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2008年9月19日
﹁防災対策で言えば、巨大地震を想定した。封じ込め策は、多量の薬を使う割に効率も悪いが、被害を最小限にするためにやるしかない﹂
今月18日︵昨日︶、政府関係省庁対策会議による新型インフルエンザの対策が発表されました。
今朝の新聞報道では、新型インフルエンザ対策として、プレパンデミック︵大流行前︶ワクチンを優先的に接種させる職種が公表されています。
⇒本文末に記載
新型インフルエンザについては、世界各国において対策が検討され、封じ込めや、発生後の行動指針が策定されています。
アメリカでは、鳥インフルエンザの発生以降、抗ウイルス薬による治療や学校の臨時休校などを盛り込んだ数千ページにも及ぶ詳細な行動指針が作られています。
オーストラリアでは、封じ込めに重点を置き、予防投薬により感染拡大を最小限に抑え込むなどの指針がつくられています。
日本は、例にもれず、他の先進国に比べ対策が大幅に遅れています。
新型インフルエンザの流行に備え、具体的な対策をとる必要が政府にも市町村にも、関連業種にも必要となるのです。
結論として、宗門や、各寺院レベルでも新型インフルエンザの行動指針が必要になるのではないかということが、今日の記事の結論です。
以下、文を綴っていきます。
冒頭にご紹介した言葉は、新型インフルエンザ早期対応指針立案の一人、国立感染症研究所長の言葉です。
これまで、政府により検討されてきた指針は次の通りです。
新型インフルエンザ発生後、72時間以内にとる早期対応策
︿1﹀家庭・施設内予防投薬作戦
・第1号患者の家族、学校、職場などに所属する全員に抗ウイルス薬投与
︿2﹀接触者予防投薬作戦
・患者の家族、患者と対面し会話した人など、近い距離で接触した人に投薬
︿3﹀地域封じ込め作戦
・患者が移動した地域の全住民に投薬
・交通の遮断などによる地域封鎖、集会の自粛、学校の臨時休校
・封鎖地域内の住民生活の支援
概要としては、新型インフルエンザが発生してから72時間以内に、国と都道府県が連携しなが対策を講じるというものです。
特に、患者が移動した範囲を対象とした地域封じ込め作戦は、相当な影響力を持っています。
交通遮断を市町村単位で行い、当該市町村全住民に抗ウイルス薬を10日間投与し続けます。
学校は休校となり、数ヶ月は通学できないでしょう。
当然に、封鎖地域内での葬儀や結婚式などは行えないでしょうね。
昨日発表された試案は次のようなものです。
新聞報道を引用します。
100職種にワクチン優先接種 新型インフルで政府試案
新型インフルエンザの発生に備え、政府は18日、プレパンデミック︵大流行前︶ワクチンを優先的に接種させる職種の具体名を初めて公表した。医療従事者のほか、警察や自衛隊、電気やガスなど約100業・職種を提示。三つの類型︵カテゴリー︶で順位づけた。
発生時に、感染拡大を防ぎ、社会基盤を最低限維持する目的で、政府試案を公表した。対象者は推計1千万?1500万人で、本人の同意を得て接種する。現在、政府が備蓄する鳥インフル由来の同ワクチンは2千万人分で、1千万人分追加の方針がある。意見募集を経て年度内にも正式決定する。
最も優先的に接種するカテゴリー1は、新型インフル患者に接触・治療する職種。今年の試験的な接種を踏まえて来年度にも接種を始め、効果が継続する期間をみながら定期的な接種を検討する。同2は国民の生命や安全、安心にかかわる、同3は国民の最低限の生活の維持にかかわる職種。同2と3は、試験接種の結果を踏まえ、発生前の接種を検討する。発生後は、同1?3の順番で接種する。
発生後には、新型インフル患者から採取したウイルス株でつくる、効き目が高いとみられる﹁パンデミックワクチン﹂が製造される。このワクチン接種については、優先職種の人たちの効果継続期間をみながら、小児や高齢者、病気の人、成人・若者らをどの順番で接種するか今後検討する。
◇
■新型インフルエンザのワクチン接種を優先する業種
▼カテゴリー1=被害拡大防止にかかわる
