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今、一所懸命このブログの文章を打ち込んでいる、御馴染みのキーボードですが、左上からQWERT・・・と並んでいるために、QWERTY配列と呼ばれます。
このキーボードの歴史は、タイプライターの歴史までにさかのぼり、レミントン社が生み出した配列です。
なぜこのような配列になっているのか・・・・
これは人間工学的に最も指が疲れないように工夫されたわけでも、英文の単語の出現頻度を調べて効率の良い配列にしたわけでもありません。
驚くことに、配列を工夫して打ちやすくしするとタイプラーターを速く打ってしまうため、印字アーム部分が絡み付いてしまうのを防ぐよう、わざわざ打ちにくいように配列してあるのです。 (注1)
便利なタイプライターは生活・仕事上で重要な位置をしめ、一般社会に普及していきます。
時代はやがて、タイプライターからコンピューターへと移り変わり、機械的に印字アームが絡みつくという制約が無くなりました。
打ち辛いQWERTY配列は廃れてしまったでしょうか????
答えはもちろんノーですね。
実は、タイプライターからコンピューターへの転換期には、 Dvorak Simplified Keyboard のように、効率的で打ちやすい新しい配列のキーボードが幾つも生み出されていました。
しかしながら、結局デファクトスタンダードとして残ったのは、QWERTY配列キーボードだったのです。
ここで、QWERTY配列キーボードの歴史を改めて振り返ってみましょう。
1867年 Christopher Latham Sholes と Carlos Glidden, Samuel W.Soule らが ABC 順にキー配列したタイプ式ライティング機を特許申請。
1867年 James Densmore が加わり、キー配列を、印字棒の絡み合いがなるべく少なくなるよう研究し、現在の4段 QWERTY配列に近いものが出来上がった。
1873年 QWERTYキー配列を採用したE・レミントン社のレミントン機が発売された。
1873?1880年代初めには、QWERTY 配列のキーボードは、米国で 5000 台程度の普及であった。
1872年 テレタイプ機の基礎となった電機回転式印刷装置が登場し、印字棒がからむ問題は回避される機械が開発された。このころ、ハモンドやブリッケンズダーファーのタイプライターは、Idealキーボードのように、QWERTYよりも打鍵しやすいキー配列を採用していた。
1880年代 タイプライターブームにより、QWERTY に対抗するキー配列が数多く提案されていく。
1880年代後半 キー入力として、それまでは数本の指で打鍵していたが、10 本の指を使う「タッチタイピング」が出現。タッチタイピングの習得手段として、QWERTYキーボードが広く使われだした。
1890年代 タイプライター産業は、国際標準として、 QWERTYキーをもったタイプライターを事実上標準化した。
1936年 ワシントン大学の August Dvorak 教授により、打鍵効率が格段に向上した DSK配列を開発・特許を取り普及に努めるが、すでにQWERTキーボードの勢いをとめることができなかった。
1970年代 コンピュータの出現により、業界紙の中で QWERTY を捨てる呼びかけがあったにもかかわらず、QWERTY は相変わらず使い続けられた。
このような現象は、「ロックイン」「スイッチングコスト」「サンクコスト」というキーワードで答えを見出すことができます。
キーボード入力は、習熟を必要とする入力装置ですから、これを、サンクコストの観点から見てみると、
「サンクコスト」とは、ある程度早く入力できるようになるために費やすトレーニングコスト といえます。
このコストは、一度投資してしまったら、回収不可能な費用でありますから、一度使い始めたキーボードに対して費やされたサンクコストの膨大さを考えると、それまで慣れしたしんで使っていたキーボードを放棄して、新しい配列のキーボードに乗り換えることに、大きな抵抗を感じます。
従って、タイプライターからコンピューターへの転換期にあたって、たとえ機械上の制約から解き放たれたとしても、依然として「わざと使いづらくした」キーボードを使い続けることになるわけです。
「ロックイン」とは、その製品の他に、互換性がないような技術や製品のことを指します。
ある製品を導入して、その後ライバル製品が現れたとしても、いまさら新しいものに切り換えることが困難になってしまう現象であり、これによって消費者が不利益を被る場合も多々あることでしょう。
「スイッチング・コスト」は、今使っているものから、新しい製品に切り換えるのために費やされる費用をいいます。スイッチング・コストが高くつくのであれば、消費者は他の製品にたやすく乗り換えることはできません。
