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2007年10月 7日
﹁鳥居﹂立ち、ごみ投棄やむ 埼玉・利根川河川敷
環境関連のベンチャー企業が、神社の鳥居に似せた、ごみのポイ捨て防止グッズを開発した。これを国土交通省の事務所が河川敷に置いたところ、不法投棄がぴたりとやんだ。﹁日本人の信心に訴える﹂というアイデアから出た商品で、不法投棄対策に頭を悩ます自治体などにとって、救世主となるか。関係者は﹁効果がいつまでも続いてほしい﹂と祈っている。
商品名は﹁ごみよけトリー﹂。高さ約1メートルの朱塗りのミニ鳥居で、道路沿いや雑木林などごみの捨てられやすい場所に、脚部を埋めて固定する。さいたま市の企業﹁ニューマテリアル﹂︵加藤祥司社長︶が昨年11月に1基約4000円で注文生産で販売を始めた。
12月中旬、国交省利根川上流工事事務所川俣出張所︵埼玉県羽生市︶が購入し、河川敷2カ所に2基ずつ設置した。何度撤去してもごみの不法投棄が繰り返される常習現場だったが、設置後不法投棄がなくなった。1カ月以上たった今も捨てられていない。出張所の利根川誠所長は﹁試しに置いてみたが、こんなに効果があるとは﹂と驚く。
加藤社長は、不法投棄対策に悩む自治体職員と話していて﹁神社や寺社の境内にはごみを捨てる人はまずいない﹂と思いついた。立ち小便を思いとどまらせるために、壁などに鳥居の形を書く例もある。ただ、本物と同じでは、神社に迷惑がかかるかもしれないと、本物とは反対に、上段の笠木を下段より短く工夫した。﹁鳥居のようで鳥居でない﹂というのがミソで、特許を出願中だ。
神社本庁の茂木貞純総務部長は﹁ごみを捨てると、ばちが当たるという畏怖︵いふ︶心を起こさせたのでは﹂と感心する。
家電リサイクル法施行︵01年4月︶以降、河川敷などにテレビや冷蔵庫が捨てられる例が目立っている。利根川上流工事事務所管内では、01年度に不法投棄された家電は545台に上っているという。
︵毎日新聞 2003年1月24日︶
﹁鳥居で首つりやめて﹂映画に抗議 神社関係者﹁冒涜﹂
鳥居で首つりはやめてください――。公開中の和製西部劇映画﹁スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ﹂で、鳥居で人が首つりにされている場面をめぐって神社本庁など神社関係者が抗議し、制作側が映画の予告編やポスターなどを作り直していたことが6日、わかった。
製作委員会の1社で配給元のソニー・ピクチャーズエンタテインメントによると、問題になったのは、村の入り口にある鳥居にギャングに捕まえられた村長が首をつられている場面。
公開前の7月下旬、テレビCMなどで放映していた予告編やポスター、チラシの表現をめぐり、神主など神社関係者から4件の抗議が電子メールで寄せられた。抗議は﹁不適切な表現﹂﹁神聖な鳥居への冒涜︵ぼうとく︶﹂といった趣旨だったという。
全国約8万の神社でつくる神社本庁も、ソニーなど製作委に﹁誰もが安心して気持ちよくご覧になれる映画の方がよろしいのではないか﹂と申し入れた。同庁は朝日新聞の取材に﹁表現の自由も大事だが、関係者がどう受け取るかも考える必要があるのではないか﹂と話した。
製作委は関係者に﹁不快感を与えたことは申し訳ない﹂と謝罪、広く一般の人が見る機会のある予告編、ポスター、チラシは作り直した。
本編は﹁作品に興味を持った人が見るもので、作品全体を見れば、神社を冒涜するものではないと理解いただける﹂︵同社広報︶として改変せず公開した。
︵朝日新聞 2007年10月7日︶
鳥居に関するニュースを二題取上げてみました。
ごみよけトリーは、日本人の心の深層に刻まれた宗教心を利用した商品です。
民家の塀などに立小便よけに鳥居を描いてある光景は昔からよく見られましたが、最近時々目にするのが空き地などに設置された赤い鳥居。
最近よく見かけるので、どういう意味があるのか初めは疑問でしたが、数年前にこの製品の存在を知って、なるほどと感心したものです。
﹁ごみを捨てないでください﹂という直接的な看板を立てるより、設置目的の意図は直接は書かれていなくても、結果として鳥居を聖域の入り口として畏敬し、周囲にゴミを撒くものではないという日本人独自の宗教意識に訴えたほうがよほど効果的だということです。
なお、立小便禁止の鳥居の絵も、ごみよけトリーも、実際の鳥居をそのまま描くことは恐れ多いということで、本来の形から敢えて変えた形となっています。
上のごみよけトリーでは、上段の笠木が下段より短くなっています。
@nifty Daily portal プチ鳥居大集合などを見ても、実にバラエティーに富んだ﹁鳥居もどき﹂があることに驚かされます。
日本人は無宗教だと言われていますが、そんなことは無い、奥底では信心深さ、そして寛容性があるのだということを端的に表わしている事例でしょう。
もう一方のニュースは、現在公開中の﹁スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ﹂の予告映像に用いられていた鳥居の場面についての話題です。
﹁スキヤキ・ウエスタン﹂という名のとおり、山あいの寒村﹁湯田﹂︵笑︶を舞台にする﹁マカロニ・ウエスタン﹂をもじったベタな和製ウエスタン映画です。
いかにもクエンティン・タランティーノ参加の映画といった感じですが、内容については論題から外れますので、詳細は公式サイトをご参照ください。
さて、映画の予告編は、興行成功の鍵を握る重要な役割を果たします
単に全体のストーリーを見せるだけのものではなく、観た人の記憶にいかに残るか、是非劇場に足を運んで観に行きたいと思わせるというのが予告編の役割です。
そのため、特徴的な場面を予告編に盛り込むことになるわけですが、本編で使われた鳥居の場面が予告編やポスターでクローズアップされ、神社関係者からの抗議を受けるにいたったわけです。
⇒ ここをクリックすると変更前の予告編スクリーンショットが表示されます。
(C)Sukiyaki Western Django film partners
映画の舞台となる集落の入り口の鳥居に、ギャングに捕まえられた村長が首をつられている、﹁不適切な表現﹂﹁神聖な鳥居への冒涜﹂と指摘された箇所です。
確かに︵本編を未だ観ずに︶この予告編を観ただけでは、神社関係者のみならず不快感を感じる方は多いかと感じます。
三池崇史監督がどこまで計算してこの映画を撮影したのかはわかりませんけれど、これも日本人の心の深層に刻まれた宗教心により引き起こされる感情でしょう。
二つのニュースを並べてみて、一方では神社関係者・神社庁から不快感を表明され、一方では神社庁から褒めの言葉があり・・・と、その対照的な反応には興味深いものがあります。
鳥居への畏敬の感情が根底にあるかどうかということと、タブーへ敢えて直球勝負で挑戦したこと、その根本的な違いがその大きな要因と言えるでしょう。
神社庁の意見だけではなく、日本人の世間一般の意見として、この両者について実際にどのような感情を抱くのかを調査分析をしてみると興味深い結果が得られるはずです。
追記
沖縄へ行った際、鳥居形の基地ゲートを見たことがあります。
下のようなものです。
これは、神道への信仰心を持たない米軍ならではの発想ですね。
米軍トリイ通信基地
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