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2006年12月22日
﹁旧海軍支えた﹂お稲荷さん乗っ取り?告発を京都府警受理
旧海軍の日本海での拠点としてかつて鎮守府が置かれ、現在は海自や海保が基地を設置する海の要衝・京都府舞鶴市で﹁稲荷神社の乗っ取り疑惑﹂が浮上、司直の調べが入ることになった。
今年3月にこの神社の宗教法人役員名簿が﹁正規の手続きがないまま﹂に改竄され、その後は石鳥居や社務所などが次々と撤去される事態になっている。
憂慮した神社庁は公正証書原本不実記載罪で府警に刑事告発。同庁によると告発は20日、受理された。戦前は海軍関係者のお膝元の守り神として栄えたお稲荷さんが、平成の世に存亡の危機にさらされている。
︵産経新聞 イザ!︶
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/topics/32324/
記事でとりあげられている、乗っ取り被害に遭っている神社は、京都府舞鶴市長浜加津良の稲荷神社︵通称﹁加津良稲荷﹂︶です。
記事の内容を整理すると、次のような流れになります。
︵記事の内容以外の憶測もさまざまありますが、あくまでも記事に書かれている範囲でまとめます︶
平成18年3月、稲荷神社の宗教法人役員名簿が変更されたとする﹁神社規則変更承認申請書﹂が京都市内の司法書士事務所から京都府神社庁に提出された。
↓
京都府神社庁が申請内容を調べたところ、同庁内規の﹁代表役員は宮司の職を以って充てる﹂に抵触することが判明。
↓
京都府神社庁はこの名簿変更を却下
↓
所轄である京都府知事の認証も与えなかった。
↓
平成18年9月、京都府神社庁がこの神社の役員名簿を再度調査。
↓
いつの間にか役員名が変更されていたことが発覚。
︵実は、3月以前に、すでに印鑑登録証明付で﹁責任役員会議事録﹂が提出され、正規の手続きを踏んだと認識した京都地方法務局舞鶴支局が受理してしまっていたことが判明︶
↓
京都府神社庁が﹁神社本庁の認証も受けない虚偽の報告で不実な登記したのは宗教法人法第30条に違反する﹂として公正証書原本不実記載罪で府警に告発。
↓
平成18年12月20日、告発が府警に受理された。
というものです。
宗教法人法第30条近辺の条文を見てみましょう。
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宗教法人法
第4章 規則の変更
︵規則の変更の手続︶
第26条 宗教法人は、規則を変更しようとするときは、規則で定めるところによりその変更のための手続をし、その規則の変更について所轄庁の認証を受けなければならない。この場合において、宗教法人が当該宗教法人を包括する宗教団体との関係︵以下﹁被包括関係﹂という。︶を廃止しようとするときは、当該関係の廃止に係る規則の変更に関し当該宗教法人の規則中に当該宗教法人を包括する宗教団体が一定の権限を有する旨の定がある場合でも、その権限に関する規則の規定によることを要しないものとする。
2 宗教法人は、被包括関係の設定又は廃止に係る規則の変更をしようとするときは、第27条の規定による認証申請の少くとも2月前に、信者その他の利害関係人に対し、当該規則の変更の案の要旨を示してその旨を公告しなければならない。
3 宗教法人は、被包括関係の設定又は廃止に係る規則の変更をしようとするときは、当該関係を設定しようとする場合には第27条の規定による認証申請前に当該関係を設定しようとする宗教団体の承認を受け、当該関係を廃止しようとする場合には前項の規定による公告と同時に当該関係を廃止しようとする宗教団体に対しその旨を通知しなければならない。
4 宗教団体は、その包括する宗教法人の当該宗教団体との被包括関係の廃止に係る規則の変更の手続が前3項の規定に違反すると認めたときは、その旨をその包括する宗教法人の所轄庁及び文部科学大臣に通知することができる。︽改正︾平11法160
︵規則の変更の認証の申請︶
第27条 宗教法人は、前条第1項の規定による認証を受けようとするときは、認証申請書及びその変更しようとする事項を示す書類2通に左に掲げる書類を添えて、これを所轄庁に提出し、その認証を申請しなければならない。
1.規則の変更の決定について規則で定める手続を経たことを証する書類
2.規則の変更が被包括関係の設定に係る場合には、前条第2項の規定による公告をし、及び同条第3項の規定による承認を受けたことを証する書類
3.規則の変更が被包括関係の廃止に係る場合には、前条第2項の規定による公告及び同条第3項の規定による通知をしたことを証する書類
︵規則の変更の認証︶
第28条 所轄庁は、前条の規定による認証の申請を受理した場合においては、その受理の日を附記した書面でその旨を当該宗教法人に通知した後、当該申請に係る事実が左に掲げる要件を備えているかどうかを審査し、第14条第1項の規定に準じ当該規則の変更の認証に関する決定をしなければならない。
1.その変更しようとする事項がこの法律その他の法令の規定に適合していること。
2.その変更の手続が第26条の規定に従つてなされていること。2 第14条第2項から第5項までの規定は、前項の規定による認証に関する決定の場合に準用する。この場合において、同条第4項中﹁認証した旨を附記した規則﹂とあるのは、﹁認証した旨を附記した変更しようとする事項を示す書類﹂と読み替えるものとする。
第29条 削除
︵規則の変更の時期︶
第30条 宗教法人の規則の変更は、当該規則の変更に関する認証書の交付に因つてその効力を生ずる。
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記事によると、現在、神社は、無残にも鳥居は倒され、さらに神社付帯施設がは撤去されてしまっているということです。
さらに神社は舞鶴の海自舞鶴補給所に近いことや、関電火力発電所・舞鶴1号機が10km内にあることもあり、﹁2ちゃんねる﹂ニュース速報+をはじめ、ネット上は﹁テロ目的だ﹂などと、いわゆる“お祭り状態”となっているのです。
さて、全国に、寺院・神社の数はどれくらいあるかといえば、以前のトピックス
僧侶はもっと情報発信すべきでは?