これらの足かせは、製造業者・導入企業・タイピストそれぞれにどのような影響を与えているかを考えてみます。
(1)製造業者
どのような配列のキーボードを製造するかを検討する段階で、需要の多い、一番普及している種類のものを選ぶことでしょう。一度 QWERTY配列に決定したら、別の型のタイプライターに転換するためには多少なりともコストがかかってしまうし、売れるかどうかも不明確でリスクが大きい。
(2)導入企業
一番普及している配列のキーボードを導入すれば、タイピストが幅広く、安価に募集できる。逆に、マイナーなキーボードを採用すると、キー入力の習得のために、教育をしなければならないかもしれない。トータルとして、多少入力効率が悪くても、タイピストの確保や、教育の間作業が滞ることなどを考慮すると、一番普及しているものを採用するのが当然でしょう。
(3)タイピスト
特定の配列に慣れてしまった場合、仮に他のキー入力へ変更するためには、トレーニングする時間と労力がサンクコストとして余計にかかってしまう。したがって、初めに習得する際には、より広く通用する、つまり一番普及している方法で習得しようと考えます。
結果として、三者とも最も普及しているキー配列を促進する方向に進んでしまうのです。
このように、キーボードのような、今まで使っていた製品から別の製品に替える際に必要となるコストは、新規投資費用、サンクコストの他に、リスクなどの心理的費用等がかかることになり、これらの費用(すなわち、スイッチングコスト)が大きければ大きいほど、今まで使っていた製品から他のものへ移ることが困難となります。
このように、一度選択されてしまうと、それ以降の変更が困難になり、将来の選択肢が規定されてしまうこと、これがロックイン効果であり、QWERTY配列が未だに幅広く使われていて、他の優れた配列のキーボードを排除してしまうメカニズムなのです。
世の中、全てが効率的な方向に進むものとは限らないのですね。
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注:⇒この「打ちにくくすることを意図した・・という表現には異論もあります
http://www.sixnine.net/keyboard/qwerty.html
http://homepage1.nifty.com/cura/oya/kb_arguments.html
などを併せてご参照ください。
けれども、少なくとも、最も効率的なキー配列でないはずです。
さらに言及すれば、日本語の「ローマ字入力」をする場合には、とてつもなく入力し辛いキー配列であることは間違いありません。
もしかしたら、打鍵速度を抑制したというより、単純に遊び心で適当にキー配列を決めたのかもしれません。
だって、タイプラーターって単語をキーボード上でたどってみてください・・・・TYPEWRITER・・・・・全部上の段ですよ。(88へぇ)
>「ロックイン」「スイッチングコスト」「サンクコスト」というキーワードで答えを見出すことができます
いつも実に理路整然として、解りやすいお話有難うございます。この間の「六曜」の話も、いかにも自分で調べたかのような顔をして皆さんに語ります。(最後には種明かしをしますが)
キーボードの配列についても、打ちにくくしていると言う話は聞いたことがありますが、なぜそれが改善されないのかまでは考えませんでした。
私のようにブラインドタッチもできない者とっては、打ち間違えが度々ありますので弱ります。
この間の傑作は「版画先手適齢期だ」です。
「花が咲いていて綺麗だ」が正解。
これでまた一つ薀蓄がが増えました。
投稿者 usagi | 2005年3月 3日 05:54
拙僧も、このキーボードの入力しにくさには、いつも閉口させられておりました。随分馴れましたが、思いつきをそのまま文章にしたい拙僧としては、この入力しにくさで思考が中断されますので、困っておりました。
SFみたいな話で恐縮ですが、頭で考えたことを文章にしてくれる入力デバイスが出来ないかなぁ……と切に願うのです。今以上に駄文が出来る可能性は、勿論大いにあるでしょうけれども。
投稿者 tenjin95 | 2005年3月 3日 06:10
usagiさん、コメントありがとうございます
日本語入力の場合は、ローマ字入力とかな入力があり、きっと熟練するとカナ入力のほうが速いのでしょうが、私はとても無理です。
かな入力を強いられた場合は人差し指一本で打つしかありません。
やはり、慣れた入力方法が一番ですね。すっかりロックインされています。
tenjin95さん
思考中断は本当にいらいらしますよね。
