増上寺・寛永寺・築地市場を巡る旅(2)

横浜市仏教会主催移動研修旅行の行程で、築地市場に立ち寄りました。

平日の昼過ぎにもかかわらず、場外市場は多くの人でにぎわっています。
海外からの観光客も相変わらず多いですね。

築地市場は世界中に知れ渡る「築地」ブランドとして確固たる地位を築きあげています。
しかし、昭和10年の開業から75年以上が経過し、施設の老朽化が進んでいる状況や、建物の一部が劣化により破損して落下するなど、安全性に多くの不安があることは否めません。
また、市場の狭隘化も著しく、荷置き場所が不足して一時的に荷を屋外に置かざるを得ない状況などもあります。

物流面においても、駐車場や荷さばきスペースが大幅に不足しているため、トラックの入場待ちや渋滞が発生、さらに、混み合った場内のいたるところで荷の積み下ろしなどが行われるなど作業が非効率になっています。
さらに、目の前の晴海通り、新大橋通には大型トラックやバスなどが頻繁に行き交っているので大気汚染の影響も少なからず受けているはずです。

実際に市場内の施設を見て回ることができました。

水産棟の施設内通路、特にマグロ類売り場横の通路には昨年から路面に直径15センチ以上ある陥没穴が数多く出現しています。
その中には30年近く前に埋められた貨物列車用の線路が顔を出すほどの深い穴もあり、セメントで埋めるなどの暫定修理や再舗装で対処しています。

建築物の劣化も深刻で、雨漏りやコンクリート片の落下もあり、また、アスベストの問題も指摘されています。
築地市場移転の延期により施設の補修対策予算が来年度も2億円程度計上されているそうですが、抜本的な対策、具体的には早急な移転が必要なことは一目瞭然です。

 

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移転候補地の豊洲新市場は、土壌汚染の問題と、それに対応する汚染処理の問題が連日ニュースになっています。
盛土をして対策をしているという事実と異なる説明を行ってきたことは、市場関係者、都民はもとより、世間への信頼を損ねる大きな失態でした。

豊洲市場と築地市場との一番の大きな違いは、豊洲市場は「外気から隔絶され気温を保つことができる閉鎖型の市場」であるということ。
外気の汚染が広がらないような区分けもされているので、地下水の影響はもとより、トラックの排気ガスに日常的に晒されている築地市場よりもはるかに衛生的で清潔な建物といえます。
耐震性に関しても同じで、現状の築地市場と豊洲市場では耐震性はケタ違いでしょう。

また、豊洲市場の地下空間をもつ建物構造は、決して不適切な構造では無いと考えます。
(もし私が設計担当だとしても、地下空間構造を持つ建物にしたと思います)
しかし、そのような構造にしたのかという設計思想を、なぜ最初からきちんと詳らかに説明してこなかったのでしょうか。
そういった一つ一つの手順を省略していく姿勢では、とても信頼関係が回復されるとは思えません。
時間は限られておりますので、今後の対応をしっかりと行って欲しいものです。



豊洲市場に移転するためには衛生的な市場としての信頼を一から再構築していくしかありません。
「豊洲の新しい市場では、国際的な衛生管理手法である「HACCP(ハサップ)」に準拠しており、ここに流通する食品は一度も外気にさらされることなく仲卸から購買事業者の元へと届く」ことを改めてアピールし、それをきちんと運用、衛生管理が徹底されていることを日常的に情報公開することが最低限必要でしょう。


さらに、2020年に予定されているオリンピックとの絡みがこの問題をさらに複雑なものとしています。
築地市場移転の理由の一つは施設の老朽化というものでありますが、もう一つは環状2号線の建設が絡んできます。
この道路は元々何十年も前から都市計画決定されていた道路でしたが、オリンピックの重要な交通路として建設が急がれることとなりました。
築地市場に隣接した計画地には立坑が掘られ、道路工事が進められています。
周辺泥地図の案内看板にもすでに環状2号線のルートが描き込まれていますね。
老朽化の進む築地市場の移転と環状2号線の道路計画の行方に注視していく必要があります。

 

さて、世界全体を見渡すと、魚介類の1人当たり消費量は右肩上がりとなっています。国外では魚介類の消費が拡大しているのです。
反面、日本の魚介類の1人あたり消費量は“魚離れ”によりは減少しています。
このため、築地市場での取扱数量は年々減少する傾向にあります。
それゆえに築地市場の中小卸・仲卸業者は経営が厳しいところが多く、廃業に追い込まれる業者が後を絶ちません。
(帝国データバンクの調査によれば、2003年1月~2016年8月で築地市場内の企業の倒産・休廃業の件数は111に達しています)


縮小する日本国内での消費の中で、市場の経営をどのようにするのか。
問題は山積している中、一刻も早く豊洲移転問題を解決の方向に導いていただくことを願います。

 

※築地市場の移転問題に関心のある方は、是非築地市場の現状を実際の目でご覧いただくことをお勧めいたします。

投稿者: kameno 日時: 2016年10月26日 02:18

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