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2008年1月19日
有力6社で再生紙偽装 印刷用紙など幅広く
製紙メーカーが年賀はがきやコピー用紙の古紙配合率を偽装していた問題に関連し、三菱製紙、大王製紙、北越製紙の三社は十八日午後、社長らが相次いで記者会見し、はがきやコピー用紙など幅広い品目で実際の古紙配合率が公表値を下回っていたとする社内調査結果を発表し、謝罪した。また、中越パルプ工業も同日夜、印刷用紙や包装紙などで偽装を行っていたことを認めた。これにより既に偽装を公表していた日本製紙グループ本社、王子製紙を合わせ有力六社がそろって偽装を続けてきたことが明確になった。
日本製紙の社長は辞任の意向を示しているが、日本製紙以外で会見した四社の社長は辞任を否定した。
会見で各社は“業界ぐるみ”の様相を呈してきた再生紙の偽装について、激しい受注競争を背景に、営業を優先するあまり古紙利用と事実の公表をおろそかにした業界の体質などが影響したことを説明した。
偽装していた六社の紙全体の生産量のシェアは、合計で約80%︵二〇〇六年︶に達する。
しかし、偽装に手を染めた各社との取引を見合わせる動きも広がっており、今後、消費の現場に混乱を及ぼす恐れがある。
調査結果によると、三菱製紙は調査した二十品目中十一品目で偽装があった。環境に配慮した製品の購入を国などに義務づけたグリーン購入法に基づき、納入する全製品が公表値を下回っていた。公称100%の古紙配合率のコピー用紙︵月産六百九十二トン︶が実際は50%だった。
大王製紙も古紙配合率100%としていたコピー用紙の実際の配合率は41%だった。北越製紙はグリーン購入法対象の印刷用紙で公称配合率70%に対して実際は19%だった。
︵東京新聞2008年1月19日 朝刊︶
日本製紙、古紙の配合率を契約より低く・年賀再生紙はがき
日本製紙は9日、古紙を使った﹁年賀再生紙はがき﹂用紙の古紙配合率が契約で取り決めた水準を大きく下回っていたと公表した。契約では古紙を40%使うとしていたが、実際は﹁1―5%程度﹂︵同社︶にとどめていたという。日本製紙は40%の古紙配合率では十分な品質を確保できないと判断。配合率を引き下げていた。(日経新聞︶
昨年、再生紙・非木材紙は本当に環境にやさしいか という記事の中で、グリーン購入法と再生紙の問題について書きました。
去年一年は﹁偽﹂という一字に象徴された年だったようですが、年を越えてなおこのような問題が明るみになるということが残念です。
まだまだ発覚していない﹁偽﹂はたくさんあるのでしょう。
さて、昨年の記事での結論のうち、再生紙については、古紙100%使用の再生紙についての疑問を提示しました。
その際の結論の一つが
結論︵2︶
紙の原料のうち、木材パルプについては、
環境的持続可能性︵生物多様性の維持、生態的プロセスや生態系の保全︶、
社会的持続可能性︵森林に依存している人間社会の維持︶、
経済的持続可能性︵継続的な木材生産と健全な森林経営︶
などを念頭において生産されることが必要であり、また、紙の使用目的に応じて、それぞれの古紙の配合率を考え、その中で全体として古紙配合率を高める︵決して100%ではない︶ことこそが、環境にやさしい紙であると言うことができるでしょう。
というものでした。
そもそも、古紙100%配合の再生紙そのものが環境に優しいわけではないし、しかも技術的にほぼ不可能であるというのに、グリーン購入法で古紙100%の再生紙購入を義務付けるという馬鹿げた構図が引き起こした偽装体質であると言わざるを得ません。
まずは日本製紙のプレスリリースを見てみましょう。
News Release
日本製紙 2008 年1月16日
弊社製品に関する社内調査結果について
このたび、弊社が再生紙として製造している製品における古紙パルプ配合率について、全製品を対象にして調査した結果、決められた配合率を下回っている製品が葉書以外にも判明しました。その内容は別紙のとおりであり、それらの中には、グリーン購入法の基準を満たしていない製品もあります。弊社といたしましては、環境問題が国民の主要な関心事となっている今日、国民の皆様の信頼を裏切ってしまった事実を深刻に受け止め、ここに深くお詫び申し上げます。
このような事態を引き起こしました背景には、古紙パルプの配合率を上げることにより、再生紙の使途に求められる品質を実現することが、現状の弊社の技術レベルでは困難であるという問題があります。
当初から出来ないことがわかっていた訳です。
これまで弊社は、古紙は貴重な資源であるとの認識に立ち、古紙活用の最大化を技術的な課題として努力してまいりました。しかしながら、特定の古紙パルプ配合製品に求められる品質上の問題への対応に苦慮し、その結果、古紙パルプ配合率を下げることによって求められる品質の実現を優先させてしまいました。
環境意識の高まりにより社会からの要求が技術的に困難なレベルのものを要求されるようになり、品質を下げるよりは偽装を選んだということです。
しかしながら、このような論理がわかりません。
まったく釈明にもなりません。
古紙100%の再生紙を作ってみて、コストはこれだけ高くなります、品質はこれだけ落ちますということを素直に提示するべきでした。
それにより、グリーン購入法がいかに馬鹿げた現実離れした法律かがわかりますから。
こうした判断と行為は、これまで日本政府や組織団体、そして多くの国民の皆様が意識を持って取り組んでこられた環境保全に対する活動に水を差すものであり、たとえ﹁環境偽装﹂と言われたとしてもこれを否定できるものではありません。どんな理由があるにせよ決して許されない行為であります。
決して許されないでしょう。
結果として多くの皆様の善意を踏みにじることになってしまいましたことに対し深く反省するとともに、このような結果になってしまいましたことを重ねてお詫び申し上げます。経営責任につきましても、この事態を重く受け止め、原因の究明、責任の所在等、全容が明らかになった段階で、あらためて発表させていただきます。
今後の弊社の取り組みといたしましては、二度とこのようなことが起きないよう、再発防止体制とコンプライアンスの徹底を、外部の識者を交え実現させてまいります。また、古紙活用の最大化を目指し技術開発に取り組んでいくことはもちろんのこと、バランスを考えて古紙を上手に無理なくたくさん使う取り組みを進めてまいります。紙の用途に応じて、求められる白さや保存性を考慮した上で最適な古紙パルプの配合に努め、全体として古紙利用量を増やしていきたいと考えております。
このような弊社の取り組みを、お取引先及びお客様をはじめ、関係者の皆様にご理解いただけるよう、今後あらためて努力してまいります。
古紙100%の再生紙は、今後、ほぼ生産されなくなるでしょう。
そうなった場合、グリーン購入法はどうなるのでしょうか。
そもそも、再生紙の定義って何ですか?