今回のテーマである入力しやすいかどうかは別問題として、街中で使うと注目されるキーボードを紹介します。
http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/0404/13/news022.html
投稿者 kameno | 2005年3月 3日 11:21
>1872年 テレタイプ機の基礎となった電機回転式印刷装置が登場し、印字棒がからむ問題は回避される機械が開発された。
Jean Emile Maurice Baudotの『Système de Télégraphie Rapide』(République Française Brevet d'Invention, No.103898 (Juin 17, 1874))のことでしょうか? でもこれ、1874年だし、キーボードはピアノの白鍵みたいなのがたった5つ並んでるだけだから、やっぱり違うかな? 私個人としては、テレタイプの発明はDonald Murrayの『A New Page-Printing Telegraph』(Transactions of the American Institute of Electrical Engineers, Vol.18, pp.7-29 (January 25, 1901, reported by William B. Vansize))に帰せられると考えているんですが…。
>1890年代 タイプライター産業は、国際標準としての QWERTYキーをもった上方前面印字機械を標準化した。
『The "Daugherty Visible" Typewriter』(Scientific American, Vol.122, No.23 (June 8, 1895), p.357)に始まるフロントストライク式タイプライターのことですよね。でも、それを「標準化した」なんて話は初耳なんですが、よければ典拠をお教えいただけませんか?
>1970年代 コンピュータの出現により、業界紙の中で QWERTY を捨てる呼びかけがあった
Robert Parkinsonの『The Dvorak Simplified Keyboard: Forty Years of Frustration』(Computers and Automation, Vol.21, No.11 (November 1972), pp.18-25)と、それに前後してComputers and Automation誌で張られた一連の論陣ですね。ただ私個人は、1970年代では時すでに遅しだった(実は1930年代でも遅かった)と考えています。この辺に関してhttp://slashdot/~yasuoka/journal の「コンピュータのキーボードはなぜQWERTY配列なのか」に少し書いてみましたので、よければごらん下さい。
>TYPEWRITER・・・・・全部上の段ですよ。
1880年代の商標は「Type-Writer」ですから、ハイフンも同じ段にないと話が合いません。このネタは後世の人が考えたジョークでしょう。
投稿者 安岡孝一 | 2005年3月 3日 11:36
すみません、URLを間違いました。http://slashdot.jp/~yasuoka/journal です。どうもすみません。
投稿者 安岡孝一 | 2005年3月 3日 14:05
安岡さん、はじめまして。
専門に研究されている方と拝察いたします。貴重なご意見をありがとうございます。歴史上の記述に何か間違いがあればご指摘ください。
1つ目は、James Field Smathersの開発した電動タイプライターのつもりで書きました。
2つ目は、まず、「上方前面印字機械」とは、活字の付いたハンマーがキーボード上方前面のカーボンを打つという、いわゆる普通の構造のタイプライターという意味で用いています。
安岡さんがブログで指摘されているように、Typewriter Trustによって、Remington・Caligraph・Smith-Premier・Yost・Densmoreの5社が Union Typewriter Company の傘下に入ることと、CaligraphがQWERTY陣営に加わることにより、QWERTY配列の上方前面印字式が「デファクトスタンダード」(ISOやJISなどの標準化機関等が定めた規格ではなく、市場での利用数による事実上の標準)となった(した)ことを指します。
3つ目は、そうですね。時既に遅しだったのでしょう。
まさに、ロックインが働いたからに他なりません。
4つ目は、商標についてはType-Writerと書いてあったりTypewriterと書いてあったり様々な説があるようですが、商標登録について原簿で確認することは出来ませんでしょうか。
