幸せって何だろう

モンゴルを旅行中に幾つかの遊牧民の家・ゲルを訪問する機を得ました。
構造はゲル建築中 の記事をご参照くださると良くわかると思います。

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こちらのゲルには、シャープ製の太陽光発電設備が設置されていました。

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冷蔵庫が無いために、絞られた乳は火にかけられ、沸騰させます。
そこから、ウルムやバター、プリンが作られます。
訪問者に最初に振舞われるのはスーティーツアイ(ミルク紅茶)。
ボールツオゲ(揚げパンのようなお菓子)をスーティーツアイに浸していただきます。

このほか、マントウ(蒸しパンのようなもの)などを戴きました。

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天窓には干し肉が吊るされていました。
自然に燻製が出来上がる仕組みです。

これも冷蔵庫に頼らない自然の智慧ですね。
竈の熱源は、家畜の糞や薪が使われていました。

このようにしてみると、ゲルの生活はかなり地球環境に易しいものであるということがわかります。
物を必要以上に持たないという考えも、私たちには学ぶ部分が多いと思います。

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ゲルの中から、ドア越しに放牧されている羊やヤギの群れを眺めながらお茶とお菓子を戴いていきます。
贅沢な時間です。

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旅して情報から隔絶された世界にいて、改めて「幸せ」とは何かということを考えてみました。

幸せを図る指標の一つに GNH(Gross National Happiness)があります。
日本語だと「国民総幸福量」と訳されているものです。

この指標はブータンの国王が政治的判断を行う際の指標として考案したものであるといいます。
長い間鎖国されていた国であるブータンが、今後少なからず開かれた国になるにつれて、どのように展開していくのか、先進国の事例をつぶさに研究した結果、経済の発展が必ずしも国民の幸福をもたらすものではないという論理に基づいて作られました。

GNHで定められた国民総幸福度を図る指標は次のとおり。

・living standard(基本的な生活)
・cultural diversity(文化の多様性)
・emotional well being(感情の豊かさ)
・health(健康)
・education(教育)
・time use(時間の使い方)
・eco-system(環境への配慮)
・community vitality(コミュニティの活力)
・good governance(良い統治)


幸せは主観的なものですから、本人が幸せだと感じることができるのなら「幸せ」なのでしょう。
それを客観的な指標で表すのは困難なことかもしれない。

しかし、経済的な発展が経済格差や環境破壊や文化の喪失につながるというのは一理あります。


GNHとは別に、「幸せ」ってなんだろうということについて、「自分がどう感じているか」という簡単な質問による主観的判断を元にしたSWLS (Satisfaction with Life Scale)という非常にシンプルな調査があります。

右にその結果を書いてみました。

日本は残念ながら第90位。
モンゴルよりもずっとずっと下です。

「幸せ」だと感じている人が少ないのですね。

都市難民の増加や経済格差の拡大など深刻な経済問題を抱えるモンゴルのほうが、何故清潔で豊かに見える日本よりも「幸せ」を感じる人の割合が多いのか。
皆さまは何故だと思いますか?

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Nation SWLS Score
(Univ. of Leicester,2007)

