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2005年3月13日
先日は、ハイパーマーケットの明暗について書いてみましたが、今日はここ数年で大きな変化をしている文具業界について考えてみます。
個人商店が、スーパーやコンビニ、さらにはハイパーマーケットのような大型店の進出、さらにはインターネットなどによる直販の普及により、競争で負けて撤退してしまう事例は多く見られます。中間業者排除による流通の変化です。
文房具屋さんも同様です。
思い返せば、学校の周りなどにいくつか文房具屋さんがあったのですが、今はほとんど店舗を見かけなくなりました。
どうなってしまったのでしょうか。
実は、文具業界は、他の業種と比べて独特の変化を遂げているのです。その流通の変化について、アスクルの例で考えてみます。
アスクルとは、文具・オフィス用品の通信販売で急成長を遂げている会社ですので利用されている方も多いでしょう。
https://www.askul.co.jp/
アスクルの﹁売り﹂は、社名の由来となった、注文した商品が翌日届く︵明日届く=明日くる︶ということなのですがであるが、東京・横浜・大阪などでは、なんと注文当日に届いたりします。
しかも2500円以上であれば無料配送されます。
アスクルの母体はPLUSであり、自社製品の通信販売がそのスタートとなっていますが、次第に取り扱い製品をライバル会社の製品にまで広げ、そればかりでなく食品や生活雑貨など、実に約19000アイテムに及ぶようになりました。
さて、冒頭で文具業界は、他の業種と比べて独特の変化を遂げていると述べましたが、中間業者排除の観点からアスクルを見てみると他の業種と少し特徴的なことがあるのです。
具体的には、営業・配送・受付業務を外部の企業と分担しているという点です。
従来の文房具の流通の仕組は、
メーカー⇒一次卸⇒二次卸⇒小売⇒消費者
というようなものでした。
もしも、アスクルがメーカーと顧客との直接カタログ販売をおこない、
メーカー⇒消費者
という構図になると、卸と小売の排除が起こり、既存の小売店の営業を阻害したことでしょう。
けれども、文具業界では単純な中間業者排除を行うのではなく、代理店としての役割分担を提起しているのが特徴です。
http://www.askul-net.com/askul-business.html
↑こちらに、その流通のしくみが分かりやすく図解されています。
つまり、全国1600の文具小売店と提携︵エージェントと呼ばれます︶し、料金回収と訪問営業を業務委託しているわけです。この点で既存の文具小売店を共存関係としてうまく利用していることがわかります。
代理店となった小売店は、従来の顧客をに対し、アスクルの営業活動を委託して行ないます。そして通信販売の売り上げを伸ばすということが、同時に小売店の利益に繋がるという新たな関係を築きあげていったのです。
そしてアスクルへ発注された商品の代金は、再び小売店が集め、その一部が小売店の利益となる構図なのです。
まとめると、
︻顧客の新規入会からカタログ配送まで︼
顧客からの発注⇒全国100万箇所の事業所へ⇒全国1600社のエージェントへ⇒アスクルへ登録依頼 ⇒ アスクルから顧客へカタログ発送
︻発注から料金回収まで︼
顧客からアスクルへFAX・インターネットで注文⇒アスクルから顧客へ商品配送⇒アスクルから顧客へ請求書発行︵送付代行‥アスクルからエージェントへ請求⇒エージェントから顧客へ請求︶⇒顧客からエージェントへ支払い→エージェントからアスクルへ支払い
ということになります。
見かけ上は、エージェントの姿は表に現れないので、あたかもアスクルと顧客との二者間の単純な取引のように見えます。
アスクル エージェント でグーグル検索すると、大体その構図がつかめます。
http://www.google.com/search?hl=ja&rls=GGLD%2CGGLD%3A2003-50%2CGGLD%3Aja&q=%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%80%80%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%83%88&btnG=Google+%E6%A4%9C%E7%B4%A2&lr=
なお、エージェント第一号は、東京の山崎文栄堂です。
平成5年当時、ごく普通の文具店であった山崎文栄堂は、数年間赤字経営が続いており、当時設立されたばかりのアスクルと事業提携をするようになりました。周囲からは、かなりの猛反対があったそうです。
それから9年が経過し、売上はエージェントになった当初から約25倍になり、全国のエージェントの中で、トップ5の常連となっています。
新しい流通構造の変化が、単純に中間業者排除にはならずに、新たな中間業者としての枠組みの構造を生じているのが面白い発想だと思います。
オフィス用品のように、購入したいものが予め明確になっているようなものは、カタログをみながらまとめて発注する方が顧客にとって便利です。
わざわざ文具店に出向いて必要なものを購入したりする必要もない。翌日に確実に届けられるという利便性も従来の流通では考えられなかったことです。また、2500円以上で商品配送料無料ということは中小事業所にとっても発注しやすい設定となっているといえます。
文具マーケットは1.4兆円とも言え、75%が法人向けと想定され、30人未満の事業所は実にそのうちの95%。
アスクルの分かりやすい発注の仕組みは、このような顧客層にまさにうってつけだったというわけです。
アスクル側は、インターネット上のカタログに掲載するための商品企画・開発、価格決定、カタログ製作、注文受付、在庫管理、商品発送、料金回収、クレーム処理が主な仕事となりますが、コア業務を行っている社員はわずか100名余であって、その数十倍もの周辺業務要員が存在するわけです。中段で述べた構図のように、これらが有機的に結びついて一体となった運営をおこなっている訳です。
アスクルが急成長を遂げ、かつ、高い顧客満足度を得る結果となっている理由には、カスタマーズリレーションシップマネジメントを1元管理して徹底的に行っているからといえます。また、物流システムの徹底的な整備によって、注文から発送までの時間を限りなく短くすることにより当日配送をも可能としているのです。
メーカが始めた通信販売はこれまでの文具︵現在では事務用品全般、電化製品、食品、飲料なども含まれる︶流通を大きく変えました。情報技術を使うことで、何種類もの商品の仕分けを早く正確に行い、運送会社による全国翌日配送、小売店に委託した顧客対応と営業力、新しい枠組みによる効率的な流通システムの再構築によって新しい構図を作り上げています。
アスクルは、有力文具小売店をはじめ様々な業態から参加したエージェント︵代理店︶とアスクルが一体となって、互いの長所と短所をカバーし、有効な機能だけを結び合わせる共存共栄の画期的な流通システムを展開することにより成功した企業の最たる事例といえます。
以降、文具業界だけでも次々と似たような仕組みが出来上がってきました。
︻同様の主な文具企業︼
ぱーそなるたのめーる︵大塚商会︶
http://www.p-tano.com/
カウネット︵コクヨ︶
http://www.kaunet.info/
イーサプライ
http://www.e-supply.co.jp/
企業間でそれぞれの力を組み合わせて、強靭な流通のしくみを作るという流れは、今後、様々な分野で進展していくことでしょう。
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アスクルのカタログはこんなに厚い。
見ているだけでも楽しいです。
カタログが送られれくる度に、顧客の心をつかむサービスが付加されていることに驚かされています。
最近注文した発注リストが挟み込まれていたり・・・
︵注意‥決してアスクルの宣伝ではありません。貞昌院では同様のものも公平に利用しています。あくまでも先駆的な事例としての記載ですからご了承ください。︶