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2007年3月22日
昨日は彼岸の中日・春分の日でした。
私も長男︵小学校1年︶と一緒に教区2か寺の御手伝いをさせていただきました。
つらつら日暮しさんのブログで雑誌﹃SPA﹄﹁﹇お寺ビジネス﹈最前線﹂について︵お寺と世俗4︶がエントリーされておりましたので、この記事では昨日行われた寺院における彼岸行事と演奏会の事例をご紹介させていただきます。
お寺で演奏会というと、なにやら斬新だというように感じますが、﹁コンサート﹂だって、いわゆる一遍上人が行った﹁踊り念仏﹂が、人を集め、神仏との結縁に使われたとするならば、やはり﹁目新しい﹂ことではない。︵つらつら日暮しより引用︶ ことであることがよくわかる筈です。
戸塚区R寺では、彼岸法要の前に、参列されている檀信徒の方々のために、彼岸に関係する法話や講演会を行っているのですが、今年は、中国琵琶と二胡の演奏会を行いました。
日本曹洞宗は、道元禅師が中国に渡り、天童如浄禅師から受け嗣いできたものです。禅の源流を辿り、思いを馳せることができることができる良い演奏会でした。
※正倉院の﹁螺鈿紫檀五弦琵琶﹂と比較してみてください。
※シルクロードにはキジル︵克孜尓︶千仏洞の﹁五弦琵琶を持った飛天﹂など、正倉院宝物の原型が至る所に見られます。
中国は、﹁楽音天に響く国﹂と言われています。太古の昔から歌は地にあまねく満ちていました。
多くの民族により、何千年もの時を経て育まれてきた音楽の世界は、仏教はもとより、文学、演劇、彫刻,絵画とも深い繋がりを持ち、日本の全ての文化に深く関わっています。
中国では心を許しあう友達を﹁知音﹂と表現します。
知音に関する故事をご紹介します。
伯牙鼓琴、鍾子期聴之。
方鼓琴而志在太山、鍾子期曰、
﹁善哉乎、鼓琴。巍巍乎若太山。﹂
少選之間、而志在流水、鍾子期又曰、
﹁善哉乎、鼓琴。湯湯乎若流水。﹂
鍾子期死。伯牙破琴絶絃、終身不復鼓琴。
以為世無足復為鼓琴者。
﹃呂氏春秋・本味﹄
春秋戦国時代に、兪伯牙という琴の名手がいました。
兪伯牙は、常に自分の音楽を理解してくれる人がいないことを残念に思っていました。
そんなある日、楚の国へ向かう彼が舟の上で演奏をしているのを耳にした鍾子期という樵︵きこり︶が演奏を聴いて、兪伯牙の気持ちが太山︵山東省の名山・泰山︶にあるときには
﹁すばらしきかな、琴を弾くことは。高く険しくて太山のようだ﹂
と言い当て、その気持ちが流水にあるきには、
﹁すばらしきかな、琴を弾くことは。勢いよく流れている流水のようだ﹂
と言い当てました。
その曲で何を表現しようとしているのか、どのような心で演奏しているのか、その気持ちや境地をことごとく的確に言い当てたことに感激し、二人は心を許しあえる無二の親友となりました。
鍾子期が亡くなると、兪伯牙は大いに嘆き悲しみ﹁これより音を知る者は絶えたり﹂と叫んで、琴の弦を切り、終生、二度と琴を弾くことはなかったという故事です。
この中国の故事のように、音楽は、お互いが理解しあい心を結びつけることができる共通の言語です。
国境・民族・生活環境の壁さえも越えることができます。
そして、日本の音楽の源流を探るということは、仏教の源流を辿ることと同じ意味を持つと考えます。
正倉院にも保存されている中国楽器により奏でられるシルクロードの音楽は、参列者の心に、そして、ご先祖様のもとに響いたことでしょう。
この後引続き営まれた彼岸会法要では、参列者一堂、一緒に読経し、ご先祖様に報恩焼香をいたしましたが、心を合わせて同じ音楽に心を傾け、読経をする・・・・演奏会により、堂内の一体感がいっそう強まった感じがします。
※写真はPHSで撮影しました
※貞昌院では、7月26日の大施餓鬼会にて演奏会を行っています。その様子はこちらです。
このブログでも、時々お知らせしておりますが、今年、2つの大きな演奏会を企画しています。
一つは、 ﹁シルクロード・音楽の旅﹂ ︵真鶴・檜チャリティーコンサートホールにて8月25日開催︶
中国琵琶・二胡・篳篥・声明、そしてピアノ・ベース・ドラムスというように、中国から日本への楽器︵天平の楽器︶、そして声明、ジャズのコラボレーションにより、シルクロードを伝わってきた仏教の源流を辿る演奏会です。
http://silkroad.jpn.org
もう一つは、第9回を迎える ﹁ゆめ観音アジアフェスティバル﹂ ︵大船観音にて9月開催予定︶
大船観音は鎌倉市内にありながら、いわゆる観光地としての鎌倉エリアから外れた位置にあります。そのため、拝観者数は鎌倉駅周辺の寺社の10分の1にも満たない状況です。しかし、拝観者のうち6割は篤い観音信仰の方々であり、幾度となくお参りをされております。
また、境内に掲げられた絵馬や参拝ノートには、アジア各国の文字が目立つことも特色です。そこには健康を祈る言葉のほか﹁経済的に苦しい﹂﹁愛情が欲しい﹂など様々な願いが書き記されています。
在日アジア諸国の人々は、それぞれの悩み、思い、願い事を胸に観音様へと参拝を重ねているのです。いわば日本で暮らすアジアの方々の心のよりどころとなっているといえます。そこで、観音信仰で結ばれたアジア各国ゆかりの僧侶をお招きし、それぞれの国の様式で平和の祈りをささげ、音楽や舞踊を催し、ひとときでも楽しい時間を過ごしていだく場を設けることが出来ないだろうかということで企画されたのが﹁ゆめ観音﹂でした。
大船観音寺境内の白衣観音像は、もともと観音思想の普及とともに世界の恒久平和を祈願して建立されたものです。また、境内には原爆の火が燈されています。平和の願いを日本からアジア各国へ、そして世界へと広げていきたい。﹁ゆめ観音﹂アジアフェスティバルでは大船の街を見下ろす白衣観音像の前にステージを設け、観音様に向かって平和の祈りをささげ、また観音様に抱かれながら民族芸能を奉納します。また、境内では各国の民芸品、エスニックフードのテナント、アジアと関係の深いNGOなどのブースを設け、民族相互の交流・理解を図ります。
http://soto-zen.net/yume
是非たくさんお方にお越しいただけますよう、ご案内申し上げます。