« 客殿廊下の工事が進行中 |
最新記事
| SZI2015年度総会報告 »
2015年2月 7日
北鎌倉駅の素掘りトンネル 崩落の危険で﹁開削﹂か
◇市は調査でもろさ指摘
JR北鎌倉駅︵鎌倉市山ノ内︶の脇にある素掘りトンネルを山ごと切り崩し、道路を拡幅する計画を市が進めている。樹木の生い茂るたたずまいは﹁緑の洞門﹂﹁北鎌倉のランドマーク﹂などと称され、観光ガイドにも載る奇観だ。市は崩落の危険性を強調する一方で四半世紀にわたり抜本的な安全対策を取らず、工事計画に関しても十分に周知しなかった。住民からは﹁景観と安全が両立する方法を探るべきだ﹂との声が上がっている。
◇トンネルは長さ約7メートル、高さ2メートル、幅2・5メートル。80年以上前に岩を掘り抜いて造られ、現在は市のほかJRや寺院、住民など複数の地権者がいる。﹁開削﹂計画が浮上したのは、昨年8月に周辺12町内会と市が開いた﹁安全対策協議会﹂。トンネルを含む岩盤を完全に崩し、高さ10メートルの擁壁で固めた上、道路を4メートルに拡幅する案だ。費用は数千万円規模という。
市道路課は﹁27年前に坑口の一部が崩れ、10年前にも調査業者から地質のもろさを指摘された﹂と理由を挙げる。一方で市は、樹木の伐採以外に対策は行わなかった。同課は﹁近年まで国有地だったため手を出せなかった﹂と説明する。
こうした中で、市と町内会長との間だけで決められ、最近になって示された﹁開削﹂の方針に、トンネルの情景に親しんできた住民は不信感を募らせる。
北鎌倉の風情を愛し、数年前に都内から移り住んだドイツ人のミヒャエル・ミュラーさんは﹁横須賀線の車窓から洞門が見えると﹃鎌倉に来た﹄という気分が高まる﹂と、ささやかな洞門の存在感を語る。
約70人の住民らでつくる﹁北鎌倉史跡研究会﹂は﹁風情が一変する﹂との危機感から、昨年12月2日までに保存を求める3372人分の署名を集め、今も1万人を目指して活動中。出口茂代表は﹁安全対策はもちろん必要だが、簡単に壊すのでなく、景観を守りながら補強するよう知恵を絞るべきだ﹂と話す。
専門家も再考を求める。日本考古学協会の埋蔵文化財保護対策委員会は1月下旬、市などに保存要望書を提出した。トンネルを含む岩場は﹁平安時代後期以来、鎌倉の北の境界とされ、中世の景観を今に伝える歴史的遺産﹂と解説。世界遺産登録を目指す市の﹁資産﹂と位置づけた。
同協会の馬淵和雄理事は﹁長い間に形成された景観を目先の判断で壊せば、町の歴史性が失われ、味気なくなる﹂と話している。
︵神奈川新聞 2015/02/07︶
貴重な史跡が消失の危機に瀕しているという残念なニュースです。
数年前︵2012年︶には、釈迦堂切通しが大規模な落盤を起こし、以後通行止めとなっています。
また、鎌倉各所に点在する﹁やぐら﹂も崩壊によりかつての姿を失いつつあります。
※やぐらとは、石壁をくりぬいて造られたお墓です。やぐらの中には羨道、供養壇などが設けられています。
鎌倉の岩盤は堅固なものではなく、砂岩や凝灰岩で出来ています。
例えば、かつて採掘されてた﹁鎌倉石﹂は、黄褐-褐-青灰色の凝灰質粗粒砂岩や、軽石に富む凝灰質砂岩から成っており、加工が容易で耐火力がある反面、柔らかく耐候性が弱いものです。
よって、根を張る樹木が生い茂ると、岩はたちまち風化が加速していってしまいます。
寺院の集まりでの話題に良く登ることが、かつての鎌倉では、根を張る樹木を生い茂らすことは無かったということです。
鎌倉を形成する地盤の特徴を良く理解していたということでしょう。
しかし、近代では植林が進められ、また、自然保護=樹木が生い茂ること=自然を残しているという間違った概念が定着してしまいました。
さらに、樹木を管理、伐採することが行なわれないことから、鎌倉の山々は鬱蒼とした樹木が生い茂る状況となっています。
このようなことは、かつてはありえなかったのです。
樹木が生い茂ることにより、木の根に依る岩盤の侵食が急速に進み、冒頭のような崩落がたびたび起こるようになってしまいました。
貴重な文化財を含め、鎌倉一帯のかつての姿を取り戻すために、
︵1︶特に切通しややぐらのある場所には高木となる樹木を植えない。生えていれば伐採する。
︵2︶山の管理を徹底する
︵3︶崩落が進む切通しややぐらについては、進行してしまっている崩落を食い止める意味で地盤改良剤を施す。
などが必要な対策でしょう。
北鎌倉の素掘りトンネルの事例のように、安易に切り崩してしまうのはもってのほか。単なる文化財の破壊です。
また、釈迦堂切通しで現在行なわれている通行止めも、樹木の生い茂る状況を進行させるだけの愚策と考えます。
どちらも上部の樹木を整理し、地盤改良剤などで保存する対策を早急に行うことを望みます。