お寺の年末調整事務

注)本日のブログ記事は、ちょっと突っ込んだ内容となっております。お寺はそれぞれ独立の法人であり収支項目の内訳はそれぞれ異なります。
当ブログは「貞昌院についての内容」ですのでご留意下さい。


給与所得を何処からか得ている方は、年末の時期に「給与所得の源泉徴収票」をもらっていると思います。
また、従業員を雇っている法人であれば「給与所得の源泉徴収票」を作成して従業員に交付しているはずです。
今回はマイナンバー制度の実施で、ちょっと事務処理が煩雑になりました。

さて、お寺としては常識でも、意外に知られていないことですが、お寺も法人ですから当然に従業員(住職・副住職・寺族等)に給料が支払われている場合には、一般の会社と同じ所得税が課せられます。
お坊さんは税金を払わなくて良い、というのは大きな誤解であり、サラリーマンと同率の所得税の支払い義務があります。

ということで、貞昌院でも「給与所得の源泉徴収票」を発行しています。

年末調整がなぜ必要なのかといえば、副業や出費など、イレギュラーな部分を調整する必要があるからですね。
私の場合は、今年は本山の大遠忌局から給与所得(出勤日に対し1日1万円程度のの日給制)を得ましたので、その分も加味して申告しています。

それでは、なぜ 「お坊さんって、税金払わなくていいね」という誤解が生じるかというと、お寺という「宗教法人」は公益法人であり、一部の税金が免除、あるいは軽減されているということに原因があるのでしょう。
つまり、法人会計の一部は税金が免除、あるいは軽減されるといことです。

宗教法人としての宗教活動に係る収入は(地方税法72条の4(1))により
公益法人等の非課税所得 次に掲げる法人の事業の所得又は収入金額で収益事業に係るもの以外については、事業税が課されない。
( 1) 法人税法別表第二第1号に規定する独立行政法人
( 2) 日本赤十字社、商工会議所、社会福祉法人、宗教法人、学校法人、職業訓練法人等
( 3) 弁護士会等
( 4) 労働組合等
( 5) 漁船保険組合、信用保証協会、農業信用基金協会、国民健康保険組合、厚生年金基金等 
( 6) 市街地再開発組合等
( 7) 日本自転車振興会等
( 8) 中小企業総合事業団等
( 9) 外国法人で法人税法別表第二第2号に規定する法人
(10) 管理組合法人等
(11) 地方自治法第260条の2第1項の認可を受けた団体
(12) 政党交付金の交付を受ける政党等に対する法人格の付与に関する法律第8条に規定する法人である政党又は政治団体
(13) 特定非営利活動促進法第2条第2項に規定する法人
(14) 人格のない社団等

とされています。
この税金が免除、あるいは軽減されるという制度は、そのお寺の檀家さんにメリットがある制度であるということを理解いただけるとありがたいです。

具体的に、「貞昌院の法人としての収入、支出のグラフ」から説明します。
薄青色のグラフが収入項目、薄黄色のグラフが支出項目です。

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収入項目の「信施」は、葬儀、法事等で檀家さんからお預かりし寺院会計に入る「お布施」です。
これら様々な収入により寺院会計の収入が構成され、寺院の運営に資されることになります。
その使いみちが支出のグラフです。
うち、給与手当等従業員に支払われる部分が、住職など各従業員の給与となり、それぞれの給与所得者は源泉徴収により税金を払うということになります。
これが「給与所得の源泉徴収票」です。

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つまり、住職を含め従業員の個人所得には、所得税が一般のサラリーマンと同率にて課せられます。
そして、法人としての寺院会計の宗教活動に資される部分(つまり、本堂や客殿など檀家さんなどの利用に資される共有部分)については免除、あるいは軽減となっています。
これが、宗教法人の免除、あるいは軽減されることでメリットを享受するのは、お寺の檀家さんであるという理由です。

 

昨今は税金の財源を確保するために、公益法人への課税が検討されたりしていますが、公益法人への一律の課税は檀家さんにとっては税金の負担が増えることになるので、私としては賛成ではありません。
もし、公益法人への課税を行なうのであれば、一定以上の規模があり、余剰利益が相応にある法人のみを対象にしていただきたいものです。

税金に限らず、寺院を取りまく経済的な環境は、今後厳しい方向に進んでいくことでしょう。
そのような状況を見据えて、寺院運営については会計処理に関しても充分先を見据えた着実な運営が求められると感じます。

これからも気を引き締めて 寺院の果たすべき社会的責任 で提示した各項目を着実に実行していこうと考えています。


注)本日のブログ記事は、ちょっと突っ込んだ内容となっており特に収支項目の内訳は「貞昌院についての内容」ですのでご留意下さい。大事なことなので2回書きました。
注2)寺院会計の「資産の部繰入」は、この春に貞昌院で行なう予定の大きな行持のための繰入です。繰入は伽藍改修や法要費として使われ、檀家さんの負担が無いよう一時的に内部留保を増やしています。その行持については檀家さんには先月お知らせいたしました。


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投稿者: kameno 日時: 2016年1月10日 17:45

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