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2009年11月14日
米航空宇宙局︵NASA︶が行なっている月への無人探査機LCROSSのミッションで、月の南極近辺にあるCabeusクレータに水︵氷︶が存在する可能性があることが判りました。
もし確認されると画期的なこととなります。
⇒LCROSS Impact Data Indicates Water on Moon (NASA)
インパクトの約20秒後の写真。噴出物が確認できる (c)NASA
月面には一年中太陽の光が全く当たらない﹁永久影﹂と呼ばれる領域があります。
真空に近い状態でありますので、途轍もなく寒い場所であることが想像できます。
事実、無人探査機LCROSSの観測により、永久影の領域では、昼間でも地表温度が氷点下238度以下という観測結果が得られています。
この温度は、これまで太陽系内で昼間に観測された温度の中でも最も低いことになります。
ちなみに、月面の赤道から中緯度地域においては、昼間は107度、夜間は氷点下183度だということです。
(c)NASA
それにしても凄まじい温度差ですね。
このために、もしも月面に水が氷として残されているとしたら常に氷点下200度以下である永久影の部分であるとして、発見が期待されていました。
残念なことに、昨年、日本の月周回衛星﹁かぐや︵SELENE︶﹂により、やはり南極近辺にあるシャックルトンクレータをおいて水の存在を探索していましたが、氷が存在する証拠がみられなったため、サイエンス誌に?水氷がクレータ底部の表面に露出した形で多量に存在する可能性がない?という論文を発表したばかりでした。
もしもシャックルトンではなく、Cabeusクレータを詳細に観測していたら、また違った発見があったかもしれません。
いずれにしても、将来有人観測基地を建設する際には、この水がある、なしでミッションの難易度が大きく変わってきます。
また、永久影に残された水は、何億年も前の水である可能性もあります。
月、太陽系、宇宙の誕生を探る貴重な試料ともなります。
その由来が月が誕生した際に生じたものか、または彗星などによってもたらされたものかは今後の詳細な分析で明らかにされていくことでしょう。
実に楽しみです。
さらに・・・月面の有人観測基地建設に向けた大きな発見では、先月日本の月周回衛星﹁かぐや﹂の観測データから ﹁マリウス丘﹂地域で将来月面基地を建設する際に利用できそうな地下洞窟が見つかった という発表がありました。
このような地下洞窟が発見されたのは初めてのことであり、過酷な月面の環境では観測基地を建設する上で地下シェルターとして利用できるかもしれません。
かぐやによる、マリウス丘近辺の映像 (c)JAXA/NHK
・・・と、夢のある話題が並びましたが、日本にとっては残念なニュースもあります。
︻事業仕分け︼最先端科学も“敗北” ﹁スパコン世界一﹂を否定 ノーベル賞受賞の野依氏憤慨
政府の行政刷新会議の13日の仕分け作業は、次世代スーパーコンピューターの開発予算に事実上の﹁ノー﹂を突きつけた。議論の方向性を決定づけたのは﹁︵コンピューター性能で︶世界一を目指す理由は何か。2位ではだめなのか﹂という仕分け人の発言。結局、﹁科学技術立国日本﹂を否定しかねない結論が導かれ、文科省幹部は﹁日本の科学技術振興政策は終わった﹂と吐き捨てた。
次世代スパコンは最先端の半導体技術を利用。ウイルス解析や気候変動問題のシミュレーションなど広範な研究での活用が期待されている。﹁1秒あたり1京回﹂という計算速度が売りで、現在、世界一とされる米国製の10倍の速度になる算段だ。平成24年度から本格稼働の予定だが、総額約700億円の国費が今後必要なため、財務省は見直しを求めている。
この日、口火を切ったのは蓮舫参院議員。その後も﹁一時的にトップを取る意味はどれくらいあるか﹂︵泉健太内閣府政務官︶﹁一番だから良いわけではない﹂︵金田康正東大院教授︶﹁ハードで世界一になればソフトにも波及というが分野で違う﹂︵松井孝典・千葉工業大惑星探査研究センター所長︶などと、同調者が相次いだ。
文科省側は﹁技術開発が遅れると、すべてで背中を見ることになる﹂と防戦したが、圧倒的な﹁世界一不要論﹂を前に敗北。同研究所の理事長でノーベル化学賞受賞者の野依︵のより︶良治氏は﹁︵スパコンなしで︶科学技術創造立国はありえない﹂と憤慨していた。
︵産経新聞 2009/11/14︶
特に、理化学研究所の次世代スーパーコンピュータは、完成間際です。
この時点で予算凍結となると、どれだけの﹁無駄﹂が生じるのか判っているのでしょうか。
全ての科学技術分野ので遅れを取ってしまうことは明白であり、将来的に重大な禍根を残してしまうでしょう。
様々な分野の大規模科学技術計算を行うための超高速処理が可能なコンピュータを一般に﹁スーパーコンピュータ﹂と呼んでいます。
スーパーコンピュータによるシミュレーション︵模擬実験︶は、実験、理論と並ぶ研究開発の第3の手法として益々重要になっています。なぜなら、調べようとする対象が複雑あるいは巨大すぎて解析的な解が求められなかったり、実験観測にあまりにも多くの時間・費用がかかるので事実上実験できなかったり、実験条件が極限状況ないし危険︵放射能・高温など︶であるため、あるいは自然、地域、社会などを対象とするため実験不可能な場合などに、スーパーコンピュータを用いたシミュレーションは非常に有効だからです。
スーパーコンピュータは、自動車や飛行機の設計・製作のための構造解析や流体解析、天気予報のための気象シミュレーションなど、私たちの暮らしに直接関係する様々な分野で使われており、今後の科学技術の発展に不可欠です。
スーパーコンピュータの開発には、高性能LSIや低電力化などの半導体技術、光通信技術、ネットワーク技術、品質管理技術など、エレクトロニクスに関する総合的かつ高度な技術力が必要です。我が国はこの分野で世界のトップレベルにありますが、技術力の維持・向上のために継続的な研究開発が必要です。
︵スーパーコンピューターとは 理化学研究所︶
せめて科学技術の予算は削減しないで欲しいと願っています。
とてもとても残念なニュースです。
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