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2007年7月 4日
﹁海洋相﹂設置、初代は冬柴国交相が兼務
政府は3日午前の閣議で、国の海洋政策を一元化する海洋基本法を20日から施行する政令を決定した。
これを受け、安倍首相は同法に基づいて新設する初代の海洋相に冬柴国土交通相を任命した。
冬柴国交相は閣議後の記者会見で、﹁海洋の開発・利用の推進、環境の保全、輸送の確保に政府一体となって戦略的に取り組むことが重要だ﹂と語った。塩崎官房長官は﹁海底資源や魚の資源、いろいろなエネルギーもあり、幅広く考えていこうと担当閣僚が設けられた﹂と述べた。
同法は海洋相について、﹁海洋に関する施策の集中的かつ総合的な推進に関し首相を助ける﹂と規定しており、内閣官房に新設される総合海洋政策本部の副本部長として、本部長である首相を補佐する。国交相は海岸管理や海上交通などの関連分野を幅広く所管しているため、海洋相を兼務することになった。
海洋政策はこれまで、国土交通、農林水産、経済産業などの各省にまたがり、総合調整する機関がなかった。このため、中国による東シナ海の天然ガス田開発などについて対応が遅れたなどと指摘されている。︵読売新聞︶
久間章生防衛相が原爆投下に関する﹁しょうがない﹂発言で引責辞任したことで、安倍内閣は既に3人の閣僚が交代する異常事態となりましたが、そんな中、新しい大臣職﹁海洋相﹂が誕生しました。
日本は、国土面積は約38万km2 で、世界第60位ですが、領海面積︵内水を含む︶ は43万km2、領海︵内水を含む︶+接続水域は74万km2となります。
さらに、領海と排他的経済水域︵EEZ︶を合わせた水域面積で約447万km2であり、これは世界第6位の位置を占めます。
国土面積と合計すれば約485万km2︵世界第9位︶。
日本は偏狭な国であるという認識は間違いであることがわかります。
もっと重要なことがあります。
日本は、国土を他の国と接していない、つまり、国境をもっていませんが、排他的経済水域(EEZ)では、他の国と膨大な距離にわたって隣接しています。
下図は、海上保安庁のサイトから引用させていただきましたが、EEZの北西側ほとんどすべて他国と隣接している状況がわかりますね。
海を挟んだ隣国との距離が、400海里に満たない場合、どこかに境界を引く必要が生じます。
したがって、この排他的経済水域の境界をどこに定めるかという問題が発生するわけです。
■日本の排他的経済水域に係わる問題
尖閣諸島領有権問題
竹島問題
北方領土問題
東シナ海ガス田問題
沖ノ鳥島
日韓漁業協定
主要な問題だけでこれだけあります。
そこで、国連海洋法条約 第74条﹁衡平の原則﹂に基づく解決を試みるわけですが、必ずしも物理的な中間線に定めるわけではなく、互いの国がまず話し合って納得の行く協議をし、協議がこじれた場合は国際司法に判断してもらうという流れになります。
ただし、関係国のうち一カ国でも国際司法の判断を仰ぐことに反対の場合は、その場に提起することができず、領海問題はずるずると解決が引き延ばされてしまうわけです。
海洋基本法についてみてみると
︵目的︶
第一条 この法律は、地球の広範な部分を占める海洋が人類をはじめとする生物の生命を維持する上で不可欠な要素であるとともに、海に囲まれた我が国において、海洋法に関する国際連合条約その他の国際約束に基づき、並びに海洋の持続可能な開発及び利用を実現するための国際的な取組の中で、我が国が国際的協調の下に、海洋の平和的かつ積極的な開発及び利用と海洋環境の保全との調和を図る新たな海洋立国を実現することが重要であることにかんがみ、海洋に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにし、並びに海洋に関する基本的な計画の策定その他海洋に関する施策の基本となる事項を定めるとともに、総合海洋政策本部を設置することにより、海洋に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって我が国の経済社会の健全な発展及び国民生活の安定向上を図るとともに、海洋と人類の共生に貢献することを目的とする。
とあります。
海底資源開発に対する諸外国などの侵入は、近年特に著しい傾向にあります。
中国のガス田開発が進む東シナ海では、日本企業が躊躇なく安全に試掘を行う環境を整える必要があります。
また、EEZの根拠となる竹島、魚釣島、沖ノ鳥島、北方4島などの国際法上の確固たる位置づけをしなければならないでしょう。
日本は膨大なEEZを有する海洋国です。
しかしながら、それをとりまく環境は決して穏やかではありません。
やはり、体系的な国家海洋政策の策定や、そして、問題に適切に、かつ迅速に対処できる行政体制の整備が求められます。
その根幹となる重要法が、﹁海洋基本法﹂であるといえます。
ただ、その重要な役職である初代海洋相が、単なる連立政権への配慮から選ばれたものであるのなら、とても残念です。
防衛相をめぐるグダグダもあり、中国・韓国は、この人選にある意味ほっとしているのではないでしょうか。
日本にとってとても重要な法律である海洋基本法が生かされることを願うばかりです。
国際法上に定められる領海、接続海域、排他的経済水域、公海の用語のまとめ
■領海の基線は、海岸線で潮が一番引いた地点を基準にしてそれを結んだ線とする。
■領海とは
領海の基線からその外側12海里︵約22km︶以内の海域。
沿岸国の主権がおよぶ海域であり、外国船舶がその海域を航行するためにはその沿岸国が定める無害通航に関する法令の遵守が必要である。
■接続海域とは
領海の基線からその外側24海里︵約44km︶以内の海域︵領海域の外側の12海里部分︶
沿岸国が、領土・領海の通関上、財政上、出入国管理上、衛生上の法令違反の防止及び違反処罰のために必要な規制をすることが認められた水域。
■排他的経済水域︵EEZ=Exclusive Economic Zone︶とは
領海の基線からその外側200海里︵370km︶以内の海域︵領海を除く︶
沿岸国に経済的な管轄権が与えられているが、他国の航海に際しては自由通航となっている海域。
なお、排他的経済水域においては,以下の権利が認めらる。
1.天然資源の開発等に係る主権的権利
2.人工島,設備,構築物の設置及び利用に係る管轄権
3.海洋の科学的調査に係る管轄権
4.海洋環境の保護及び保全に係る管轄権
■公海とは
特定の国家の主権に属さず、各国が自由に自国の旗を掲げて航行できる海域
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暁天さん
コメントありがとうございます。
いろいろなゴタゴタの中で、基本法成立のニュースが埋もれてしまっているのが残念です。
投稿者 kameno | 2007年7月 6日 10:00