ミウラ折りから宇宙を観る

昨晩何気なくテレビを見ていたら、NHKの番組『爆笑問題のニッポンの教養』で三浦公亮先生が出演されていました。


三浦先生の考案したミウラ折りはさまざまな分野で応用されています。
例えば大きな紙に印刷されている地図は、どのように折りたたむかによって使い勝手が大きく変わってきます。
これを一瞬のうちにたたみ、使うときに開くことができる便利な折り方、それがミウラ折りです。


一瞬で開くことができ、畳むときも一瞬。そして、折り目を南北に合わせることもできますし、折り目が破れにくく構造上も安定しているので開いたときに読みやすい。

お守りの中に納められた経典のようなものにも応用できます。

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チューハイの缶にもこの折り方が見られます。

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キリンのサイトより引用


この缶は単に持ちやすさのために折り目がつけられているのではなく、アルミ缶のもつ「ふにゃふにゃ感」を、構造的に補うという役目も果たしています。
缶を開ける前には炭酸の圧力で折り目が出ていませんが、缶を開けると圧力が抜けてミウラ折りの形に変化します。

地図の折り方や、チューハイの缶のほかに太陽系探査衛星「はるか」のアンテナ、スペースシャトルのソーラパネル、宇宙船の構造物(PCCPシェル)としても応用されています。
宇宙に運ぶロケットの中では小さく折りたたまれていて、宇宙空間でそれを広げるというわけです。


具体的な折り方は、太陽系探査衛星「はるか」のVSOP計画に携わっていた私の弟(亀野誠二)のサイトに詳しく紹介されています。
地図をミウラ折りにしてみよう

是非紙を広げて試してみてください。


ミウラ折りに表れるパターンは、基本的に4つの平行四辺形が繰り返される「二重波形可展面」となります。
三浦先生は、円筒形の紙の筒の端を机にぐしゃりと押しつぶしたときに表れるパターンから研究を深め、ミウラ折りの原理に辿りつきました。


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(c)NHK


潰れて、一見ぐしゃぐしゃになった状態から、構造的に安定するパターンを導きだしているところが素晴らしいですね。
誰でも日常的に見る何気ない現象の中から着想しそれを発展させるという発想力の賜物といえます。
しかし、当初はその有意性について気づくものはほとんどいなかったそうです。


20年以上の時を経て缶のデザインに応用され世に出されるきっかけとなったのも、開発していた東洋製罐の技術者が研究室に置かれていたミウラ折りの紙の筒をみたことによるものです。
試行錯誤を経て「ダイヤカット缶」として製品として世に出されることとなりました。
それにしても、日本の技術力は凄いものです。
一度作った折り目を再び折り返す伝統的な「折り紙」の手法を円筒形の缶に応用し、量産化することを実現したのですから。


チューハイの缶には、隠されたいくつかの数学的なトリビアもあります。

・缶につけられた菱形のパターンは一周いくつになっているか。それは何故か。
・缶を開けたときに折り目に沿って折りたたまれるが、印刷された模様が歪まないようになっている。どのような工夫がなされているか。
・缶を開けたときに折りたたまれるので、容積が小さくなるはずであるが、どの程度小さくなるか。


考えながらチューハイを飲むと、良い酒のつまみになるかもしれません。

 

それにしても、大自然の中では既に何億年も前からミウラ折りの原理が使われています。
木々の新芽の中に折りたたまれた若葉、昆虫の羽根・・・・・
このような智慧の一部に、私たちがようやく気づきはじめたというところでなのしょう。


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(左)セミの羽化。貞昌院境内で撮影。羽がだいぶ伸びてきました
(右)太陽系探査衛星「はるか」。宇宙空間でアンテナを伸ばします

投稿者: kameno 日時: 2010年1月27日 12:09

コメント: ミウラ折りから宇宙を観る

応量器の鉢単も同じミウラ折りですね。
先達の残してくれたものの奥深さに、あらためて気付かされました。

投稿者 りんしょう | 2010年1月28日 09:50

りんしょうさま
鉢単は、折り目が直角になっていますので厳密に言うとミウラ折りではないですね。
特注で折り目を1.5度づつずらして折ったものを作ると展鉢作法が速くなるかもしれません。

投稿者 kameno | 2010年1月28日 13:46

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