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| 大賀蓮の立葉 »
2025年4月26日

近年、急速に日常生活におけるキャッシュレス決済を利用する機会や場所が増えていることを感じます。
日本におけるキャッシュレス決済比率は、2023年度には39.3%に達し、その比率は確実に増えています。
普段の買い物や交通機関の利用において、簡単に決済ができる仕組みは本当に便利です。
︵ただし、便利なゆえに、危険性も併せ持つということを常に心しておく必要はあります︶
さて、このように日常的に欠かせなくなりつつあるキャッシュレス決済ですが、寺社のような宗教法人における決済を導入しようとする際には、どのような問題があるのでしょうか。
例えば、キャッシュレス決済の中には、﹁資金移動業﹂と﹁前払式支払手段﹂といった異なる属性のお金がが混在している場合があり、支払者がそのうちどちらの属性のお金で支払うかという使い分けがなされていないことや、そもそもキャッシュレス決済を行うことで、本来非課税とされるべき宗教行為が課税対象になるのではないかという懸念などです。
これに対し、金融庁法人課税課は
﹁賽銭をキャッシュレス対応にして事業者への手数料が発生したとしても、賽銭の本質ともいえる喜捨の心が変わらないのであれば、課税されません﹂と説明します。ただし﹁賽銭にアミューズメント的な形態がとられているなど、信心を逸脱するようなものであれば、収益事業にあたる可能性もあるので、その場合は実態を確かめなければなりません﹂
︵出典‥https://www.zeiri4.com/c_1076/n_869/︶
という見解を提示し、さらに、金融庁では 2024年12月24日に金融審議会 資金決済制度等に関するワーキング・グループ討議を行い、次のような報告書を出しました。
金融審議会 資金決済制度等に関するワーキング・グループ報告︵案︶金融審議会﹁資金決済制度等に関するワーキング・グループ﹂︵第7回︶
◼ 前払式支払手段を通じた寄附を可能にすることは、現金以外での寄附のニーズに応えるものであり、我が国における寄附文化の醸成にも寄与し、公益増進の観点から政策的意義が認められると考えられる。
◼ 他方、前払式支払手段を通じた寄附を可能とする際には、為替取引規制の潜脱防止の観点の他、寄附スキームを悪用したマネー・ローンダリングや詐欺等のリスクにも留意すべきである。このため、全ての寄附について、前払式支払手段を用いることを認めることは適切ではなく、寄附金受領者やその金額に一定の制限を課した上で認めることが望ましいと考えられる。
◼ まず、寄附金受領者の範囲については、これまで寄せられてきた要望内容や、為替取引規制の潜脱防止の観点に鑑み、国・地方公共団体や認可法人等に限定することが考えられる。なお、所得税法上の寄附金控除の枠組みを参考に、さらに対象を広げ、公益法人への寄附等にも前払式支払手段の利用を認めることも考えられるが、この点については、ガバナンス強化のための公益法人等制度改革の状況等を踏まえつつ、中期的に検討することが望ましいとの意見があった。
◼ また、前払式支払手段で受領可能な1回当たりの寄附金上限額については、個人の年間寄附金額は1万円未満が過半を占めているとの調査等を踏まえ、1回当たり1~2万円とすることが考えられる。
◼ 今後、前払式支払手段を通じた寄附が適切に行われるための枠組みの具体化については、金融庁においてAML/CFTや詐欺防止等の観点から検討していくべきであるが、ギフトカードを用いた詐欺の事案等が多発している状況を踏まえると、番号通知型前払式支払手段を用いた寄附を認めることは適切ではないと考えられる。また、何者かが寄附金受領者になりすまして寄附金を募るリスクについては、発行者による確認を通じて対応し得ると考えられる一方で、前払式支払手段の加盟店管理はクレジットカードに比して脆弱であるとの指摘もあり、十分な対策が講じられるべきである。なお、寄附も含め、前払式支払手段の利用範囲については、キャッシュレス決済サービスの利用者にとってわかりやすい形で周知していくことが重要である。
また、同じ時期に、PayPay株式会社は、次のようなプレスリリースを出しています。
2024年12月23日 PayPay株式会社
お賽銭などで﹁PayPay﹂の利用が可能に
~初詣や受験時期で増加する参拝者の混雑緩和にも寄与 ~
PayPay株式会社︵以下、PayPay︶は、2024年12月より神社や寺院などへ行かれた際のお賽銭などに、キャッシュレス決済サービス﹁PayPay﹂が利用可能になることをお知らせします。これにより、PayPayユーザーは、参拝する際、現金を用意することなくご自身で金額を設定し、お賽銭などに﹁PayPay﹂を利用する︵※1︶ことができるようになります。
※1本人確認︵eKYC︶を完了している方が対象となり、﹁PayPayマネー﹂のみ利用可能です。お賽銭などの金額に対して﹁PayPayポイント﹂の付与およびPayPayステップは対象外となります。
ということで、徐々に寺社におけるキャッシュレス決済の制度整備や環境整備も進みつつあるようです。
まだまだ、宗教行為との住み分けや、決済手数料の問題、心理的な障壁など、解決するべき問題は多いですが、特に海外からの観光客や、キャッシュレス決済に抵抗感を持たない若者が神社仏閣を参拝する際には、参拝者の利便性が向上する利点もあります。
今後、確実にキャッシュレス決済が当たり前の世の中に進んでいく中で、寺社はどのように対応するべきなのか、今のうちに考えておく必要がありそうです。