・手洗い、うがいを日常的に行う ・マスク着用の習慣がある ・ハグや握手の習慣がない ・公共の場で私語の会話をあまりしない ・下足の習慣=家の玄関では靴を脱ぐ |
新型コロナウイルス感染症︵COVID-19︶による死者数が欧米各国にくらべて日本が極端に少ないのは、医療機関の力も大きいほか、冒頭に挙げた日本でこれまで培われてきた習慣が大きな要因になっていると思われます。
欧米各国では、外出先で手洗いができる場所は極端に少ないし、帰宅後に手洗いやうがいの習慣もあまりない。さらに靴のまま部屋に上がれば外からのウイルスをそのまま部屋の中に持ち込んでしまうことになるのです。
例えば、私たちは、朝起きたら顔を洗うという習慣を持っています。
食事、洗面、歯磨き、トイレ・・・さまざまな習慣が日本に広まった源は、禅道場で教えられ受け継がれてきた教えであるとされています。
永平寺の開祖・道元禅師の時代、13世紀の日本では、洗面する習慣は無かったそうです。
道元禅師が著された﹃正法眼蔵︵しょうぼうげんぞう︶﹄の中で、洗面がインドから伝わり中国に広がったことや、歯磨きでの楊枝の使い方、その方法、トイレの作法などが詳しく記されており、その作法が日本に広まったようです。
仏法にかならず浣洗の法さだまれり。あるひは身をあらひ、心をあらひ、足をあらひ、面をあらひ、目をあらひ、くちをあらひ、大小二行をあらひ、手をあらひ、鉢盂をあらひ、袈裟をあらひ、頭をあらふ。これらみな、三世の諸仏諸祖の正法なり。︵﹃正法眼蔵﹄﹁洗面﹂巻より一部抜粋︶
つぎに、洗手すべし。右手に灰匙をとりて、まづすくひて、瓦石のおもてにおきて、右手をもて滴水を点じて触手をあらふ、瓦石にあててとぎあらふなり。たとへば、さびあるかたなを、とにあててとぐがごとし。かくのごとく、灰にて三度あらふベし。つぎに、土をおきて、水を点じてあらふこと三度すべし。つぎに、右手に皀莢をとりて、小桶の水にさしひたして、両手あはせてもみあらふ。腕にいたらんとするまでも、よくよくあらふなり。誠心に住して、慇懃にあらふベし。灰三、土三、皀莢一なり、あはせて一七度を度とせり。つぎに、大桶にてあらふ。このときは、面薬・土灰等をもちいず、ただ水にても、ゆにてもあらふなり。一番あらひて、その水を小桶にうつして、さらにあたらしき水をいれて両手をあらふ。︵﹃正法眼蔵﹄﹁洗浄﹂巻より一部抜粋︶
上記で抜粋したほか、﹁両手に洗面桶の湯を掬って、額から両眉毛、両目、鼻孔、耳の中、顱頬︵頭から頬︶をすべて洗う。……唾や鼻水を洗面桶の湯の中に落としてはならない。……垢が落ち、油気を除ききるまで洗うのだ。耳の裏も洗わなければならない﹂と洗面の作法を詳細に著しています。つづけて﹁洗面の間に、洗面桶や杓を鳴らしてはいけない。湯水を乱暴に扱って、周りを濡らしてはならない﹂などと、洗面に際しての気配りをも教えています。
道元禅師は、身心を洗い清めて、埃や汚れを除くことが第一の仏法であり、そうすれば内面も外面も︵身心も周囲の環境も︶清浄になる、と述べています。
ただ水で洗いすすげば、それだけで清浄になる、と考えてはならないのです。
話を戻します。
日本においては、いまのところ新型コロナウイルス感染症の感染者・死者数の推移は緩やかですが、それでも確実に増加傾向にあります。
ここで如何に増加を抑えることができるか、﹁いま﹂どのように行動するかを一人一人が考えて実行することが大切です。