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2005年4月 5日
インターネットと宗教に関する研究については、インターネットの発祥地である米国、同じ英語圏であるカナダと英国、また独自の発展を背景にもつヨーロッパでは、一般誌の記事掲載や、関連書籍の出版が数多くなされています。
先行研究では、MUD︵注1︶ 上で行われているキリスト教の礼拝をテキスト分析し、従来の教会での儀礼との比較を行った研究(注2)がSchroederにより、1998年に発表されました 。
インターネット上の﹁ヴァーチャル﹂な空間について、Campbellは、現実空間のような余計なノイズが無いという理由で、﹁霊的な世界﹂に近いものであると指摘しています。
現代の宗教集団の中で、インターネットとの関わりが注目されてきたのは新宗教運動︵New Religious Movements︶といえます。1995年末から始まった、サイエントロジー教会とその批判者とのインターネット上での争いは、宗教問題という枠を超え、言論の自由・表現の自由対信教の自由、あるいは、一国での法的規制の無効性といった問題を提起して、幅広い分野から注目を集めました。
また、1997のヘヴンズ・ゲート︵注3︶による集団自殺事件 では、信者の勧誘やマインド・コントロールのメディアとしてのインターネットの可能性ないし危険性が取りざたされています。
英国のINFORM は、2000年に
(1)新しい多様なコミュニケーション形態が、人々の宗教情報への接し方を変える。
(2)インターネットが教団組織の権威構造などに変化をもたらす。
(3)誤った情報や公序良俗に反する情報の氾濫、個人や集団への攻撃に対し、どのようにして防御できるか。
という3つの問題に対する報告を発表しました。
O'Leary と Brasher︵注4︶は、ミクロレベルでの宗教思想の問題提起を行っています 。
このことから分かるように、宗教とCMCとの関係は、研究者も含めて大いに注目されている領域であり、そのトピックは田村貴紀により次の3点に分類︵注5)れます 。
(1)CMC上で形成される人間関係︵相互作用とアイデンティティー︶
(2)儀式やシンボルの意味形成
(3)組織変容あるいは人の出会い方の変容
さて、日本に眼を向けると、インターネットと宗教に関する論文・文献の主要なものは次の通りです。
インターネットの歴史はまだまだ浅く、宗教の分野においてインターネットを伝道の手段として利用するようになってから、まだ約10年が経過しただけです。
日本の宗教団体のインターネット利用について、具体的な信者間による利用の実態については、幾つかの事例研究がありますが、特にサイト主催者などの情報発信者を中心として発信者側の利用実態について、そして信者間でどのようなコミュニティーが形成されているのかを研究していくことは重要でしょう。
特に、近年急速に広まっているブログにより、信者間の横の連携が強化され、宗教のあり方や、伝統様式、習慣など大きな影響を及ぼすことが考えられます。
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︻国内の関連論文・文献一覧︼
■﹃ネット時代の仏教の展開﹄志茂田誠諦 2001
■﹃コンピュータ・ネットワークの普及と宗教的行為の変容に関する調査研究 (継続)﹄黒崎浩行・葛西賢太・川島堅二・田村貴紀・深水顕真 2000
■﹃現代のメディア・コミュニケーションにおける宗教的共同性: キリスト教系メーリングリストの場合﹄黒崎浩行 2000
■﹃コンピュータ・ネットワークの普及と宗教的行為の変容に関する調査研究﹄
黒崎浩行・葛西賢太・田村貴紀・深水顕真 2000
■﹃﹁CMCと宗教﹂研究の視角﹄田村貴紀 1999
■﹃布教用ホームページの効用について: 広島県における仏教寺院の事例より﹄
深水顕真 1999
■﹃インターネットは地域的宗教構造を変えうるのか?: 広島県における宗教ウェッブサイトの現状﹄深水顕真 1999
■﹃インターネットと宗教﹄土佐昌樹 1998
■﹃インターネットの中の神々: 21世紀の宗教空間﹄生駒孝彰 1999
■﹃日本宗教のインターネット利用の比較分析に向けて: 神社ウェブサイトの場合﹄
黒崎浩行 1999
■﹃インターネットと宗教: カルト・原理主義・サイバー宗教の現在﹄
土佐昌樹 1998
■﹃インターネットの宗教情報: その可能性と危険性﹄田村貴紀 1997
■﹃宗教関連ホームページ︵ウェッブ・サイト︶主催者へのアンケート調査結果報告﹄田村貴紀 1997
■﹃インターネットの宗教的活用の現状と可能性: アメリカのキリスト教会の事例研究﹄川島堅二 1997
■ ﹃データブック 現代日本人の宗教: 戦後50年の宗教意識と宗教行動﹄石井研士 1997
■﹃インターネットの発達と宗教集団の変容﹄深水顕真 1997
■﹃インターネットの宗教情報: その可能性と危険性﹄田村貴紀 1997
■﹃精神世界のゆくえ: 現代世界と新霊性運動﹄島薗進 1996
■﹃意識通信の社会学: パソコン通信のコミュニケーション﹄森岡正博 1996
■﹃聖なるヴァーチャル・リアリティー: 情報システム社会論﹄西垣通 1995
■﹃情報時代は宗教を変えるか: 伝統宗教からオウム真理教まで﹄
池上良正・中牧弘允編 1996
■﹃現代日本の宗教社会学﹄井上順孝編 1994
■﹃情報化と宗教: 現代宗教の変容﹄島薗進 1992
■﹃マスコミの新宗教像﹄井上順孝 1990
■﹃メディアと宗教運動: コミュニケーション形式と宗教の指向性を考える﹄
阿部美哉 1990
■﹃日本宗教の情報化の現状: 高度情報化社会における個人化と宗教﹄石井研士 1989
■﹃情報社会概念の系譜と情報化が宗教に及ぼす影響﹄伊藤陽一 1989
■﹃宗教教団のメディア利用の概況: ﹁宗教放送等の実状﹂調査報告﹄
文化庁文化部宗務課 1988
■﹃情報化社会と﹁聖なるもの﹂﹄飯坂良明 1978
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︻脚注1︼
MUD = Multi-User Domain
多人数がネットからサーバーにログインし、お互いにコミュニケーションをしたり、戦闘をしたり、一緒に仮想世界を楽しんだりするようなネットゲームの総称。
︻注2︼
"The Sacred and the Virtual :Religion in Multi User VirtualReality" Schroeder,Ralph et al.,1998 JCMC
︻注3︼
ヘヴンズ・ゲート http://www.heavensgate.com/ については、次のサイトに詳しい考察がなされている http://www.ascusc.org/jcmc/vol3/issue3/robinson.html
http://www.inform.ac/infmain.html
︻注4︼
"Cyberspace as Sacred Space:Communicating Religion on Computer Networks" O'Leary and Brasher, 1996, Journal of American Academy of Religion
︻注5︼
﹃CMCと宗教研究の視角﹄田村貴紀 1999
thanks for the interesting information
投稿者 abonaHom-web | 2010年7月15日 02:16
My pleasure:)
投稿者 kameno | 2010年7月15日 07:44