DENMARK 273
SWITZERLAND 273
AUSTRIA 260
ICELAND 260
BAHAMAS 257
FINLAND 257
SWEDEN 257
BHUTAN 253
BRUNEI DARUSSALAM 253
CANADA 253
IRELAND 253
LUXEMBOURG 253
COSTA RICA 250
MALTA 250
NETHERLANDS 250
ANTIGUA AND BARBUDA 247
MALAYSIA 247
NEW ZEALAND 247
NORWAY 247
SEYCHELLES 247
ST KITTS AND NEVIS 247
UAE 247
USA 247
VANUATU 247
VENEZUELA 247
AUSTRALIA 243
BARBADOS 243
BELGIUM 243
DOMINICA 243
OMAN 243
SAUDI ARABIA 243
SURINAME 243
BAHRAIN 240
COLUMBIA 240
GERMANY 240
GUYANA 240
HONDURAS 240
KUWAIT 240
PANAMA 240
ST VINCENT AND THE 240
UNITED KINGDOM 237
DOMINICAN REPUBLIC 233
GUATEMALA 233
JAMAICA 233
QATAR 233
SPAIN 233
ST LUCIA 233
BELIZE 230
CYPRUS 230
ITALY 230
MEXICO 230
SAMOA WESTERN 230
SINGAPORE 230
SOLOMON ISLANDS 230
TRINIDAD AND TOBAGO 230
ARGENTINA 227
FIJI 223
ISRAEL 223
MONGOLIA 223
SAO TOME AND PERINI 223
EL SALVADOR 220
FRANCE 220
HONG KONG 220
INDONESIA 220
KYRGYZSTAN 220
MALDIVES 220
SLOVENIA 220
TAIWAN 220
TIMOR-LESTE 220
TONGA 220
CHILE 217
GRENADA 217
MAURITIUS 217
NAMIBIA 217
PARAGUAY 217
THAILAND 217
CZECH REPUBLIC 213
PHILIPPINES 213
TUNISIA 213
UZBEKISTAN 213
BRAZIL 210
CHINA 210
CUBA 210
GREECE 210
NICARAGUA 210
PAPUA NEW GUINEA 210
URUGUAY 210
GABON 207
GHANA 207
JAPAN 207
YEMEN 207
PORTUGAL 203
SRI LANKA 203
TAJIKISTAN 203
VIETNAM 203
IRAN 200
COMOROS 197
CROATIA 197
POLAND 197
CAPE VERDI 193
KAZAKHSTAN 193
MADAGASCAR 193
SOUTH KOREA 193
BANGLADESH 190
CONGO REPUBLIC 190
GAMBIA 190
HUNGARY 190
LIBYA 190
SOUTH AFRICA 190
CAMBODIA 187
ECUADOR 187
KENYA 187
LEBANON 187
MOROCCO 187
PERU 187
SENEGAL 187
BOLIVIA 183
HAITI 183
NEPAL 183
NIGERIA 183
TANZANIA 183
BENIN 180
BOTSWANA 180
GUINEA-BISSAU 180
INDIA 180
LAOS 180
MOZAMBIQUE 180
PALESTINE 180
SLOVAKIA 180
BURMA 177
MALI 177
MAURITANIA 177
TURKEY 177
ALGERIA 173
EQUATORIAL GUINEA 173
ROMANIA 173
BOSNIA & HERZE 170
CAMEROON 170
ESTONIA 170
GUINEA 170
JORDAN 170
SYRIA 170
SIERRA LEONE 167
AZERBAIJAN 163
CENTRAL AFRICAN RE 163
MACEDONIA 163
TOGO 163
ZAMBIA 163
ANGOLA 160
DJIBOUTI 160
EGYPT 160
BURKINA FASO 157
ETHIOPIA 157
LATVIA 157
LITHUANIA 157
UGANDA 157
ALBANIA 153
MALAWI 153
CHAD 150
IVORY COAST 150
NIGER 150
ERITREA 147
RWANDA 147
BULGARIA 143
LESOTHO 143
PAKISTAN 143
RUSSIA 143
SWAZILAND 140
GEORGIA 137
BELARUS 133
TURKMENISTAN 133
ARMENIA 123
SUDAN 120
UKRAINE 120
MOLDOVA 117
CONGO DEMOCRATIC 110
ZIMBABWE 110
BURUNDI 100


■追記
(6月19日割当の記事ですのでここに記載します)

6月19日の夕刻、モンゴルでキャンドルを灯してきました。
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これは、同じ日に行われる予定の戸塚・善了寺キャンドルナイトと同時刻にモンゴルで行うという約束を実行したものです。
キャンドルナイトの目的の一つが「便利な文明社会にどっぷりつかっている現状をいま一度振り返り、ろうそくの温かくやわらかい明かりに集まった家族、友人、皆と語り合うことによって、日常生活に還元していくこと」であるとするのなら、 SWLS指標の高い国ではあえて必要の無いムーブメントなのかもしれませんね。

投稿者: kameno 日時: 2009年6月19日 18:50

コメント: 幸せって何だろう

亀野さん、こんばんは
この「幸せ」と「ストレス」とは逆相関にあると思います。
最近は「スロ?ライフ」と言う言葉もありますが、人の営み全てに亘って、「幸せ」を実感できる環境を大変に羨ましいと感じます。大変に貴重な5日間でしたね。

投稿者 ちのしんいち | 2009年6月21日 21:53

お帰りなさいませ。

>何故・・・幸せ」を感じる人の割合が多いのか

家族の絆の強さだと思います。
日本では、なぜか近頃親子の情愛が薄いよう感じるのです。
その背景には、戦後の誤った学校教育や家庭における宗教教育の不在があるのではないでしょうか。

核家族化にともない、お年寄りが采配を振るう家庭内の様々な行事がされなくなり、目に見えないものが否定、或いは無視されることにより子供の心の豊かさがなくなる。
その子供たちが大きくなって、心の豊かさを持たない大人が子供を産む。これでは、幸福そのものの意味さえ解らなくなるのではないでしょうか。

投稿者 うさじい | 2009年6月22日 07:57

ちの様
>大変に貴重な5日間でしたね。
まさにその通りでした。

うさじい様
ゲルの中は家族の絆を強める空間でありますし、子どもたちも家族の一員として責任ある仕事を任されています。言い換えれば子どもたちがいることによって遊牧民の生計が成り立っているともいえます。そのことを実感しました。

対し、本文中追記で記載した「キャンドルナイトの目的」を敢えて示さなければならない社会もあるということも考えさせられるものがあります。

投稿者 kameno | 2009年6月23日 04:32

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