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2007年11月14日
︻溶けゆく日本人︼快適の代償︵1︶ 待てない人々 数分間でイライラ
週末の夕方。東京都内の広告会社で営業を担当する佐野裕美子さん︵23︶=仮名=は、仕事を終えると気の合う友人2、3人に携帯メールを送る。
﹁いま何してる?﹂
送り終わると、すぐに返信確認。1分、2分、3分…何度も操作を繰り返す。返事が来たら食事に誘う。5分も返事が来なければイライラする。﹁早く決めたいから、すぐ返信がほしい。自分が待てなくて嫌な思いをしているので、わたしはいつも即レス︵即答︶です﹂
仕事の合間も携帯メールのチェックは欠かさない。佐野さんはそんな自分を見て思う。﹁︵返事が来なくてイライラするのは︶自分勝手だし、ケータイに縛られているようでかっこ悪いかも…﹂
便利なはずの携帯電話を手にして、イライラと格闘するのは彼女ばかりではない。
﹁私用の携帯メールの返信が気になる。地下鉄に乗れば一駅ごとに﹃センター問い合わせ﹄をしてしまう﹂︵24歳の女性会社員︶、﹁返信が来ないで5分過ぎると貧乏ゆすりが始まる﹂︵20歳の大学生︶?。
小中学生は﹁15分以内に︵メールを︶返さなければ友達じゃない﹂などと言う。情報モラルサイト﹁エンジェルズアイズ﹂の遠藤美季代表は、そんな言葉に違和感を抱く。﹁返事を待てずに次々と別の子にメールを送り、最初の相手への用件を忘れてしまっていることもある。落ち着いて時間を過ごすのは、格段に下手になったでしょうね﹂
シチズンホールディングスが平成15年、首都圏のビジネスパーソン400人を対象に行った﹁待ち時間﹂に関する意識調査。通勤電車の遅れが﹁5分﹂でイライラするという人は10年前の17・6%から56・6%へと急増した。加速する“せっかち度”が各所で摩擦を引き起こす。
懐石や鍋のコース料理がメーンの神奈川県内のある日本料理店。落ち着いた雰囲気が売りだが、店長︵33︶は﹁お客さまと店側の時間意識のズレ﹂に頭を悩ませる。前菜に始まりメーンの料理を提供するまでの所要時間は﹁昼10分・夜15分﹂と決めている。しかし、時間内にスムーズに料理を出しても苦情が入る。テーブルセッティングのための1、2分の時間すら待てない客もいる。受付で﹁少しお待ちください﹂と言うと、﹁待てるか!﹂と声を荒らげ、トイレに入った連れの女性を残したまま帰った中高年男性もいた。
哲学者の鷲田清一・阪大学長は﹃﹁待つ﹂ということ﹄︵角川選書︶の中で、﹁ものを長い眼で見る余裕がなくなった﹂と高速化が進む現代社会の病理を憂えた。
﹁子供の成長を親がじっくり待てない﹂。東京都内の私立保育園。30年近いキャリアを持つ保育士がそう感じるようになったのはここ10年ほどのことだ。
3歳児に母親の絵を描かせると、首がなく顔とスカートが直結した絵を描く子も少なくない。そんなとき、以前なら﹁みんなと描いて楽しかったね﹂などと温かく見守る親が大半だったが、最近は様子が違うという。﹁横から﹃そうじゃないでしょ﹄といって子供をせかす。せかされた子供は萎縮︵いしゅく︶して弱々しい線で小さな絵を描いてしまう。じっと見守っていれば、じきに普通の絵を描けるのに…﹂と保育士。情報が氾濫︵はんらん︶し、他の子供と比較して焦る親が増えたのだという。
︵産経ニュース︶
実に考えさせられる現象です。
便利なコミュニケーションツールであるはずのメールに振り回されてしまう・・・
今年夏に中高生を対象に行われたケイタイ利用の実態調査でも、冒頭記事の現象を裏付ける結果が出ています。
携帯電話に振り回される中高生、メールは﹁5分以内返信﹂がマナー
◎中高生のケータイ利用の実態調査結果︵﹁GAMOW﹂と朝日新聞の共同調査︶
アンケート実施日は7月20日、21日の2回に分けて行い、朝日新聞社で作成したアンケート
設問を﹁GAMOW﹂にサイト上のアンケートフォームに入力する形で、2,891 人より回答
・1日の携帯電話利用時間は、
﹁?1時間﹂ 15%
﹁?2時間﹂ 23%
﹁?3時間﹂ 17%
﹁?4時間﹂ 13%
﹁?5時間﹂ 7%
﹁5時間以上﹂ 25%
・友だちから来たメールへの返信の﹁マナー﹂だと感じる時間は、
﹁即答﹂ 37%
﹁5分以内﹂ 18%
