言語表現はいかにして多値論理体系で説明できるか9

相関関係を考慮した多値論理真理表の作成を行いましょう。

二つの命題p及びqに相関関係が無い場合、もしくは、関係があるのかどうか分からない場合、命題の真理値を求めることはさらに困難を極めます。
しかし、実際の人間の思考を考えると、話のつじつまは合わない場合が多いし、前後の相関関係もわからない場合が多はずです。


「Aが真であること、そうでないこと」は、「Bが真であること、そうでないこと」とは次元の異なる論理なのです。
「雨が降るか降らないか」といったような同じ次元の論理であれば、簡単に検証することができますが、「雨が降るか雷がなるか」といった場合には、次元が異なると言って良いでしょう。


複雑を避ける意味から、簡単のために三値の真理表についてまず作成してみます。

pが1である確率(可能性)をa、 pとqとの相関関係をγとすると
(0<a<1、?1<γ<1)

※相関係数は、負の値をとるので、0?1の値に置き換えるため r=(γ+1)/2 とします。


表1 真偽値不明の命題がとりうる真偽値
命題 p 命題q 確 率

命題 p

命題q

確          率

1

1

ar

1

0

a(1-r)

0

1

(1-a)(1-r)

0

0

(1-a)r


当然全ての確率を合計すると、
ar+a(1-r)+(1-a)(1-r)+(1-a)r=ar+a-ar+1-a-r+ar +r-ar =1
となります。

pという命題はaだけ確からしいとし、qはpとの相関がγである(Pとqと同じになる確率がr)とうことであるから、それぞれの確率と値は次の表のようになります。

表2
命題 p 命題 q 確 率 p∧q p∨q p⊃q p≡q

命題 p

命題 q

確  率

p∧q

p∨q

p⊃q

p≡q

ar

a(1-r)

 (1-a)(1-r)

(1-a)r

 

表1と表2から、三値の真理表が次のようにできます。

表3 p∧q

p|  q

1

r

0

   1       

1

r

0

   a

a

ar

0

   0

0

0

0

表4 p∨q

p|  q

1

r

0

   1       

1

   a

1

1+am-m

a

   0

1

r

0

表5 p⊃q

p|  q

1

r

0

   1       

1

r

   a

1-a+am

1-a

   0

表6 p≡q

p|  q

1

r

0

   1       

1

r

   a

a

r

1-a

   0

0

r


 
以上の表3?6ように作ることができました。

a,rにそれぞれ任意の値を代入することによって、命題が真である確率が求められます。

この値が1となれば、真である確率が1ですから、命題自体が真、真である確率が0であれば、命題自体は偽であると確定できます。


興味深いことに、ここで算出された真理表は、前回提示した、ルカシェビッチ、ポスト、ゲーテル、ハイティングのどれとも異なっています。

ちなみに、p∨?p を計算してみると、 p=a , γ=-1 (r =0)となりますから

p∨?p= 1+ar-r = 1+0-0 = 1

となり、p∨?p が 真となる確率は1。すなわち命題は真であると考えられます。(排中律が成立する)


もう事例を考えてみましょう。

「英語が好きならば、数学が好きである」という命題があり、「英語が好きか判断不明、数学が好きかも判断不明」だとします。

英語がどの程度好きかは判断不明でありますが、真と偽の間にあることは間違いありません。
数学にしても同様です。「英語が好き」と「数学が好き」との関係はわかりません。
このような場合は、 p⊃q = 1-a+ar = 不定値 となりますから、命題の真偽不明のままよいでしょう。

確率論的に論じれば、数学と英語の相関関係の度合いによって、真偽値はそれに応じて変化していきます。

なお、今回考えた表は、三値の表ですが、b= (1-a) を追加し、mに 0、1 を代入すれば、四値以上の真理表を作成することができます。

(以下続く)

投稿者: kameno 日時: 2006年11月30日 07:52

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