医療従事者︵患者に接触・治療する可能性が高い人︶、保健所職員︵ワクチン接種などに従事する人︶、救急・消防職員、在外公館職員、税関・入国管理局、検疫所職員、警察職員︵対策にあたる可能性が高い人︶、停留・宿泊施設従事者、自衛隊員︵同︶、海上保安庁職員︵同︶、航空事業者︵国際線︶、空港管理者︵検疫集約空港︶、水運業者︵外航海運関係︶
▼カテゴリー2=生命や健康、安全にかかわる
首相、知事、市町村長など国・地方自治体の意思決定者、医療従事者︵カテゴリー1以外︶、福祉・介護従事者、医薬品・医療機器関連業者、消防職員︵対策にあたる人以外︶、警察職員︵同︶、自衛隊員︵同︶、海上保安庁職員︵同︶、海事関係職員、港湾管理者︵検疫集約港︶、国会議員、地方議会議員、報道機関職員、通信事業者、矯正職員、更生保護官署職員、法曹関係者
▼カテゴリー3=最低限の生活維持にかかわる
電気・原子力・水道・ガス・石油などの事業者、航空事業者︵国内線︶、港湾管理者︵検疫集約港以外︶、空港管理者︵同︶、水運業者︵内航海運関係︶、港湾運送業など、鉄道事業者、道路旅客・貨物運送業者、道路管理者、倉庫業者、食料品︵コメ・パン・缶詰・レトルト・冷凍食品など︶製造業者、生活必需品・衛生用品︵洗剤、トイレットペーパーなど︶関連業者、食料生活必需品販売・流通関係者、金融事業者、情報システム関連事業者、郵便事業者、国家公務員・地方公務員︵最低限の生活維持に携わる人︶、火葬・埋葬管理業者、廃棄物処理業者
(2008年9月18日朝日新聞︶
下線は、kamenoが付記しました。
カテゴリー3の﹁埋葬管理業者﹂あたりに寺院・僧侶が含まれるかどうかという所ですが、個人的意見としては、法事や葬儀などで多くの方と接触する可能性のある僧侶は当然、ここに含まれて然るべきです︵この期待はみごとに裏切られました=追記参照︶し、宗門はもちろん、寺院単位で新型インフルエンザに対する対策、行動指針を策定する必要があるでしょう。
新型インフルエンザの流行のことを﹁パンデミック﹂といいます。
この際に、寺院は法事・葬儀を行うことができるのかということを考えると、通常の形式で行うことはまず困難であると考えられます。
﹁パンデミック﹂の際の、法事、葬儀など檀務の代替に関する融通のしくみ、法務を行う人材確保など、予め検討すべき︵発生してからでは対策が遅すぎる︶課題は多いはずです。
専門家による指摘の中には、﹁パンデミック﹂により全世界で最大7400万人、日本国内では最悪64万人が感染死するという推計もあります。
国にはプレパンデミック︵大流行前︶ワクチンの有効性、安全性を充分に検討していただき、対策行動指針を策定していただきたいものです。
併せて、宗門にも、新型インフルエンザに対する具体的なアナウンスを期待します。
私たち寺院、僧侶も常に情報収集につとめ、具体的な行動指針をつくり、それを実践していくことが大切でしょう。
今回の報道があったあと、真っ先に情報を提供くださったSさんにこころより感謝申しあげます。
︻追記︼
この記事を書いた夕方、﹁新型インフルエンザのワクチン接種を優先する業種﹂の策定に携わった厚生省健康局結核感染症課の担当官の方に直接お話を伺うことが出来ました。
要旨は次の通りです。
・火葬、埋葬管理業者とは、公務員での従事者を想定
・従って、葬祭業者、僧侶などはこれに含まれない
・そもそも人の集まる学校、幼稚園、結婚式場、葬儀などは対象としていない
・パンデミックの際には、人の集まる行事の自粛呼びかけを行うが、強制力は無い
・市町村単位の封鎖もまったく考えていない
ということです。
すなわち、政府の考えでは、僧侶や葬祭業者はワクチンの優先接種は考えておらず、葬儀を行うということもそれぞれの裁量に任されているということだそうです。
それでは、感染拡大を防げないのではないでしょうか?という問いには、﹁憲法で自由が保障されていますからね?﹂という回答でした。
かなり拍子抜けしました。
これでいいのでしょうか。
まあ、国に頼ることができないからこそ、余計に宗門・寺院レベルでの行動指針を明確化しておくことが求められますね。
■関連リンク
新型インフルエンザ対策関連情報︵厚生労働省︶
インフルエンザ・パンデミック︵国立感染症研究所感染症情報センター︶
新型インフルエンザ対策のページ︵全国保健所長会︶