« SZI設立15周年記念講演会のご案内 |
最新記事
| 日本の音風景・除夜の鐘 »
2007年12月29日
暗い所で本﹁目悪くなる﹂ 医学的根拠ない、と米チーム
﹁暗いところで本を読むと目が悪くなる﹂﹁毛をかみそりでそると濃くなる﹂など、米国で一般によく信じられている体に関する言い伝えについて、医学的な裏付けがないばかりか、誤りのものもあるとする研究を米インディアナ大のチームがまとめた。22日発行の英医学誌﹁ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル﹂クリスマス特別号に論文が掲載された。
体に関する言い伝えと医学的な妥当性︵米インディアナ大チームによる︶米国で医療関係者にも信じている人がいるという言い伝えを七つ選び、文献データベースやインターネットの検索で医学的な裏付けを示す研究があるかどうかを調べた。
その結果、七つとも医学的な裏付けは見つからず、80年近く前の研究ですでに否定されているものもあったという。
論文は結びで﹁このような言い伝えを信じるだけなら実害はないが、根拠のない治療法を勧めることは実害をもたらす可能性がある﹂と、科学的根拠に基づく医療の重要さを指摘している。
︵朝日新聞︶
とても興味深いニュースでしたので、ソースとなる論文を調べてみました。
⇒ソースはこちら
我々は、医療関係者にも信じている人がいるという言い伝えを七つ選び、これらの主張のそれぞれを支持するか、あるいは論破する根拠を捜すために、MedlineとGoogleを使用した。
︵上記サイトより︶
この、Medlineとは、MEDical Literature Analysis and Retrieval System Online のことで、医学を中心とする生命科学の文献情報を収集したオンラインデータベースです。
Medline と Googleとを駆使し、一般的に信用されている医学的神話 ︵Medical myths︶の検証を行った結果、医学的裏づけがないことや、逆に誤りであるという結論が導き出されています。
医療関係者にも信じている人がいるという医学的神話七つを具体的に見ていきましょう。
■People should drink at least eight glasses of water a day︵1日につき少なくとも8杯の水を飲まなければならない︶
必要な水の量は、確かにコップ8杯かも知れないが、食べ物に含まれる水分があるから、普通にジュースや牛乳を飲めば充分。
水を飲みすぎると却って有害なことがある。
そういえば、動物は水だけを飲むことはあまりしないですね。
■We use only 10% of our brains︵我々は、脳のわずか10%しか使わない︶
アインシュタインがそのように言ったという説があるが、最新の脳の画像診断や代謝研究から、私たちは脳のかなりの部分を使っていることがわかる。
これは納得します。
■Hair and fingernails continue to grow after death ︵髪と指の爪は、死んだ後も伸び続ける︶
死後の皮膚が乾燥し張りを失ってそう見えるだけだそうです。本当に伸びるのはホルモンの働きが必要であり、死後に伸びることは無い。
■Shaving hair causes it to grow back faster, darker, or coarser︵毛をかみそりで剃ると濃くなる原因になる︶
1928年に、既に毛を剃っても毛の成長に影響しないという実証研究があり、最新の研究でもそれが裏付けられている。
ただ、剃った毛の先端が太くなり、黒く見える可能性はあるということです。
ちなみに、修行僧たちは5日おきに剃髪していますから、医学的なサンプルはいくらでも提供できます。
■Reading in dim light ruins your eyesight︵薄暗い所で本を読むことは、視力低下の原因になる︶
殆んどの眼科医は、暗いところで本を読むことで影響は無いということで意見が一致しており、最近は夜の照明が明るくなったのに近視が増えている事実とも矛盾する・・・・
■Eating turkey makes people especially drowsy︵七面鳥を食べると眠くなる︶
これは、俗説の方は初めて耳にしました。
含まれるアミノ酸のトリプトファンが睡眠効果を誘うという俗説だそうです。
実は豚肉やチーズのほうが含有量が多いので、七面鳥だけが眠くなるのはおかしい。
ただ、食後脳血流が減って眠くなる事実はあるということです。
︵これはどの食べ物にも共通しますね︶
■Mobile phones create considerable electromagnetic interference in hospitals︵携帯電話は、病院の医療機器に電磁干渉を引き起こす︶
英米の研究では、計器異常の報告事例は極めて低く、むしろ医師間の連絡が改善し、医療過誤が減る
という研究もあります。
けれども、やはり航空機の中では携帯電話は使用するべきではないでしょうね。万が一でも計器異常を起こされたら問題です。
以上、七つの中では、やはり﹁薄暗い所で本を読むことは、視力低下の原因にならない﹂というのが一番意外でした。
しかし冷静に考えてみると、暗いところで文字を読もうとすると、よく見えないため、目に近づけてみようとしたり姿勢が悪くなったりします。
そういう二次的な要素により目が悪くなることはありえるでしょうね。
また、最近の照明は蛍光灯が多いのですが、蛍光灯は一秒間に5?60回もの点滅を繰返しています。パソコンの液晶照明もそうです。
ブラウン管式のテレビもそうですね。走査線が画面上を上下水平方向に走っているわけですから。
そのようなチラチラした点滅を繰返す照明機器や表示装置は、目に負担が大きいと感じます。
視力低下は、部屋の照明の明るさ・暗さではなく、その質、そして物を見る姿勢、何を見るかということが一番の原因なのでしょう。
蛍の光、窓の雪・・・というのは、姿勢さえ正しければ全く問題ないようです。
この論文のサマリは次のようなものです。
Summary points
Even physicians sometimes believe medical myths contradicted by scientific evidence.
The prevalence and endorsement of simple medical myths point to the need to continue to question what other falsehoods physicians endorse.
Examining why we believe myths and using evidence to dispel false beliefs can move us closer to evidence based practice.
医者のような専門家でさえ、時には科学的とはいえない医学的な神話を信じてしまいます。
このような単純な医学的神話の流布と信じられてきたことに対し、医者︵に限らず、私たちも︶常に疑い続ける必要があります。
医学的︵それにかぎらず、科学的といわれること︶な情報は、この世の中に溢れていますが、その中で、いったいどれが正しくて、どれが間違っているかということは、これまでは専門的な知識がなければなかなか見抜くことができなかったといえます。
そもそも専門的な論文を目にする機会すらあまりなかったのですから。
しかし、インターネットなどの情報を駆使することにより、一般レベルでも簡単に論文を調べることができるようになり、自らが情報の内容を判断できるような時代となりました。
インターネットには正しい情報も、間違った情報も混沌とした状態で存在しています。
正しい情報を得ることもできますし、一見正しそうだが怪しげな情報に振り回されることもあります。
情報の取捨選択、正しい情報判断を身につけるという能力がますます求められる時代になったともいえるでしょう。
■関連記事
水からの伝言とニセ科学
血液型占いを信じますか?
っっっっっっっl
投稿者 Anonymous | 2019年9月12日 14:04