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2007年3月15日
杭州から成田への帰路︵3月9日︶、飛行機の窓から見下ろすとこのような光景が広がっていました。
どこか判りますか?
海の色が人工的な仕切りによって明確に分かれていますね。
Google Mapでこの写真の場所を表示するには、ここをクリックしてください。
︵写真とは南北逆です︶
実は、この光景は、九州の諫早湾です。
かつては、日本有数の干満差がもたらす広大な干潟が広がり、豊かな魚介類・それを求める渡り鳥が多数飛来する宝の海でした。
ところが、防災と農地造成を目的とした国営諫早湾干拓事業が始まったことにより、諫早湾は潮受堤防で一気に閉切られ、淡水化されたことにより、多種の生物は全滅してしまいました。
1997年4月14日のことです。
︵まもなく堤防締切から丁度10年が経過します︶
その、潮受堤防で閉切られた海を撮影したのが、冒頭の写真なのです。
今はもう見ることができないかつての美しい光景は、吉田幸男さんのサイト、﹁諌早湾干潟 豊穣の海﹂ で振り返ることができます。
この諫早湾の潮受堤防締切については、個人的に特別な思い入れがあるのですが、まずは、日本の干潟の現状について考えてみましょう。
干潟
干潟︵ひがた︶とは、海岸部に発達する砂や泥により形成された低湿地がある程度以上の面積で維持されている場所のことで、潮汐による海水面の上下変動があるので、時間によって陸地と海面下になることを繰り返す地形のことである。
概論
干潟は、細かい砂や泥がある程度の面積で堆積した潮間帯である。一般には河川や沿岸流によって運ばれてきた土砂が、海岸や河口部、ラグーン︵潟湖︶に堆積することで形成される。そこに行き当たり水流が激しければ岩礁や砂浜になるから、そのような水流、波などのあたらない場所に細かい土砂は堆積する。したがって、干潟は内湾の奥や大きな河川の河口域によく発達する。日本本土では九州・有明海周辺に大規模なものが見られる。
干潟の大きさは様々であり、河口付近だけにできる小規模なものもあれば、幅数kmに及ぶ大規模なものまである。その大きさは、河川や沿岸流による土砂の供給・運搬能力および堆積する海岸部の地形、潮汐による海水面の変動量に影響される。干潟は、河川・沿岸流などからによる土砂の供給と、波浪・潮流などによる土砂の侵食との微妙なバランスの上に成り立っている地形であり、そのバランスが崩れた場合は、乾燥した陸地となるか海面と化してしまう。
かつては不毛の地と考えられ、干拓や埋め立てが盛んに行われてきたが、そこには多様な生物が生息していること、潮汐作用や生息する生物によって自然の浄化作用に有効な存在であることが明らかになりつつある。
そのため、日本各地では保護を求める機運が高まっている。しかし、それでもある調査によれば日本にある主な干潟37ヶ所のうち将来に渡って確実に残せるところはラムサール条約登録湿地である谷津干潟や漫湖干潟などわずかであるという。
Wikiペディア
多様な生物が生息し、自然の浄化作用をもつ干潟は、日本にどれくらいあり、どれくらい失われてしまっているのか。
その全国一斉調査結果がありますので、ご紹介します。
︵少し前の資料ですが、国の行った全国一斉調査では最新のものだと思います︶
日本沿岸全域の干潟の存在する海域︵39都道府県︶を対象とし、平成元年度から3ケ年にわたり実施された﹃日本の干潟、藻場、サンゴ礁の現況︵第1巻干潟、第2巻藻場、第3巻サンゴ礁︶海域生物環境調査報告書﹄︵第1巻干潟︶です。
生物多様性情報システム︵J-IBIS:Japan Integrated Biodiversity Information System︶により纏められました。
一部引用してみます。
︵1︶干潟の現存面積
今回の全国一斉調査で把握された現存干潟の総面積は51,443haであった。
