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貞昌院鐘楼堂の工事は、基礎部分の工程に入りました。
レールによって、柱が広がらないように固定し、楔を打ちながら少しづつ、ジャッキアップのように鐘楼堂全体を持ち上げて行きます。
持ち上がった後、柱を支えていた束石を取り除き、その基礎部分にコンクリートを流し込んで、強固な基礎を作り上げます。
これが、永年に亘って鐘楼堂を支えてきた束石です。
鐘楼堂は、単純な構造のように見えますが、各所に伝統的な寺社構造の工夫がされています。
構造を一言で言い表すならば、鐘楼という重りを中心に据えた、ラーメン構造と言ってよいのではないでしょうか。
ただし、ラーメンといっても、豚骨ラーメンの「ラーメン」ではないですよ。
ラーメンの綴りは、Rahmen(ドイツ語)・・・すなわち、柱と梁がしっかりと接合された骨組み構造を、ラーメン構造と言うのです。
身近な例で言えば、マンションなんかの建築現場を見ると、鉄骨を溶接しながら四角く骨組みを組んでいく作り方を見ることがあると思いますが、そのような構造をラーメン構造というわけです。
現代建築では、通常、鉄骨同士をボルトや溶接でガッチリ固定しますから、その継ぎ手において相対的な回転を許さない構造になっています。地震などで、変形を起こす方向に加重がかかっても、継ぎ手部分が変形しないため、それだけ強固な構造なんですね。
その意味では、鐘楼堂の柱の構造は、接合部が木組みで、柱に貫を貫通させて作る貫構造となっていますから、厳密な意味での剛構造とはいえないかもしれません。
しかしながら、継ぎ手部分で多少の変形は許す、いわば広義のラーメン構造といっても良いのではないかと思うのです。
京都の、清水寺の舞台なんかも、広義のラーメン構造です。
接合部分において、変形を起こさないようにしっかりと固定されているほうが耐力があるのか、それとも、多少変形を認める構造(柔構造)のほうが耐力があるのか、それはどちらも一長一短があって、結論が出ない問題です。
私は、柔軟な構造で耐力を持たせる、この日本の寺社建築の素晴らしさにとても誇りを感じます。
百年もの間、ほとんど問題なく持ちこたえてきたこの構造は、今後も永い間鐘楼を支え続けていく事でしょう。
鐘楼堂の屋根の中心に鎮座していた瓦が、庭に下ろされています。
梅ばちの紋章は、天神社別当の名残であり、貞昌院の紋章でもあります。
この様な記事を拝見しますと、宮大工さんに成りたかったと思います。
投稿者 マレーネの父親 | 2009年10月10日 03:28
日本の風土の中で培われてきた木造建築の智慧に触れるたびに感心させられることばかりです。
伝承していかなければならないと思います。
宮大工を志すものが増えてくれるといいですね。
投稿者 kameno | 2009年10月10日 08:46