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2008年3月26日
貞昌院に設置した水琴窟には、裏山からの湧水が導かれ、美しい音が響いています。
なぜ、水琴窟によって美しい音が発生するのか。
その原理を解明した論文がありました。
Analytical Study of Acoustic Mechanism of‘Suikinkutsu’
Yoshio WATANABE
その内容をかいつまんでご紹介します。
■水琴窟の基本的原理
水琴窟には、その上部受け皿へと水が少しづつ流されています。
貞昌院に設置した水琴窟の受け皿の構造は、浅い皿の中央に穴が空いていて、その周囲に円状の水止めがあり、内輪孔が三箇所空けられています。
この内輪孔を押して少しづつ流れる水が、受け皿の裏側において大小さまざまな大きさの水滴を形成し、落下していきます。
水滴は水琴窟内を約40センチ落下し、水面に衝突して音を発生させます。
この音が瓶の内部で反響し、残響音を生み出します。
この残響音が水琴窟の音なのです。
︵写真‥受け皿に導かれた水は、円形の水止めの外側から内輪孔を通って均等な水流となり中央の穴へと流れていきます︶
■続けて落する複数の小さな水滴が音を発生させる
受け皿で、成長し落下した水滴は、最初に直径6mm程度の大きな水滴が落下し、それに続いて1mm程度の小さな水滴が数滴続いて落下します。
この、続いて落ちる数滴の小さな水滴がミソのようです。
水面に到達した最初の大きな水滴が、水面に大きな窪みをつくり、窪みが戻る前に、その窪みの中に小さな水滴が次々と落下していきます。
この時に発生する音が、水琴窟で聞こえる音の源です。
その後さらに大きな窪みが反動で戻り、水柱を形成︵ミルククラウンの後に見られますね︶し、その水柱が落下していきます。
A:最初に落下する6mm程度の水滴
B:水面に到達
C:水面に大きな窪みをつくる。そこへ1mm程度の小さな水滴が数滴続く
D:窪みの中に小さな水滴数滴が到達
E:水面下に水滴と取り込まれた空気による柱状の形ができる <音が発生>
FG:反動で水面上に水柱ができる
H:水柱が落下
︵Analytical Study of Acoustic Mechanism of‘Suikinkutsu’より図を引用︶
水琴窟の音色は、受け皿で形成された水滴の大きさや、大小水滴の個数、落下距離、壷内部空間の大きさによって変わります。
水滴の大きさや、大小水滴の個数は、受け皿に流す水量や、内輪孔を調節することにより変化させることができます。
また、落下距離、壷内部空間の大きさは、水面の高さを調節することにより変化させることができます。
■水の持つ特異な性質が水琴窟の音をもたらす
そもそも、水は他の物質に比べて特異なほど強い分子間引力をもつという性質があります。
この性質によってもたらされる特長は、以前ブログの記事でご紹介いたしました。
この性質により。水は水滴を生じます。
水琴窟は、水の性質を最大限に利用して生み出された音の発生装置ということができます。
人はなぜ水琴窟の音により癒されるのか。
奥深い謎が秘められているわけですね。
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