海域的には大規模な閉鎖的内湾で多くの河川が流入する有明海が最も広大な干潟を有しており、有明海全体の干潟面積は20,713haに達し全国の干潟面積の約40%を占める。 単一の干潟としては熊本県有明海に位置する前浜干潟で1,656haの砂質干潟である。
有明海奥の福岡県?佐賀県地先には軟泥質の1,000haを越える干潟があり、有明海内の枝湾である長崎県の諫早湾にも1,846haの泥質干潟がある。
有明海に次いで現存干潟面積が大きいのは瀬戸内海西部の周防灘西海域で6,409ha、以下八代海の4,465ha、東京湾の1,640ha、 三河湾の1,549ha、伊勢湾の1,395haの順であり、そのほか海域別で合計面積が1,000haをこえる干潟が存在したのは、沖縄の1,216ha、北海道の根室地区1,148ha、網走地区1,091ha、瀬戸内海燧灘の1,022haで、以上の10海域で日本全体の干潟の約80%を占める。
︵2︶干潟の消滅状況と原因
前回︵1978年︶調査後約13年間に消滅した干潟の総面積は3,857haであり、大規模なものは有明海、別府湾、東京湾、伊勢湾、沖縄島、八代海で認められた。 海域別には現存干潟面積最大の有明海が喪失面積でももっとも大きく、1,357haと全消滅面積の約35%を占めた。
次いで別府湾と東京湾のそれぞれ281ha、280haが大きい。
消滅原因のほとんどは人間の開発に起因するものである。
有明海の消滅域のうち約86%は陥没によるものとされ、単一の干潟として最大の陥没喪失は福岡県柳川市昭代地先の前浜452haである。
今回の調査では陥没の原因については言及していないが、この海域は、三池炭田の海底炭田開発が多年にわたって行われており、干潟面の広域陥没はこれとの関連を予測させる。
それ以外の海域では主な消滅理由は埋め立てでそれに浚渫が複合している。
理由は空港建設、都市や港湾の再開発、発電所立地造成などさまざまである。
兵庫県では、消滅理由でその他として挙げられているものが46haで83.6%を占めているが、砂の自然流失によるという。
これだけでは判断し難いが、天然の干潟や砂浜の砂が近年急に流失することは考え難く、近接域の地形変更による流況の変化や海底の砂採取などが 残った干潟の砂の流失に影響した可能性を検討する必要がある。 わが国の農業環境の変化に伴い干潟消滅の理由としての干拓はほとんど影をひそめ今回の調査では僅かに三重県で84haの1件をみるのみである。
しかし、長崎県の諫早湾では、最後の大型農業干拓として、沖合い締切堤で3,550haを囲い込み1,846haの泥質干潟のうち1,550haを干拓地及び調整池に変える計画が、平成元年度以後着工され現在進行中である。
総括と展望より引用
http://www.biodic.go.jp/reports/4-11/q000.html
http://www.biodic.go.jp/reports/4-11/q031.html
※下線部はkamenoが付しました。
干潟は、その面積が大きいほど、多様な生物が生息します。
ですから、1,846haもの広大かつ、最大干満差が5m以上の泥質干潟を有する諫早湾のポテンシャルは計り知れないものがあるのです。
干拓地の面積はその後縮小されていますが、締切堤防で囲まれた全体面積 3,550ha ︵冒頭の写真の茶色い水域+干拓地の部分︶ はそのままで事業が進んでいます。
諫早湾干拓事業概要図 ︵出典‥九州農政局︶
この干拓事業の抜本的な見直しと、潮受堤防の常時開放により、ふたたび豊かな干潟が回復することを切に望んでやみません。
︻関連リンク︼
科学技術振興機構・失敗知識データベース ←おすすめ!
WWFジャパン公式ホームページ
九州農政局諫早湾干拓事業
空から見ると一目瞭然ですね。
日本有数の干満差がもたらす豊かな自然が、一気に失われてしまったことが本当に残念です。
投稿者 kameno | 2007年4月 5日 07:15