﹁10分以内﹂ 18%
﹁30分以内﹂ 10%
﹁1時間以内﹂ 3%
﹁その日中﹂ 6%
﹁気にしない﹂ 8%
・携帯電話を持って友だちとの関係が変わった点は
﹁つながりの浅い友だちが増えた﹂ 42%
﹁遊びや勉強など目的別で友だちと付き合うようになった﹂ 27%
﹁本音が言える友だちが増えた﹂ 24%
﹁特に変わらない﹂ 20%
・﹁ケータイに振り回されている﹂と思うことは、
﹁ある﹂ 59%
﹁ない﹂ 41%
特に、メールが来たときの返信マナーとしての時間に関する感覚は、若年層になるほど顕著に短くなり、私などの感覚からは大きなずれがあるようです。
では、仕事のメールでの返信までに要する時間はどれくらいが基本マナーと捉えられているのでしょうか。
ビジネスメール返信は﹁24時間以内﹂が86.7%
相手がメールを送信した日時から返信までの所要時間は、
﹁受け取ってすぐに﹂ 16.7%︵55人︶
﹁1時間以内﹂ 25.8%︵85人︶
﹁2?3時間以内﹂ 22.1%︵73人︶
﹁6時間以内﹂ 7.3%︵24人︶
﹁12時間以内﹂ 4.2%︵14人︶
﹁24時間以内﹂ 10.6%︵35人︶
実に86.7%が受信から24時間以内にメールを返信していることになります。
メールを返信する側は、24時間がひとつの区切りのようです。
それでは、メールの受信側はどうでしょうか。
自分が送ったメールに、どのくらいの間、返信が来なければ返信がないものと見なすかについては、
﹁1日﹂ 22.1%︵73人︶
﹁2日﹂ 30.9%︵102人︶
﹁3日以内﹂ 80.9%
﹁3日﹂ 27.9%︵92人︶
﹁1週間﹂ 12.4%︵41人︶
と続いた。
︵調査‥JR東海エクスプレスリサーチ︶
なるほど・・・これでも少し気が短いような感じがしますが、今ではこの程度の感覚が常識なのですね。
ビジネスメールにおいては、できれば1日以内が一つの区切り。
最低でもするというのが一般的のようです。
前に コンピュータコミュニケーションの特長という記事を書きました。
コンピュータを介したコミュニケーションは、他の手段によるコミュニケーションと比べて多くの違いを持っています。
特に情報が欠落した状態での即時的なコミュニケーションというのは、人間関係の構築に大きな影響をもたらします。
コンピュータを介したコミュニケーションについて、早い時期からの教育が必要であると思います。
﹁即答﹂がマナーというのではなく、メールを扱う上では、﹁いつ返信するか﹂というタイミングのコントロールも重要だからです。
おすすめの方法は、トリアージ︵Triage︶の考えを導入するということです。
トリアージは、一般的に災害における多数の傷病者を重症度や緊急性によって分別して治療するという方法論です。
メールにおいてこのような考えを導入することが Email Triage です。
緊急度から優先順位をつけて、いつ返信するかを決定します。
この返信のタイミングが重要だと思います。
例えば、戴いたメールに対し、一日のうちの空いている時間にまとめて返信を行うということも一案です。
優先順位を判断し、その場で返信する必要があるものと、単純な回答で済みそうなものについては、その時間帯に返信し、それ以外のメールについては、ある程度考えた上で、時間を掛けてでも用件を整理してまとめてから送るようにする・・・
場合によっては返信に数日程度かかっても充分だと思います。
回答が遅れたとしても、それが重要で相手が急いで回答を求めている場合にはメールで再督促があるか直接電話をいただけることでしょう。
以上は一つの例ですが、いずれにせよ、メールに関しては即答が当たり前というのはナンセンスに思えます。
さらに一段余裕をもって構える必要があるのではないでしょうか。
︻溶けゆく日本人︼シリーズは日本の現代社会に起きている現象を伝えているのですが、考えさせられることは多いですね。 便利であるということと快適であるということは同じようで全く違うということがわかります。 相手を気遣う気持ちの余裕も失ってしまうのはあまりにも悲しいですね。 医療を施していただいた医者や看護師さんに御礼さえ言えない人も増えているというのはとても残念です。 投稿者 kameno | 2007年11月16日 11:36