︶、公園、学校、各家庭の宅地などが結びつくことは、多種多様な生物を育む環境共生都市実現に必要不可欠なことでもあります。
冒頭の問題は小学生を対象とした中学入試の問題ですが、大人を対象とした問題としても通用します。
奥が深い良い問題だと感じます。
■関連リンク
ドングリ図鑑 エコロジカルウェッブ
森の国への通過 どんぐり銀行