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2007年2月20日
地球温暖化 南太平洋のツバル 海外移住を考える住民
海面上昇による浸水や海岸浸食が年を追って深刻化する南太平洋のツバル。首都フナフティでは、住民の多くが海外移住を考え始めている。特に若い世代は、地球温暖化による﹁国の消滅﹂を、起こりうる現実として受け止めている。
18日夕、ツバル唯一の国際空港の滑走路脇。足元のいたるところから、かすかな音が聞こえてくる。舗装された路面のわずかなすき間からわき出す水は透明で、間断なくはじける細かい泡が見える。なめると確かに塩辛い。海水はたちまち四方に広がった。
約1万人が住む平均海抜約2メートルの国土は、サンゴ礁の上に砂が堆積︵たいせき︶してできた。海水は、海岸を越えてくるだけでなく、地盤にある無数の穴を通って地上にあふれる。
﹁遅くとも10年後までに家族とニュージーランドに移住するつもりだ﹂。トマルさん︵32︶は国営電話会社に勤務するエンジニア。05年には衛星通信技術の研修で日本にも行った。
同僚も多くが移住を考えている。この時期の浸水被害はもちろん、海岸線が削られてヤシの木が根元から波にさらわれたり、小さな島が消滅したりする現実を、誰もが目の当たりにしているからだ。﹁他の国の二酸化炭素が原因で島がなくなる。怒りを感じるが、だからといってどうしようもないだろう﹂。トマルさんはため息をついた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070219-00000005-maip-int
地球温暖化の進行により、南極や、陸上にある氷河などの氷が溶け出し、海に大量の水となって流入していっています。
その結果、海水面の上昇が深刻な問題を引き起こしています。
そのうちの一つが、冒頭の記事のように、ツバルのような島国や、オランダなどの海抜以下の地域を抱えた国々に与える影響です。
既にツバルでは集団移住が計画されていますが、国自体が消滅してしまうという異常事態が現実問題として起こっているわけです。
もはや、このような現状になす術も無く立ち竦むのみという状況です。
Tuvalu island.com
ツバル諸島を襲う衝撃的な写真の数々は、こちら↓で見ることができます。
http://www.tuvaluislands.com/photos/2006_tides/2006tides.html
そして、この海面上昇による影響は、もちろん日本にも及んでいます。
海面の干満差の激しい汽水域が海面上昇により変化し、沿岸養殖などの漁業に深刻な影響を与えはじめています。
また、沿岸都市部の地下水位上昇によって、地下構造物に設計基準以上の浮力が上昇し、結果的に構造物が壊されてしまう恐れや、地下水に海水が混入してしまうという問題も生じています。
さらに、日本最南端の島、沖ノ鳥島に与える影響も深刻です。
沖ノ鳥島は、北緯 20°25′31″.9768、東経 136°4′52″.1430 に位置する 東京都小笠原村の小島です。︵岩と主張する国もありますが︶
満潮時には、海水面から僅か数十センチしか頭を覗かせない島でもあります。
海洋法に関する国際連合条約 (国連海洋法条約)
第八部 島の制度
第百二十一条 島の制度
1島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるものをいう。
2 3に定める場合を除くほか、島の領海、接続水域、排他的経済水域及び大陸棚は、他の領土に適用されるこの条約の規定に従って決定される。
3人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない。
このように、沖ノ鳥島が、海水面上昇によって高潮時にすべて海面下に水没してしまうようになると、当然海洋法上の島とはとても主張できなくなり、日本の国土全面積よりも広い半径200海里︵370.4km︶、約40万km?の排他的経済水域(EEZ)を失ってしまうこととなります。
1988年から段階的に行われてきた、工事費用合計約300億円にも及ぶ消波ブロックとコンクリート護岸工事が水の泡と化すことは言うまでもありません。
IPCC︵気候変動に関する政府間パネル︶による2001年報告では、100年後には平均気温が1.4?5.8℃上昇し、2100年には1990年に比べて9?88cm海水面が上昇すると予測されています。
