水からの伝言とニセ科学

水からの伝言 世界初!!水の氷結結晶写真集 今日も水にありがとう

著者/訳者名 江本勝/編著 IHM総合研究所/〔編〕


この本は、各方面で話題になっている本なので、ご存知の方も多いと思います。
水は人間の言葉がわかり、例えば「ありがとう」という言葉を掛け続けて氷を作ると、美しい結晶ができるということを紹介した本です。

みなさんは、この本の主張する、「ありがとう」という言葉を掛け続けて氷を作ると、美しい結晶ができるというということに、そんなことはありえないと、きっぱりと主張することができるでしょうか。


本のカスタマーレビューを見ると肯定的な意見が並んでいることに驚かされます。


実際に、かなり多くの方が、もしかしたら、そのようなこともあるのではないだろうか、と考えてしまっているような気がします。

さらに問題なのは、小学校の総合学習の授業に、この本を取り上げる事例もあるということです。
「美しい言葉は美しい氷の結晶をつくる。人間の体は多くの水分を含むから、言葉は人間の体に影響する。だから美しい言葉を使うことは大切だ・・・・・」
ここまでくると、問題を無視するわけにはいかなくなりますね。


ただの物体に過ぎない水が、言葉に反応して結晶の形を変えることは科学的にはあり得ません。
本の中に出てくる「波動」という用語も、現代ではニセ科学と分類されているものです。

以前、

血液型占いを信じますか?


で取上げた、血液型の話もそうです。
単純に、話のネタに使う程度であったり、科学的根拠が無い事を前提とした遊びであるなら問題ではないですが、就職エントリーシートに血液型の項目があったり、どの職種にはどの血液が多いからという理由で配属先を血液型で決めたり、異性と付き合う際に参考にしたり・・・・・


その他、「マイナスイオンやアルカリイオン水は体に良い」とか、「磁石を通した水は活性化する」とか、「納豆はダイエットに効果がある」とか・・・・・

科学的でないものを、なぜ私たちは科学的なものとして捉えてしまうのか。

科学的知識を持って、客観的に判断できる力は必要です。
正しい知識は、正しい判断を可能にし、日常生活の中で遭遇するさまざまなニセ科学の情報に対処することができます。


お薦めの本をご紹介します。
冒頭の本と対比してお読みくださると良いと思います。


水はなんにも知らないよ (新書)

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左巻 健男著
税込価格 : ?1,050 (本体 : ?1,000)
出版 : ディスカヴァー・トゥエンティワン
サイズ : 18cm / 182p
ISBN : 978-4-88759-528-6
発行年月 : 2007.2



【関連リンク】
疑似科学と関連領域の文献リスト

投稿者: kameno 日時: 2007年7月15日 00:08

コメント: 水からの伝言とニセ科学

> kameno先生

7月盆、お疲れ様でございます。
ご指摘のニセ科学。重々気をつけたいところです。現代的な知見からしますと、科学という言葉が付くだけで、信じるに値するものということになり(これ自体も非科学的ですが)、それでこういうニセ科学が蔓延することになります。

そうではなく、科学的知見の本質を知り、同時に科学が何を指し示すのかを限定しなくてはなりません。そうなれば、宗教や哲学などが、何故必要なのかも分かるときが来るでしょうね。

投稿者 tenjin95 | 2007年7月15日 06:08

tenjin95さん、コメントありがとうございます。
私たち一人一人も注意しないといけませんし、マスコミや教育機関でも、科学的知見を前提とした教育・放送を行ってほしいものです。
『水からの伝言』は話題になるのに、『水はなんにも知らないよ』はあまり取上げられたりしません。視聴率に繋がらないからでしょうね。
ここ数年のスピリチュアルブームもそうです。
書店には、超能力・心霊現象・UFO・・・・さまざまな超常現象に関する本が所狭しと並びます。
科学的知見の本質を習得できないまま、自然現象や社会現象についての非合理的な解釈に陥ることがいかに危険か。
tenjin95さんの仰るように、宗教や哲学についての誤った解釈についても、私たちはそれを是正していくよう働きかけていく必要があると思っています。

投稿者 kameno | 2007年7月15日 16:23

こんばんは。
水の結晶についてのいかがわしさは、私も以前に書いたことがあります。
ニセ科学に惑わされないようにしなければならないと思います。
宗教を、「科学」を利用して説く人に出会うと、多少の違和感を感じます。

投稿者 ぜん | 2007年7月15日 22:16

ぜんさん
こんばんは
以前にも書かれていらっしゃったのですね。
水からの伝言については、ホームページなどで反証がいろいろとなされてきましたが、ようやく水の結晶についてのきちんとした本が発刊されました。
こういった本がマスコミなどにも大々的に取上げられるといいのですが・・・
ましてや、宗教に関わるものとしては、科学とニセ科学についての確固たる知見を持っていないとならないですね。

投稿者 kameno | 2007年7月15日 22:36

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