日限地蔵尊参詣者への注意書き

貞昌院・永谷天満宮、日限地蔵尊は「神奈川県名勝・史蹟投票」で神奈川県で27位、44位で選ばれるほど有名な場所であり、近郊からの参拝客が永野小学校付近から永谷天満宮の脇を通り、上永谷5丁目を抜けて日限山に続く参道を埋め尽くしていたそうです。
特にお地蔵さんの縁日(4の付く日)には沿道には茶店も並び、賑わっていました。

そのあたりは、これまでブログで何回か触れておりますのでこちらをごらんください。

名勝史蹟四十五佳選
日限地蔵尊
高浜虚子一行の永谷村探勝

 

そんな参道の賑わいを表す高札が貞昌院に残されています。
20160117-01

 


日限地蔵尊参詣の諸賢へ

吉岡山日限地蔵尊命日の多数参詣人を目当に不徳漢詐欺賭博団なるもの密に来りて真実らしく各種参詣人に紛争し四方八方を能く見定めた上主役の一人が姦策甘言を以て諸賢を欺瞞せんと射倖心を誘発に取かかる
其所へ一味の配役(俗に言うさくら)が通りかかりの風来で手を出し衆の面前で僥倖を獲得した様に見せかけ益々射倖心の挑発に務め猫が鼠を捕う気構えをして居る
是等の点を何の理解なく我も僥倖を得んと手を出し財布をないふにし泣きの涙で帰らるる事の無い様特御注意を致します
申す迄もなく神仏を礼拝信仰するに邪気が有っては何の効果が有りません
御参りをする事は大に良い事ですが国法を犯し一儲けせんと賭博などに手を出しては折角の御参りも無駄事に存じます
鹿を逐う者は山を見ずとかや御参りの皆様は一所懸命日限地蔵尊を御信仰あらん事を切にお勧めいたします
戸塚警察署


(注釈)
射倖心=まぐれ当たりによる利益を願う気持ち。
僥倖=思いがけない幸い。偶然に得る幸運。
鹿を逐う者は山を見ず=利益を得ることに熱中している者は、他の事は顧みなくなるというたとえ。

 

この高札が書かれた時期は
1893年(明治26年):鎌倉郡警察署が戸塚警察署と改称
1936年(昭和11年):永野村が鎌倉郡から横浜市に編入

の間だと推測されます。

今も昔も、混雑に紛れて不届きな行いをするものが居たのですね。
それにしても、「財布をナイフに・・・」など、ユーモアにあふれた表現も見られますね。

投稿者: kameno 日時: 2016年1月17日 18:54

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