私たちにできる対策は何があるでしょうか。
もはや時間は残されていません。
気候変動に関する政府間パネル︵IPCC︶第27回総会︵2007年11月、於 スペイン︶において、IPCC第4次評価報告書統合報告書の政策決定者向け要約︵SPM︶が承認され統合報告書本編が受諾されました。 一部引用します。 IPCC︵気候変動に関する政府間パネル︶による気候システムの温暖化には疑う余地がない。このことは、大気や海洋の世界平均温度の上昇、雪氷の広範囲にわたる融解、世界平均海面水位の上昇が観測されていることから今や明白である. 最近12年︵1995?2006 年︶のうちの11年の世界の地上気温は、測器による記録が存在する中︵1850 年以降︶で最も温暖な12年の中に入る。過去100 年間︵1906?2005︶の線形の昇温傾向は100 年当たり0.74﹇0.56?0.92﹈℃ であり、第3次評価報告書で示された0.6℃﹇0.4?0.8℃﹈︵1901-2000︶の傾向と比べて大きい。温度上昇は地球全体にわたり生じており、とりわけ北半球のより高緯度地域でより大きい。陸域は海洋に比べより速く温暖化している。 海面水位の上昇は温暖化と一貫している︵整合性がある︶。世界平均海面水位は、熱膨張、氷河や氷帽の融解、極域の氷床の融解により、1961 年以降、年年平均1.8﹇1.3?2.3﹈mmの速度で上昇し、1993 年以降について言えば、年当たり3.1﹇2.4?3.8﹈mmの速度で上昇した。1993 年から2003 年にかけての海面水位上昇率の増加が十年規模の変動あるいは、より長期的な上昇傾向を反映しているのかは不明である。 第27回IPCC総会統合報告書(2007年11月17日) http://www.env.go.jp/earth/ipcc/4th/interim-j.pdf
また、ご指摘の空港建設の問題や、なぜ最近になって海水の浸水が大きな問題になったかについては、東京大学大学院教授(沿岸海洋学・環境変動論)茅根教授によると、太平洋戦争時の1943年に建設された飛行場のために、島の中央低地にあった沼地だった場所が分からなくなってしまった。さらに1980年代からの人口増で、100年前には100人程度しか住んでいなかったフナフティの人口はいまや4,000人。かつて人が住んでいなかった湿地帯にも人が住み出したため、浸水が問題になるようになった、と指摘しています。 出典‥﹁“水没しつつある”ツバルの窮状﹂ Science portal に掲載 http://scienceportal.jp/news/review/0806/0806201.html これまでこのブログでの本文中や、コメントの遣り取りで見ててきたように、一つの原因のみではなく、複合的な要因により、﹁目に見える形で﹂地球温暖化の象徴として捉えられています。 地球温暖化のために私たちがどのような対策を講じるべきなのかを考えていく必要があるということには何ら変わりがありませんが、﹁ツバル﹂が直面する地球温暖化による海水面の上昇というグローバルな課題への取り組みは、結局は、ツバルという地域の特殊性を考慮したものであることを前提することが必要でしょう。
なお、ツバルが具体的かつ緊急的にに日本に支援してほしいことは、沿岸域の保全だということです。 植林、人工砂州、海岸防護壁などの構築によって、激しい気象変化に弱い沿岸域の住居を守る資金の支援。 そして雨水の回収、貯蔵法や地下の淡水層を海水の浸入から守る方法の改善、下水処理の改善、家畜の糞尿(ふんにょう)を回収して肥料やメタン生産に結びつける処理法の改善など。 また、輸入燃料の高騰がツバル経済の大きな重荷になっていることから燃料の輸入依存度を下げるために再生可能なエネルギーの開発と省エネルギー技術を必要としている。全島に太陽光発電システムを展開し、風力やバイオ燃料といった再生可能なエネルギーを探求、導入するなどに関して日本の支援に期待しているとのことです。 出典‥ 太平洋島嶼国の環境と支援を考える国際シンポジウム(6月19日、環境省、外務省主催) マタイオ・テキネネ 氏(ツバル天然資源・環境省環境局長)の講演より http://scienceportal.jp/highlight/0807.html#0807041
このように緊急性を要する支援活動と、長期的に見た地球温暖化対策を複合的に講じていくことが大切なことといえましょう。 投稿者 kameno | 2008年7月5日 10:45