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2007年8月 1日
17年ゼミ、競合少なく数増える 今夏70億匹? 米国
17年ごとに大発生する米国の﹁17年ゼミ﹂の羽化が、イリノイ州など米中部でピークを迎えている。今年の予想発生数は世界の総人口を上回る70億匹。米国では﹁うるさい﹂﹁庭木が傷む﹂﹁掃除が大変﹂など悪役と見なされがちな17年ゼミ。しかし、その正確な体内時計には﹁進化の不思議﹂が詰まっている。
イリノイ州シカゴ郊外へ、静岡大の吉村仁教授︵進化理論︶とセミ捕りに出かけた。住宅地のわきの森に入ると、赤い目の17年ゼミが、木の幹だけでなく、周囲の草にも鈴なり状態だった。
全長は4センチほど。日本のニイニイゼミ並みだが、細身なのでより小さく見える。そのうえ無防備で簡単に捕れる。
﹁17年ゼミは長い距離を飛べない。大発生するので、遠くまで結婚相手を探しに行く必要がなかったのでしょう﹂と吉村さんは説明する。
よく見ると、ひとまわり小さいセミが交じっている。大きい方は腹がオレンジ色なのに、小さい方は黒い。大きい方は﹁セプテンデシム﹂、小さい方は﹁カッシーニ﹂で種が違うという。ほかにもう1種、小型の17年ゼミがいるそうだ。
シカゴの歴史・自然史博物館﹁フィールド博物館﹂のダン・サマーズ昆虫収集部長によると、今年の羽化の第一報は5月19日。﹁前回の60億匹を超え、70億匹は発生するとみられている﹂。大発生は1カ月ほど続く。
︵記事・17年ゼミの写真はリンク先の朝日新聞記事より︶
昨日、セミの羽化をご紹介いたしましたので、それに関連した記事を続けます。
アメリカ中部では、今年が17年に一度の﹁17年ゼミ﹂の出現の年にあたっていて、大変なことになっているようです。
70億匹という数は、想像に絶する光景が展開されたに違いありません。
この17年セミは、文字通り、土の中で17年間過ごし、そして短い成虫の時期を過ごし、子孫を残していくセミのことす。
アメリカには、﹁17年ゼミ﹂の他に、﹁13年ゼミ﹂がおり、地域によって出現年は異なります。
日本のセミはほとんど﹁7年ゼミ﹂ですね。
ここで、ピンと来る方もいらっしゃると思いますが、セミの寿命の年数はたいてい﹁素数﹂となっています。
素数︵そすう︶とは、1とその数自身以外に正の約数を持たない︵つまり1とその数以外のどんな自然数によっても割り切れない︶、1より大きな自然数をいう。自然数や整数の積を考える上で基本的な構成要素であり、数論、暗号理論等において重要な役割を演ずる。
素数は無限に存在するが、100以下の素数を小さい順に列挙すると次の通り。
2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, 23, 29, 31, 37, 41, 43, 47, 53, 59, 61, 67, 71, 73, 79, 83, 89, 97
整数の中で、あるいは実数の中での素数の分布の様子は高度に非自明で、リーマン予想のような現代数学の重要な問題との興味深い結びつきが発見されている。
(Wikiペディア︶
では、なぜ、セミの寿命が素数なのか。
実際にそのようになっている訳ですから、何らかの理由が考えられます。
諸説あるうち、最も有力な説は、冒頭の新聞記事にも出てくる静岡大の吉岡仁教授︵システム工学科・理論生態学︶によるものです。
まずは吉岡教授のサイトをご参照下さい。
﹃素数周期ゼミの不思議﹄(1)
﹃素数周期ゼミの不思議﹄(2)
実にわかりやすい説明ですね。
かいつまんで纏めると、
︵1︶北米大陸において、氷河期になった時に、セミの成虫まで要する期間が延びた。
︵2︶そのために、出来る限り同じ場所において、同時に成虫にならないと、繁殖のための交尾相手が見つけにくくなる。
︵3︶鳥などの天敵によって自然淘汰される個体数は毎年ほぼ一定。
︵4︶結果として、成虫になる時期がずれたものは、自然に淘汰されていった。
︵5︶特に、13年、17年の周期で発生する種だけが、素数のもつ﹁1とその数以外のどんな自然数によっても割り切れない﹂という性質により、他のセミとの競合や交雑を免れた。
ということになります。
気象条件や、交雑の具合、個性によって、例えば本来17年土の中で過ごすはずの種が、16年であったり、18年であったりすることもあるはずです。
しかし、毎年の条件の中で、
・鳥などの天敵によって捕獲される数量は、毎年ほぼ一定
・個体数が少ないと、セミたちの交尾相手を見つけにくい
などの要素により、時期がずれると、個体数の維持が困難になっていきます。
しかも、他の周期の種と交雑すると、その子孫の幼虫でいる期間も変わってしまい、やはり個体数維持のためにマイナス要因となります。
従って、なるべく他の周期の種と同時発生は避けたい。なおかつ、一時期に大量発生して個体数を維持したい。
これが、素数周期のセミがだけが生き残ったという説の根拠になっています。
実際に、そのことをシミュレーションとして体験できる仕組みが下記サイトにあります。
本当に13年ゼミと17年ゼミが生き残るのかな?
↑
これが、ライフゲームのようで、とても面白いのですよ。
しかも、人類の出現とか、火山の噴火、隕石の衝突、宇宙人の出現!!といった突発的なオプションつき。
是非、いろいろな条件を入れて結果がどのようになるのかを試してみてください。
なお、日本のセミは、アメリカのセミのように顕著な個体数の増減はありません。
しかしながら、ある程度の増減の周期は見られるようです。
今夏、大阪はセミがうるさい ﹁去年の2倍﹂専門家予想
大阪市内でセミの数を調査しているグループが、今夏はセミが去年の2倍以上発生すると予測している。セミの抜け殻調査を14年前から実施しており、そのデータから今年は4年に1回の大発生の年に当たると推測。大音量のクマゼミが集まる大阪市東住吉区の長居公園では8月25日から世界陸上競技選手権大阪大会が開催されるが、専門家は﹁セミのうるささに選手もびっくりするのでは﹂と話している。
予測したのは大阪市立大の沼田英治教授と同市立自然史博物館の初宿︵しやけ︶成彦学芸員のグループ。93年から市民ボランティアとともに、同市西区の靱︵うつぼ︶公園でクマゼミとアブラゼミの抜け殻を集めて、羽化したセミ数を推測してきた。
その結果、セミの数は毎年、交互に増減しているうえ、4年に1回大発生していることが判明した。また、どの4年間をとっても、合計のセミ抜け殻数が9万7000?10万6000個で、平均は約10万2500個になった。
04?06年の3年間の合計は6万3866個なので、平均から引き算して、今年の発生数を約3万8600匹と推測。前年が約1万6000個だったため、発生数は2倍以上になる可能性があるという。04?06年に長居公園など他の3カ所でも調べた結果、セミの増減傾向は一致していた。
セミの発生数になぜ規則性があるのか。沼田教授は﹁まだ分からないが、セミの幼虫が木の樹液を吸える根付近の﹃席﹄の数が決まっていて、ある年にたくさん占められれば、別の年は数が限られてくるためではないか﹂と話す。
︵朝日新聞︶