台風19号により決壊21河川・越水142河川に

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甚大な被害 台風19号 74人死亡 55河川で決壊 全容は不明


台風19号による豪雨で甚大な被害が出ています。今回の災害で亡くなった人は74人となり、堤防の決壊は、55河川の79か所に上っています。しかし被害の全容はまだ分かっていません。

・74人死亡 11人不明 224人けが
・堤防決壊は55河川79か所
・土砂災害 19都県で170件

(NHKオンライン 2019年10月16日配信)


台風19号による記録的大雨により、東日本を中心に広範囲の地域で浸水被害が発生しました。
被害の規模すらつかめていない地域もあり、生活再建やインフラの復旧には、相当の時間がかかることが懸念されます。
まずは、被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

 

地球の温暖化・熱帯化によって、降雨の状況が変わってきました。
台風は大型化し、ゲリラ豪雨のように局所的に集中豪雨になることも頻発しています。

日本は降水量が多い国ですので、かねてから治水政策が行われてきましたが、抜本的かつ早急に総合治水計画を見直さないといけない時期にあるのだと感じます。

今日のブログ記事の要旨
(1)治水対策は、流域係数、排水路の能力、堤防、貯水(ピークカット)などが有機的に機能する必要があり、それらを総合的に整備しなければならない。
(2)完全に被害が発生しない治水対策はありえない。
(3)国や地方自治体の発行するハザードマップを参考にして、最大の被害を想定し備えることが大切。

 

 

さて、今回の台風について、一例として、試験貯水中の八ツ場ダム(群馬県長野原町・吾妻川/利根川流域)を見てみます。
治水政策のうちの一時貯水(ピークカット)の一部分を担う施設です。

八ッ場ダムの水位は、今回の台風19号によって、満水(標高583m)に達しました。
貯水試験はは9月1日から開始され、当初は3か月かかる満水に、台風19号の降雨により一気に満水に達したことになります。

その様子は、jitensya37様のYoutubeチャンネルで前後の状況が詳細に記録されています。

 

次の写真は、7年前、2014年に私がダム水没地域で撮ったものです。⇒ 八ッ場ダムの現況

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これらは、もう見ることができない光景です。 当初2015年度に完成予定でしたが、ダムを渡る橋脚が十字架に見えるということで、八ッ場ダムの象徴とされ、当時の政権のマニュフェストなどの影響により完成が遅れました。
移転対象となった470世帯の理解があって、下流地域の洪水被害が軽減されたことを忘れてはならないと思います。

 

この八ッ場ダムに貯水された水は、満水状態を約1日維持した後、1日当たり1m以下の水面低下になる水量で一部放水され、最低水位の標高536mmまで下げられます。

すなわち、このダムの果たした一番の役割は、降雨のピークカット(一時貯留)ということになります。
ダムは、満水になった後、まだダムの上流からの流入があるわけなので、流量を調節して下流に放流する必要があるのですが、下流域で浸水被害があり、まだ排水ができていない被害箇所もあるので、浸水被害箇所の排水も最大限に行いながらの放水が求められます。

 

八ッ場ダムのある、利根川流域は、群馬県利根郡みなかみ町の大水上山(標高1,831m)から、千葉県銚子に至る、幹川流路延長322km、流域面積16,840km2の一級河川です。
その流域は、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県及び東京都にまたがっており、日本の総人口の1割が生活しています。

利根川は、これまで主な水害として宝永元年(1704)、寛保2年(1742)、元明6年(1786)、享和2年(1802)、弘化3年(1846)、明治29年(1896)、明治43年(1910)、昭和22年、昭和24年、昭和34年洪水など、何度も甚大な被害が繰り返されてきました。

 

さて、話を全体に戻します。

河川の治水対策は
・流域の流出係数を抑える(流域森林の管理、降雨がそのまま流出することを防ぐ)
・ピークカットなどの貯留施設の整備(ダム、貯留地など)
・放水路の整備
・河川の護岸工事(堤防の整備)
・河川の能力の増強(河川幅の拡充、浚渫)

などを総合的に行っていく必要があります。

どれか一つだけでは、効果は期待できず、それぞれが相互が密に連携して作用する仕組みが必要です。
また、整備コスト、必要期間なども考慮する必要があり、例えば流域全体の護岸工事、拡幅工事を上流から下流まですべて行うことは非現実的な費用と期間がかかるため、短期的な計画と長期的な計画を念入りに立てなければなりません。

住民側の対策としては、国や地方公共団体から出されている浸水ハザードマップに留意し、浸水が想定される個所は、何十年に(あるいは何年に)一度は浸水が現実的に起こりうるという覚悟で備えをしておくことが大事です。

 

↓写真は、昭和50年代の永谷川(横浜市港南区上永谷・下永谷)の氾濫。
このような氾濫は毎年のように起こっていましたが、河川整備、遊水池の整備によって、氾濫することはほとんどなくなりました。
ただし、今後氾濫の心配が無いか、というと、そんなことは言えないでしょう。

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横浜市でも、洪水ハザードマップが公開されておりますので、定期的に閲覧することをお勧めします。

 

国や地方公共団体の施策に期待すると同時に、各自の心構えも大事だと痛感します。

投稿者: kameno 日時: 2019年10月16日 11:49

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