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2007年11月19日
全日本仏教徒会議神奈川大会が横浜みなとみらいを会場に開催されました。
大会テーマは﹁地域の縁、アジアの縁 共生をめざして﹂です。
一日目の今日は、基調講演と分科会が行われました。
朝から受付の準備をすすめていきます。
■基調講演
駒澤大学前総長 奈良康明先生
講題﹁草の根的対話の提唱﹂
■加盟団体代表者会議及び分科会
加盟団体代表者会議
第一分科会﹁アジアの平和と仏教徒の役割﹂
第二分科会﹁少子高齢化社会と寺院のあり方﹂
第三分科会﹁現代社会における仏教葬儀のあり方﹂
第四分科会﹁生命倫理と仏教徒に問われること﹂
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スタッフとして動いていましたので、講演のほとんどを聴くことができませんでしたが、時間をみて第四分科会のみ聴講してきました。
その自分用メモを記録としてまとめてみました。
第四分科会﹁生命倫理と仏教徒に問われること﹂
提唱者
田中雅博医師︵大正大学講師・西明寺住職︶
座長
三宅守常先生︵日本大学医学部准教授︶
パネリスト
柴田寛彦医師︵医学博士・本澄寺住職︶
佐藤雅彦先生︵大正大学講師・浄心寺住職︶
中野東禅先生︵武蔵野大学講師︶
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提言者︵田中師︶
1 生殖補助医療︵受精卵・胚の利用︶
2 ヒト胚利用再生医療︵クローン胚︶
3 安楽死と苦痛延命︵自己決定権・インフォームド・コンセント︶
4 死の判定︵医療の発達での矛盾︶
という4つの問題に分類して提言をおこなった。
﹁科学と非科学について﹂
生は過程であって、生まれる瞬間を科学的に決定することはできない。これは実験と観測で反証不可能、つまり非科学の領域にあるからである。
科学と非科学の違いは、古典の価値は反証不可能な部分にあるということである。つまり、科学的訂正は古典価値を失わない。
科学は間違っているものである。
科学は、検証により間違いが指摘されて訂正されていくものである。
﹁生について﹂
生は過程であり、生まれる瞬間を科学的に決定することはできない。
受精卵は人だろうか。そうならば子宮内避妊具による受精卵の着床を妨げるものは殺人だろうか。
胚盤胞は人だろうか。そうであればクローン胚から作った胚性幹細胞の再生医療への応用は禁止されるべきか。
﹁死について﹂
死の概念は科学的には得られない。ただ、それを判定することができるに過ぎない。
尊厳死や安楽死は認められるべきか。
逆に、本人の同意無しに苦痛を伴う延命治療は行うべきか。
医療の発達により、脳死という問題が発生した。
どこまで延命措置を行うかという問題で、蘇生限界点という診断が必要となった。
脳死はよみがえり不可の診断である。これは蘇生限界点を越えるかどうかの判定である。
これには︵1︶治療中止の判断、︵2︶臓器提供の判断がある。
日本では、臓器提供を前提とした治療中止の判断しか行うことができないという問題がある。
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中野師
自己決定について
1 生命問題は価値多元化が宗教に衝突している
2 その解決として自己決定主義に逃げている
3 自己の命という欲求と神仏の命との矛盾を調和させるのは﹁生き方学﹂
4 自然としての命と医療的努力との境界を考察する理論は仏教では﹁命根︵寿煖識︶﹂等にみられる。
5 ﹁神の命﹂という価値一元化の思考法では仏教は答えられない。﹁どう生きるか﹂という多元性に関わるのが仏教である。
命がどこから始まりどこで終わるかを論理化しないと思考停止に陥る。
脳死について
1 ﹁最善を尽くす﹂という期待
2 脳死状態を蘇生限界点を超えていると﹁如実知見﹂する智慧を回復しよう
※蘇生限界点を超える・・・心臓のみが動き、死体の喚起を行うのみ
3 そこから生じる自己決定・智慧による自主性を大切にする
4 過剰な介入には仏教的視点から反対する。苦悩を再生させない。
5 患者等の支援と情報提供を進めていく。
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佐藤師
生命倫理の問題
1 医療の限界 論議の最中
2 仏教界 経典に答えのない問題
仏教界が答えることの意義は、釈尊の弓矢の喩えに見ることができる。
住職としていのちを大切にすることを二方向性︵=専門家向け、一般大衆向け︶をもって縁者にアピールする必要がある。
1 臓器移植の監視
2 保健医療に携わる檀信徒への宗教心の喚起
3 広い﹁いのちの教育﹂
4 病む人を支えるネットワーク作り
5 専門家卒業後教育の充実
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柴田師
1 医学を含む科学は、仏教徒対立しない
2 命はいつ始まりいつ終わるか=意識が有るか無いか
3 苦しんでいる人にどのように手を差し伸べることができるのか。
アメリカ仏教の特徴︵社会性︶
1 エンゲージド・ブッディズム︵参加型︶
2 女性参加
3 超派意識
4 科学との交流
※アメリカでは﹁科学の仏教﹂、対し日本では仏教指導者は科学に対して強い反発がある。この隔たりが日本の脳死問題に大きな障壁となる。
5 プラクティス中心
さまざまな生死
1 ものとしての生死︵物質の世界︶
2 DNAの生死︵生物の世界︶
3 細胞・臓器の生死︵体の基本構造︶
4 人間としての生死︵三徴候・脳死︶
5 社会の中の生死︵人間の社会︶
6 地球、銀河系
7 久遠本仏のいのちの生死
倶舍論
寿=寿命
煖=ぬくもり
識=脳と心
こころはどこにあるか
1 細胞ー臓器
2 脳の中のこころ
3 たましいと身体の相関
※僧侶は<別添資料>パンフレットをもって病院に見舞おう。
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田中師
欧米では100床あれば1人のスピリチュアル・ケアが付く。
この資格を得るために、神父6年、病院2年の勉強が必要。
入院したら、宗教者がまず会いに行くという環境が整っている。
日本においては、明治維新により僧侶が社会参加することが禁じられた。
たからこそ、今、グリーフケア︵=死を自然な現象として受け止めて、自由に語り合えるような新しい死の文化を創造する︶こと、死の苦しみの緩和が必要。
僧侶が寺にとじこもって職務怠慢をしていることへの批判。
宗教者は積極的に社会に参加していくべき。
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中野師
人工妊娠中絶について
若い人、夫婦に家族計画に対する無神経さが伺える。苦しむのは女性である。
中絶問題に対し仏教は明確に論議できない。
原則的には罪である。愚かさの再生を防ぐため倫理観や避妊・家族計画など未然に防止する教化をすすめる必要がある。
しかしながら、緊急避難として人工妊娠中絶を容認した上で、その際の女性を救うため精神的痛みに対する宗教的癒しを支援する必要がある。
さらに、仏教的な人間論を深める論考が必要になる。
︻追記︼
桜木町からみなとみらいに向かうタクシーの中で、こちらは何も言わなかったのに、
運転手さんが
﹁このところ大きな会議があるんでしょ?僧侶の方がたくさん集まってますね。
世の中のためにがんばってくださいね﹂
と仰ってくださいました。
嬉しいことばでした。