寺院の数はコンビニの数よりもずっと多い
で取上げたとおり、
︻文化庁登録法人数2000年12月現在︼
宗教法人総数 182,659 ︵うち、神社 85,343、 寺院 77,681︶
という膨大な数になっています。
もちろんこの中には神主・宮司・僧侶などが常住している所も多いですが、単なる社とか祠とかお堂とか、あるいは土地だけ、建物だけという所も少なからずあります。
そして、登記の内容は、理想的には宗教法人の実体を正確に表していることが必要ですが、法人登記の内容とか、不動産の名義が宗教法人名義で登記されていないなど、様々な事情により実態と異なっている場合も多いのです。
例えば個人連名による共有地、あるいは集落名義、市町村名義、特定の個人名義・・・・・
このあたりを、ここの宗教法人でもう一度見直して見る必要があると思います。
もう一点、不動産ではなく、宗教法人自体の登記についても、宗教法人の実体を正確に表しているかということを点検することが必要です。
登記とは、一定の事項を公開された公簿に記載することによって、第三者に対してもその権利の内容を明らかにし、取引の安全と円滑とを図ろうとするものです。このような制度を登記制度といいますが,登記には,権利義務の主体すなわち法人格に関するもの︵=法人登記︶と、権利の客体すなわち財産に関するもの︵=不動産登記︶とがあります。
法人登記
宗教法人の存在、組織、財産関係の状況等を一定の帳簿︵登記簿︶に記載して公示し、いつでも一般に公開すること︵閲覧,謄抄本の交付︶を目的としています。
宗教法人において,このような登記が必要とされるのは、宗教法人が法律関係の主体となり、法律上の行為を行う場合、誰が宗教法人を代表し、財産状況は現在どうなっているか等の事項を、第三者に対しても、法人の構成員その他利害関係人に対しても明らかにする必要があるからです。
なお、宗教法人は、所轄庁から規則の認証を得て、その主たる事務所の所在地に次のような事項を登記することによって成立します。
※ (1) 目的︵事業を行う場合は,その事業の種類を含む。︶
※ (2) 名称
※ (3) 事務所
※ (4) 当該宗教法人を包括する宗教団体がある場合には,その名称及び宗教法人,非宗教法人の別
(5) 基本財産がある場合には,その総額
(6) 代表権を有する者の氏名,住所及び資格
※ (7) 規則で境内建物若しくは境内地である不動産又は財産目録に掲げる宝物に係る財産処分行為に関する事項を定めた場合には,その事項
※ (8) 規則で解散の事由を定めた場合には,その事由
※ (9) 公告の方法
不動産登記
土地や建物を購入するとき、誰もが登記簿を見るように、不動産の取引で登記は一番大切なことです。宗教法人も不動産の売買等権利の変動のつど、登記を怠らないようにしましょう。
なお、宗教法人の所有に係る礼拝の用に供する建物及びその敷地については、その旨の登記をすることによって、特別の場合を除き、私法上の金銭債務のための差押えを免れることができます。
そして、登記事項に変更が生じたら、変更の登記︵上記で※のついている事項については規則変更の認証が必要︶をし、遅滞なく登記簿の謄本︵又は抄本︶を添えて所轄庁に届け出なければなりません。
特に、代表役員︵代務者を含む︶が変更︵再任も含む︶になっているにもかかわらずそのまま放置されていて、取引の相手側に損害を与えた場合など損害を賠償する責任が生じてきます。
最後に、京都府舞鶴市長浜加津良の稲荷神社の事件がうまく解決されることを心から望みます。
鳥居は倒され、さらに神社付帯施設が撤去さてれしまうなどという行為は決して許されるものではありません。
このような事例は、氷山の一角です。
ネット上には宗教法人の売買情報がいたるところに掲載されています。
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売却 希望 情報 最新3件表示
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しかるべき機関がこういう事態を監視していくことは必要なのではないでしょうか。
悪用されないためにも。