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2013年8月 4日
Yahoo!ニュースに次のような記事が掲載されていました。
ユーミンがジブリに合う理由 歌詞の世界観と声の質と専門家
7月20日に公開され、大ヒットしている宮崎駿監督の映画﹃風立ちぬ﹄。その主題歌に起用されているのが松任谷由実の﹃ひこうき雲﹄だ。彼女自身も﹁ジブリっぽい﹂と語るこの曲は、同映画をさらに魅力的なものにしている。ユーミンとジブリといえば、1989年公開の﹃魔女の宅急便﹄での﹃ルージュの伝言﹄、﹃やさしさに包まれたなら﹄がある。このときも、映画の世界観と曲が見事にマッチした。どうして、ジブリ作品にユーミンの曲はこれほどまでに合うのだろうか?
音楽評論家の富澤一誠さんに聞いた。
︵NEWS ポストセブン8月3日配信︶
記事の音楽評論家の富澤一誠氏は、﹁ユーミンがジブリに合う理由﹂として
︵1︶映画の内容と曲のストーリー性のシンクロ
︵2︶特徴的な声が、ジブリ作品に合っている
︵3︶安易にタイアップをつけようとする流れに対するアンチテーゼ
を挙げています。
それぞれの詳細については、記事タイトルのリンク先を参照ください。
確かに、戦争や大震災などを描いた﹃風立ちぬ﹄には、ユーミンの同級生の死から着想して作られた﹃ひこうき雲﹄とシンクロし、﹃魔女の宅急便﹄では﹃やさしさに包まれたなら﹄が曲の世界観や歌詞が重なっています。
今日のブログ記事では、﹁ユーミンがジブリに合う理由﹂ではなく、﹁ユーミンが禅の思想に合う理由﹂を﹃やさしさに包まれたなら﹄を題材に触れていきたいと思います。
カーテンを開いて 静かな木洩れ陽の
やさしさに包まれたなら きっと
目にうつる全てのことは メッセージ
︵﹃やさしさに包まれたなら﹄より 作詞・作曲 荒井由美)
この﹃やさしさに包まれたなら﹄は、元々は不二家﹁ソフトエクレア﹂のCMソングでした。
CMソングでは、最後のフレーズが﹁目にうつるすべてのことは 君のもの﹂となっていて、CD化された際に現在の詩にリメイクされたそうです。
この歌詞からは、次の禅僧の偈を想起させられます。
渓声便ち是れ広長舌
山色清浄心に非ざること無し
夜来八万四千偈
他日如何が人に挙似せん
︵﹃碧巌録﹄三十七則より︶
この偈は、中国の禅僧、蘇東坡︵そとうば︶が廬山に遊行した時に読んだ偈です。
内容は、
渓谷の川のせせらぎは、それが、そっくりそのまま仏の声︵説法︶である。
また、山々の彩りは、仏の清らかな身体そのままの姿である。
そして、川のせせらぎの音、山々の彩りだけでなく、木々をわたる風の音や、鳥たちの声も、すべてが仏の教えでないものは無い。
法門には、八万四千通りあるといわれる。
この感慨をどのように述べたらよいだろうか、いや、述べ尽くすことはできないだろう。
ということが書かれています。
また、もう一つ、禅僧の句をご紹介します。
貞昌院の本堂には次のような額が掲げられています。
これは﹁触目是道︵そくもくぜどう︶﹂と読みます。
總持寺の石川素道禅師により揮毫された、中国の禅僧、石頭希遷禅師の言葉です。
この世界の空間軸と時間軸の中で、確固たるものは、この自分であり、この今という一瞬です。
﹁この今﹂は、仏教のことばで﹁而今︵にこん︶﹂といいます。
時間軸のうち、過ぎ去った過去の時はもうそこに立ち戻ることは出来ない。また、これからの未来は不確かでどのようになるか分らない。
ただ、確かな﹁現実﹂は﹁この今﹂だけなのです。
ただただ﹁この今﹂を精一杯生きるしかありません。
この世は無常であり、限られたいのちのなか、﹁今生きている自分のいのち﹂はかけがえのないものです。
だからこそ、ありとあらゆる存在の輝きが見えてくるのです。
目に触れるもの、目にうつるもの、全てがメッセージを発しています。
大人になっていくにつれて、このような感性は、次第に失われてしまっているのかもしれないですね。
輝き一つ一つがから発せられるメッセージを受け止めることのできる感性を、常に持っていたいものです。
このように﹁目にうつる全てのことは メッセージ﹂は
﹁渓声便ち是れ広長舌 山色清浄心に非ざること無し﹂や﹁触目是道﹂を実によく表現していると感じます。