いずれにせよ、キー配列を無作為に考えたのか、何らかの法則にしたがって並べたのかは藪の中ですが、TYPEWRITERというキーが全て一列に並んでいることは、開発者は少なからず意識していたのだと思います。
まったく気付かずに製品の開発をしたということは、ちょっと考えられません。
最後に、QWERTY配列は、人間工学的に最も指が疲れないように工夫されたわけでも、英文の単語の出現頻度を調べて効率の良い配列にしたものでも無いということだけは確かです。
(日本においてはローマ字入力で、さらに使いにくくなっています)
したがって、後世にトロンキーボードのような、人間工学的に研究されて開発されたキー配列や、日本語入力に最適化された親指シフトなどが出現したりしているのに、それらが広まらなかったという「ロックイン」についての顕著な例だと考えています。
投稿者 kameno | 2005年3月 3日 17:50
> kameno 先生
拙僧のご教授いただいたこの記事、以前に見て知ってました。これQWERTY配列なんでしょうか……
あと気になっていたのはペナペナで捲いて持ち運ぶことができるキーボードでしたが、どれほどのものだったんでしょうか。誰か人柱になった方おられますか?
投稿者 tenjin95 | 2005年3月 3日 22:19
>拙僧のご教授いただいたこの記事、以前に見て知ってました。これQWERTY配列なんでしょうか……
レビュー記事を見つけました。間違いないですね。
ただし、会社さえその気なら配列はソフト的にいくらでも変更できそう。
http://park16.wakwak.com/~ex4/kb/main_vkb.htm
もう一つ、画期的な新着キーボードです。
是非、人柱に・・・
「固定ポジションで指先だけで入力できるエルゴノミックキーボードが登場」
http://akiba.ascii24.com/akiba/news/2005/03/02/654601-000.html
巻けるキーボードは個人的にはあまり好きにはなれません。
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/991211/etc_fold2000.html
投稿者 kameno | 2005年3月 3日 22:47
>1つ目は、James Field Smathersの開発した電動タイプライターのつもりで書きました。
『IBM Electromatic』の礎を築いたJames Fields Smathersは1888年の生まれで、最初の特許は、私が知る限り、1912年4月18日出願の『Type-Writing Machine』(U.S.Patent No.1077005 (October 28, 1913))です。1872年にSmathersが電動タイプライターを開発できたとは思えません。
>2つ目は、まず、「上方前面印字機械」とは、活字の付いたハンマーがキーボード上方前面のカーボンを打つという、いわゆる普通の構造のタイプライターという意味で用いています。
いわゆる「フロントストライク式」ですね。
>CaligraphがQWERTY陣営に加わることにより、QWERTY配列の上方前面印字式が「デファクトスタンダード」となったことを指します。
それは変です。1890年代のCaligraphはフロントストライク式のタイプライターを作る技術がなく、全てアップストライク式(下方印字)です。そもそもTypewriter Trustは、1890年代にはフロントストライク式のタイプライターを開発できていません。でも1890年代においては、フロントストライク式の『Daugherty』と『Underwood』は、合わせても年間2000台程度しか売れておらず、Typewriter Trustに比べて売上台数が10分の1もありません。そんな中で、1890年代にフロントストライク式が「デファクトスタンダード」になったなんて、私には信じられません。
>4つ目は、商標についてはType-Writerと書いてあったりTypewriterと書いてあったり様々な説があるようですが、商標登録について原簿で確認することは出来ませんでしょうか。
私もまだ「原簿」は見つけきれていません。「Type-Writer」の広告なら、Scientific Americanの1882年9月9日号p.172とか、Bengough's Cosmopolitan Shorthand Writerの1882年12月号の裏表紙裏とか、あちこちにあるんですけどね。
投稿者 安岡孝一 | 2005年3月 4日 00:08
マルチメディア・インターネット事典
デジタル・クリエイターズ連絡協議会
(c)Digital Creators Conference
URL( http://www.jiten.com )