日本製紙の実態調査の結果も余りにも酷いです。
年賀葉書は、殆んどが再生紙はがきです。
その古紙パルプ配合率の仕様基準は、化学パルプ60%、古紙パルプ40%とのことですが、実際の古紙パルプ配合率の実績は、今年平成成20年用の年賀葉書きで実に1%
。これでは古紙パルプの配合を行っていませんでしたと言っているのとほぼ同じです。
なお、年賀葉書は平成8年用から再生紙化されていますが、それぞれ5%以下︵1%?5%︶とのことです。
■日本製紙の言い訳
葉書用紙が再生紙化された平成4年当時、工場内発生損紙も古紙として認識し、古紙パルプ6%と合わせた30%でテスト生産した結果、近い将来の技術革新で配合率40%の実現が可能と営業判断し受注を開始しました。その後、工場内発生損紙が古紙パルプとして認められないことがわかり、本来は古紙パルプを増配すべきところ、古紙由来のチリ、墨玉等の夾雑物が多くなるため品質を確保することができずに、古紙パルプ配合率が低いまま生産しておりました。それ以降、現在に至るまで配合率を上げるべく操業努力してまいりましたが、入荷する古紙の品質低下、異物混入に対する品質管理要望が高まり、配合率は上記の通り乖離しておりました。
それでは、コピー用紙などはどうでしょう
年賀葉書以外の製品について
︵1︶古紙パルプ配合率の基準と実績
現在生産を行なっている、古紙パルプ配合率の基準が設定されている製品のうち、コピー用紙などの製品に、残念ながら、基準と実績との間に乖離が確認されました。
再生紙として生産している銘柄 (生産量‥H19年10月?12月︶
(1)グリーン購入法対象品
情報用紙 コピー用紙 公称100% ⇒ 実際の配合率 59% 月生産量 6,540t
(2)グリーン購入法適用以外の再生紙
?情報用紙 コピー用紙 公称 100%・70% ⇒ 実際の配合率 11% 月生産量4,415t
グリーン購入法を対象とする製品で基準に満たない製品があります。これらの製品につきましては、当社ブランド品については、直ちに生産を中止することとします。
また、お客様のOEMブランド品、および特定のビジネスユーザー向けの製品(特抄品)で、当初の交渉において取り決めた古紙パルプ配合率から乖離が出ているものがあります。それぞれのお客様に至急ご相談申し上げ、誠意ある対応をしてまいります。
また、付表にある、過去に生産した在庫品につきましても、お客様に至急ご相談申し上げ、誠意ある対応をしてまいります。
誠意ある対応として、古紙100%の再生紙と交換する・・という対応は考えられないですね。
生産できないわけですから。
とすると、品質の良いバージンパルプ100%の紙と交換するとか︵皮肉︶・・・・
■日本製紙の言い訳
?印刷用紙
製品の発売当初(平成11年ごろ)は、配合基準に合わせて古紙パルプを配合しておりましたが、古紙の品質低下により、製品品質として求められる夾雑物の基準を維持することができなくなる場合もありました。これまで古紙処理技術の改善等に努めてまいりましたが、古紙パルプの配合が基準未達となるケースが発生しました。
?情報用紙、包装紙他
平成2年ごろより、リサイクル推進の観点から、コピー用紙の再生紙化を進めておりましたが、この時点では、古紙パルプ配合率の増加を努力目標としてとらえておりました。しかしながら、平成13年にグリーン購入法が施行された以降も依然として努力目標として考えており、同法の趣旨に関する理解が不足しておりました。
一方で、当初より求められる品質レベルが高かったため、古紙パルプ配合率を上げるのが容易ではないという事情がありました。その間にも、古紙パルプ配合率を増加させる努力は継続してまいりましたが、それでも、近年、消費者の皆様が保有している昨今の多種多様な出力端末機器や、その用途に対しさらに高い品質レベルが求められるようになり、加えて入荷する古紙の品質が低下するなどといった問題を抱えるようになったため、結果として古紙パルプ配合率を上げることができませんでした。その他の紙についても、同様な理由です。
3.再発防止策と今後の対応
年賀葉書だけでなく、それ以外の製品における古紙パルプ配合率が、決められた基準と乖離していた事実は、多くの国民の皆様の信頼を踏みにじる行為であったと深く反省しております。乖離を生じている再生紙製品の生産につきましては、弊社ブランドの古紙パルプ配合率の乖離品については、弊社として生産および販売の中止を指示いたしました。また、当該製品に関する一切の受注を中止いたしました。今後、乖離品の製造はいたしません。
古紙100%の再生紙はもう私たちの目にすることができない幻の紙になってしまったようです。
せっかくの機会ですから、新しい古紙100%マークを作ってみました。
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