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2011年4月19日
東日本大震災以降、電波時計の時刻が狂う現象がおこっています。
この原因は、福島第一原子力発電所の事故以降出された20km圏内避難指示を受けたことに伴い、東日本の電波時計に日本標準時を送っている﹁おおたかどや山標準電波送信所﹂からも職員が退避せざるを得ず、送信が出来なくなっているからです。
地図で確認すると、福島第一原子力発電所からの直線距離は僅か17km程しかありません。
より大きな地図で おおたかどや を表示
避難勧告は当分解除されそうにありませんから、この問題は長引きそうですね。
日本標準時電波が受信できない状態では、水晶=クォーツ時計と同等の精度になりますから、月差数十秒の誤差が生じます。
したがって、時々は手動で時刻を合せていかなければなりません。
電波時計を使っている場合は、その示している時刻が必ずしも正しくないということを意識しておく必要があります。
さて、ここで改めて時間・時刻について考えてみましょう。
そもそも一秒ってどのように定義されているのでしょうか。
地球が1回転する時間を1日として、それを24等分して1時間、さらに60等分して1分、さらに60等分して1秒なのかというと、それは違います。
なぜなら、地球の回転は微妙に速くなったり遅くなったり一定ではないからです。 地震でも地球の回転速度は変化します。
いつでもどこでも同じ時間を定義する必要から、現在は﹁セシウム133の原子の基底状態の2つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の周期の9,192,631,770倍に等しい時間﹂と定められています。
︵※セシウム133は自然界に存在する安定的な物質です。原子力発電所の事故で放出されるセシウム137とは異なります︶
そして、日本標準時は、﹁明石﹂ではなく、﹁東京都小金井市﹂で作られ決められています。
意外に知られていないことだと思います。
小金井市NICTの新世代ネットワーク研究センターにあるセシウム原子時計18台と、水素メーザ4台を組み合わせ、その誤差の平均を取り︵原子時計により若干の誤差が生じるのでそれを埋めます︶、﹁協定世界標準時﹂(UTC)が作られます。
さらに、世界各国にある﹁協定世界標準時﹂の時刻をそれぞれ比較調整し、﹁世界時︵UT)﹂が決められています。
では、なぜ、こんなに厳密に時間を決めないといけないのかというと、﹁時間﹂が基本的な単位系の元となっているからです。
例えば、長さの標準﹁1m﹂は﹁真空中で1秒の299 792 458分の1の時間に光が進む行程の長さ﹂と定められています。
時間がアバウトでは長さもアバウトになってしまうのです。
その意味で、おおたかどや山標準電波送信所の存在は重要です。
単に電波時計を正確に動作させるためだけに標準電波送信所があるわけではなく、様々な企業、研究機関に影響が生じます。
蛇足ですが、時間を正確に定義できると、物理量︵光速、プランク定数、素電荷、万有引力定数、微細構造定数・・・・︶の測定も正確にでき、ミクロ・マクロの領域における物理学の研究がより進むことが期待できます。
実用化の一歩手前にある﹁ストロンチウム光格子時計﹂は、セシウム原子時計の1000倍、実に﹁300億年に1秒﹂という驚異的な精度です。
これにより物理量を16桁以上の精度で測定することが可能になります。
たかが時間、されど時間。
知れば知るほど奥が深い世界です。
しかし、原子力発電所の事故により、原子時計による標準電波の送信が止まってしまっているというのは、なんとも皮肉なことですね。
一刻も早い標準電波送信所の復旧を願います。
追記
独立行政法人の情報通信研究機構の発表によると、4月21日午後に職員10人が防護服を着て送信所に入り、機械のスイッチを入れ稼働を再開したそうです。
その後、職員は直ちに避難し、しばらくは無人のまま運転を続けるようです。
取りあえず一安心ですが、翌22日からは﹁警戒区域﹂に指定されてしまいましたので、今後のメンテナンスができるか心配です。
叢林@Net さま
電波時計は時刻を手動で合わせることを想定していないので、合わせづらいのが困ったことです。
別の影響の事例では20キロ圏内にあるDASH村も存続することは難しいでしょう。
投稿者 kameno | 2011年4月21日 07:06