には
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●1871年
◎James Field Smathers、電動タイプライターを開発
http://www.jiten.com/dicmi/docs/k28/21952s.htm
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の記述もあり、いつの時点で開発されたのかは、私ももう一度精査します。
このトピックスの本義は、
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He did this using a study of letter-pair frequency prepared by educator Amos Densmore, brother of James Densmore, who was Sholes' chief financial backer. The QWERTY keyboard itself was determined by the existing mechanical linkages of the typebars inside the machine to the keys on the outside. Sholes' solution did not eliminate the problem completely, but it was greatly reduced.
http://home.earthlink.net/~dcrehr/whyqwert.html
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のように、印字棒が絡まらりにくい機種が開発されているにも拘らず、QWERTY配列がデファクトスタンダードに向かったという理由を考察しているので、James Field Smathersの史実については分かり次第、必要であれば別のトピックスで考えることにします。
>1890年代にフロントストライク式が「デファクトスタンダード」になったなんて、私には信じられません。
1890年代当初はそうかも知れませんが、そこからのQWERTYキーボードを採用したタイプライターの数の推移を見れば、この囲い込みが主因でデファクトスタンダードになった事は言えると思います。
投稿者 kameno | 2005年3月 5日 10:27
>1890年代当初はそうかも知れませんが、そこからのQWERTYキーボードを採用したタイプライターの数の推移を見れば、この囲い込みが主因でデファクトスタンダードになった事は言えると思います。
いえいえ、そういう意味ではなくて。
1890年代に「QWERTY配列」がデファクトスタンダードになった、というのはまず間違いないと考えられますが、「フロントストライク式」(上方前面印字の機械式)はデファクトスタンダードになったわけではない、と申し上げているのです。その意味で
>1890年代 タイプライター産業は、国際標準としてのQWERTYキーをもった上方前面印字機械を標準化した。
の「上方前面印字機械」の部分は変だと考えるのですが、いかがですか?
投稿者 安岡孝一 | 2005年3月 5日 11:20
ご指摘ありがとうございます。
確かに「上方前面印字機械」の部分は修正したほうがいいですね。
「上方前面印字機械」を「タイプライター」に、「標準化」を「事実上の標準化」にします。
投稿者 kameno | 2005年3月 5日 11:59
どうもご対応ありがとうございます。では、フロントストライク式に関連して、もう一件。
>印字棒が絡まらりにくい機種が開発されているにも拘らず、QWERTY配列がデファクトスタンダードに向かった
の「印字棒が絡まりにくい機種」ってのは、具体的に何を指しておられるのでしょうか?
と申しますのも、Sholesのタイプライター(アンダーストライク式)は、そもそも印字棒がからんだりしにくい構造になっていて、しかも、印字棒とキー配列の間に自由度があります。むしろ後から開発されたフロントストライク式タイプライターの方が、アームのジャミングが起こりやすく、しかもアームとキー配列の関係が固定的です。この点に関してhttp://slashdot.jp/journal.pl?op=display&uid=21275&id=280542 の「QWERTY配列に対する誤解」に多少書いておきましたので、よければごらん下さい。
投稿者 安岡孝一 | 2005年3月 5日 16:09
>の「印字棒が絡まりにくい機種」ってのは、具体的に何を指しておられるのでしょうか?
おっしゃるとおり、
Sholes' solution did not eliminate the problem completely, but it was greatly reduced.
とありますから、キーの絡みはかなりネックになっていて、Sholesによりかなり改善されたと見ています。
つまり、
初期のタイプライターは(指数本で打っていたにも拘らず、バーの機構が成熟しておらず、絡みの問題があった)
↓
1867年 James Densmore が加わり、キー配列を、印字棒の絡み合いがなるべく少なくなるよう研究し、現在の4段 QWERTY配列に近いものが出来上がった。
↓
Sholesによりかなり絡みの問題は改善されてた。
⇒ほぼ、この時代以降の機種はバー絡みの呪縛から解き放たれているはずです。
(QWERTYの開発のきっかけとなった絡みの問題はほぼ無くなった)
↓
しかし、QWERTY配列がデファクトスタンダードに向かった。
(絡み合いの問題が少なくなった以上、さらに打ちやすいキーボードが普及しても良いのに。さらに、電子化によって絡み合いの問題は完全に消滅しているのに・・・)
それは何故だろう。というのが、今回のトピックスの論点です。
投稿者 kameno | 2005年3月 5日 17:07
>QWERTYの開発のきっかけとなった絡みの問題はほぼ無くなった
私はむしろ「QWERTYによって絡みの問題をSholesが解決しようとした」とする説そのものが、August Dvorakのデッチ上げだ、と考えます。ですから
>絡み合いの問題が少なくなった以上、さらに打ちやすいキーボードが普及しても良いのに
キー配列を「絡み合いの問題」に関連付けて考えてしまうと、誤った答を導き出してしまうのではないか、と危惧します。というか、Dvorak自身もその点で失敗してしまったので、Dvorak配列を普及させられなかった、というのが、「私個人のうがった見方」なんですけどね。
投稿者 安岡孝一 | 2005年3月 5日 18:24
Dvorak陣営もQWERTY陣営もお互いに情報合戦を繰り広げていたのかもしれませんね。
そういう意味では結論は出ないかもしれません。論拠とするものがデッチあげと言われればそれまでですから。
最近は、さらに面白い現象が発生しています。
電子辞書が出始めの数年前は、キー配列がABC順のものがかなりの割合であった(大多数だった)と思うのですが、現在では殆んどQWERTY配列です。
http://www.sharp.co.jp/products/menu/pc_mobile/edictionary/
電子辞書のキーボードこそ、指一本で打つものでありますが、見事に囲い込みされてしまい、私たちは無条件反射的に思考がQWERTYに固まってしまっているのでしょう。
ここまで来ると、どれほど優れた入力装置が開発されたとしても、今のキーボードに取って代わるのは相当困難だと思われます。
投稿者 kameno | 2005年3月 5日 23:08
QWERTY配列が使われだして100年以上経ち、コンピュータのキーボードでも使われている現状を考えると、どの配列が良い、悪いという視点ではなく、もっと別の方法でないと変わらないのだろうと思います。
例えば、Optimus keyboardというのが提供されつつあります。
http://www.artlebedev.com/portfolio/optimus/
これが普及すれば、ユーザが使いやすいと思う配列を選べるようになると思います。
価格はかなり高いと思いますが、キーを入力する以上の使い方やメリットが生まれれば、普及するかもしれません。
私自身はもっと安価なもので、初心者が使いやすい補助的なものが普及すればと思っているのですが、いずれにしても別のものが普及するかは本当に難しいのかもしれませんね。
投稿者 Gekkao | 2005年8月 9日 00:02
Gekkaoさん、コメントありがとうございます。
ユニークなキーボードですね。
自分専用に完全にカスタマイズできるという点が素晴らしいです。
自分専用の配列データを持ち歩いて、常に、自分専用のキーボードに早変わりしてくれるのであれば、配列の問題は解決できるかもしれませんね。
投稿者 kameno | 2005年8月10日 06:09